19:やられたらやり返す、倍返しだ!
前回、さぁ話すとしよう、ことの顛末をー、とかカッコイイこと言ってたけれども、そこまでかっこよくはないですね。かっこつけたいお年頃なんです。はい。
「さてと、ライネスよ、そこの浩介が何をやったのーー「はい!彼は、姫様を誘拐しようとしたのです!そこで僕が風魔法で……」
おいおい、食い気味すぎるだろ青年クソイケメンエルフ。あと、何気にこいつの名前を初めて知った気がする。もう名前は青年クソイケメンエルフ固定だけどな。それにしてもまぁ相変わらず話の大半が捏造である。逆に国王様と当事者のフィナの目の前でよくも堂々とこんなにスラスラ嘘が口から出てくるな?と思うほどだ。
「ーーという訳で、僕が姫様を助けたのです!どうですか!?僕こそが結婚あいーー「なぁ、あのさぁ」ーーなんだ!ヒラ如きが僕の話に口を挟ーー「そろそろ俺も話していいか?もうお前の話関係ない方向に飛躍しすぎてるからさ。」
王様の方を見ると、よし!って顔してる。それじゃあ王様からの許可も出たことだし今まで馬鹿にされてた分仕返しするとしますか!
「なぁ、俺はただフィナが嫌がっていたから助けてやっただけだぞ?」
「はぁ?そんな訳ないだろうが!僕は姫様が一人で街を寂しそうに歩いていたから、エスコートをして差し上げたんだぞ?姫様は喜びこそすれ嫌がるなんてことあるわけないだろう?」
どうやらこいつは、自分が正しいと思い込む奴らしい。あんな壁に詰め寄られてあからさまに嫌そうな顔されてたのに喜んでたとか、ちょっと意味が分からない。これでは何を言ったところでいたちごっこだ。ここは必殺(?)技を使うことにする。そう!その方法とはーーー!
「フィナはあの時どうだったんだ?」
なんて事無い、ただ本人に聞くだけである。まぁどう答えるかは決まってるだろうがな!ハッハッハ。しかし、俺が本人に聞いて自分が危地に立ったのに気づいてないのかはわからないが、青年クソイケメンエルフは逆に
「そうだ!姫様に聞けば分かるだろう!これでお前も終わりだな!…怖かったろう?僕のフィアンセ、ほら、僕が守ってあげるから本当のことを言ってもいいんだよ?」
とか言ってきてる。本当こいつ頭がお花畑なんじゃないか?まぁ当然といえば当然だがそれに対するフィナの答えは
「浩介さんが助けてくれて助かりました」
だった。青年クソイケメンエルフが、えっ?みたいな声を上げている。再度聞き直す青年クソイケメンエルフ
「浩介さん”から”だよね…?」
「浩介さん”が”です。」
すると青年クソイケメンエルフが崩れ落ちる。がまだ崩れ落ちて地面に手をつけている状態でこちらを睨んで叫んでくる。
「でも、しかし、まて!その後姫様が安全に過ごせたかは不明だろう!?」
うわっ、その後とかもうなんでもありだな!でもこれも大丈夫だ。何故なら
「いや、フィナとやらは満足して安全に過ごしていたようじゃが?」
先程から、いつ紛れ込んだかは知らないが師匠が、いつの間にか部屋に立っていたからだ。
「「「「!?」」」」
どうやら俺以外は誰も師匠の存在に気づいていなかったらしく、皆ビクッとしてた。それにしても王族の住む城に誰にも気取られずに入るとか、ほんと師匠は化物だな。
近くにいた王様の護衛が「誰だ!」と槍を向けようとするが、「俺の師匠だ。問題ない」と手で護衛を制止する。まぁでも護衛の気持ちは分からんでもないが。
さてと、話が逸れたがこれで完全に青年クソイケメンエルフはチェックである。しかし、この期に及んでも「僕は悪くない!」だとか「このヒラ野郎が!」とか言ってるので呆れていると、フィナが唐突に青年クソイケメンエルフの前に立って……ビンタした。…ってビンタ!?なんか地味にすごい威力だったけど!?……死んでないか?しかし、それだけでフィナは終わらせなかった。追い打ちをかけるように
「私は、あなたの事をもうなんとも思っていませんし、もっといえば逆に疎ましく思っています。先程から「ヒラ、ヒラ」と差別用語を当たり前に使うところもそうですし、有りもしない話で他人を貶めようとするなんて最低の人間がすることです。だから私はあなたの事をもう見たくもありません。帰ってください!」
と言い放った。すると周りの護衛が青年クソイケメンエルフの腕を掴んでは部屋の外に連れ出した。去り際に「君はその人間に騙されているんだ!僕が必ず君を救ってみせる!」とか言ってたけど。ほんと懲りないやつだな。
青年クソイケメンエルフが連れ去られてから、重い空気で誰も何も言えないでいると、フィナが沈黙を破るように手を叩き、
「せっかくの美味しいご飯がこの空気では台無しです!皆、明るく食べましょう!」
と、いい俺を部屋の外に出した……え?なんで?
「サプライズのところからやり直しです!さぁお父様、お母様に…「グラムでいいぞ」グラムさん、小爆発魔法の準備をしてください!」
と、フィナが言うとみんなが笑顔になって動き始める。
「よし、そうするか!さぁ浩介よ入ってこい!」
「入ってきちゃってー」
言われるがままに部屋に入ると、目の前で爆発が……って!危ねぇ!?ギリギリで避けるが、文句のひとつでも言ってやろうかとみんなの方を見ると、師匠がニヤニヤしている。絶対あの人だろ。
俺やり返してやろうと思って師匠の不意をついて追っかけて無理やり酒を飲ませると、そこから賑やかなパーティが始まるのだった。