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私のお兄さま

作者: 紫貴 誠

私にはお兄さまがいる。

優しくて、気遣いの出来る優しいお兄さま。


でも、ある日お兄さまがいなくなってしまったの。

まるで最初からいなかったように。

とても不思議で不思議で、でもそれを誰かに尋ねる気にはならなくて。

唯々、お兄さまの姿を探してた。


気が付いたら妹がいた。

もうだいぶ大きな妹。3つしか離れていない元気な子。

皆、昔からいた様に接している。

とても不思議で不思議で、でもそれを誰かに尋ねる気にはならなかった。


とある折に、戸籍を見ることになった。

そこに、お兄さまの存在は無かった。

そう言えばお兄さまの名前はなんだったかしら。

でも確かに私には優しいお兄さまがいた。


今日も今日とて、家や人混みの中にお兄さまの姿を探す。

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