喰べる
皆さんは人間を食べたことがあるだろうか。
僕は一度も無い。きっと皆さんも無い筈だ。
人間を食べるなんて事は普通に生きていれば体験はしないだろう。
経済も技術も、また倫理観も成長した現在。人間が人間を食べるなんて事はあってはならない。
そんな事件が起こればすぐにSNSで拡散され、ネット民たちが倫理観や道徳論について会議を始めるだろう。朝のニュースでは大々的に取り上げて現代のモラルの低下がなどとそれっぽい根拠をでっち上げて幼児期の道徳授業の大切さを懇々と語り、その後に「次のニュースです。今話題のスイーツ店に…」などモラルの無いことを言い始める。
まあ、それは置いといて。
人間は人間を食べない。食べない筈なのだ。
アニメ、漫画ならば時々見かける事もあるかもしれない。
しかしながら現実では一回も見たことなど無い。
人間は食物ピラミットの頂点に君臨する存在。
食うだけで食われる事とは縁遠い存在。
この国では人同士でさえ命を奪う事は許されていない。
それがこの世の定義。リアルである。
だとしたら
今、僕が見ている世界は偽物だ。フィクションだ。嘘だ。
だって人が人を食べているのだから。