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ただのわたし  作者: mari
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自分の本音

「ただのわたし」でいると決めたサオリ。

人の顔色ばかりを見ては、自分の本音を伝えるのが苦手だったが、少しずつ自分の中で変化が起きていた。

あれから一カ月。

もう5月も半ばになっていた。


「ただのわたし」でいることを意識し始めたサオリは、どんどん自分の本音がわかるようになっていた。



今までのサオリは、人からの目線や評価が気になって、なかなか人に自分の本音を言えなかった。


本音を言わなくなるほど、自分の気持ちもよくわからなくなってしまい、なんとなく人に合わせれば丸く収まると思ってやりすごしていた。


平和主義と言えば聞こえはいいが、人を信用できていないと言えばそれまでだ。



しかし、「ただのわたし」でいようと決めてから、少しずつ自分がどうしたいのかを自分と対話するようになり、どんどん自分の本当の気持ちが自分に話しかけてくるようになった。


今、パンが食べたい、

今日はコーヒーにガムシロップは二つ入れて飲みたい、

洗濯物は置いておいて今は寝たい、

音楽が聴きたい、

メールの返信は今は気が乗らない、後でにする、


と、日常のささいなことも、自分のイエスとノーに耳を傾けてみるとたくさんの望みが聞こえてくる。



今までのサオリは、人に合わせて飲み物や食べ物を決めていた。


みんながパスタだから私もパスタにしよう、

お腹いっぱいだけど残したら悪いから全部食べないと、

みんなが笑っているからにこにこしておこう、

本当はつまらないけど、みんなに合わせてここに残ろう、


サオリはいつもまわりの空気を一生懸命読んでは、帰宅するとぐったり疲れていたのだ。


帰宅してからも家族に対してもそうだった。

本当はお惣菜にしたいけど、子どもの栄養のために手作りしないと、

本当はまだ寝ていたいけど、

掃除しないと、

洗濯機も回さないと、

節約のために旦那さんのお弁当も作らないと、



本当はこうしたいけど、、


自分の本音はいつも後回しだった。

でももう苦しかった。


「ただのわたし」でいる時、本当の気持ちが純粋に湧き上がってくる。


まるで小さな子どもがお腹空いた、眠い、遊びたい!と、自分の欲求に素直なように。



サオリが自分の本音を意識するようになってからは、自分の本音が聞こえたらできることから応えるようにした。


家事は後回しにして、ゆっくりする時間を三十分作るところから始めた。


その三十分は、好きな音楽を聴いたり、ゆったりしてコーヒーを飲んだり、チョコレートを食べたりと、とても幸せを感じられる時間だった。


三十分が十分に感じられるほど、あっという間に過ぎてしまう。



そして、身近な人へ自分の気持ちを伝えることも意識するようになった。


最初は「これはしたくない」「今はいやだ」などノーを言うところからだったが、だんだんと自分の「本当はこうしたい」という望みまで伝えられるようになってきた。


なかなか断れずにすべてを受け入れていたサオリは、ノーすら言えなかったのだから大きな進歩だ。


それでも友人やママ友にはまだ本音を伝えるのは苦手だった。

そんな時は、「本当はどうしたかった?」と、あとから自分と対話するようになっていた。



少しずつだが、サオリの人間関係にも、「ただのわたし」でいることが増えてきたのだった。

日常のささいなことも、自分の本当の気持ちを見つめることを描きました。

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