17:初めてのステータス上昇
長めです。
「それじゃ、さてとさっそくトレーニングを始めるのじゃ。城とここの100往復じゃが光魔法で姿を消してついていくので、ズルはできぬと思え?疲れてきたように見えたら回復魔法を掛けてやるのじゃ。」
「俺のステータスをはオール1だぜ?しょっちゅう回復魔法をかけることになると思うが魔力は大丈夫なのか?って師匠はでたらめな魔力量してるんだったな…」
「うむ!師匠のことは気にせず走るのじゃ!」
やたらと師匠のところを強調してくる。そんなに弟子ができて嬉しいのだろうか?因みに師匠呼びは強制されていたりする。
「さてと、それでは初め!なのじゃ」
さっそく、重い体を引きずって走り出すが目算でおよそ100メートルも進まないうちに、前の世界で1500メートルを走りきったような感じになってくる。
「お、おい…もう、はぁ、疲れたん、はぁ、だがっ!はぁ」
「何じゃ?情けないのぉ。いくら筋力値が1だろうとまだ筋肉が壊れてはいないじゃろう。もう少し頑張るのじゃ。」
どうやら、これぐらいではまだまだ筋肉は壊れないらしい。はぁはぁと息を切らしながらそれから更にのろのろとした足取りで200メートルほど進んだ頃、不意に体が軽くなる。体を見てみると体が、いや正確には体の周りが緑色の光で包まれていた。
「これがヒールか?」
「そうじゃ、ほれ、足を止めている暇はないぞ?」
言われて再び走り出すと、先ほどの息切れさえ感じないほど疲れが取れていた。……まぁまた100メートルほど走ると先ほどと同じような状態に陥るのだが。
それをそんなこんなで続けていると10往復目くらいから、100メートルくらいは楽に走れるようになってきた。走っているうちにステータスが上がったのだろうか。隣のノーラに視線で話しかけると、
「どうじゃ、体が軽くなったような感覚があるじゃろう?それはステータスが上がっている印じゃ。それに周りをよく見てみるが良い、先程より走る速度が早くなっているのではないか?」
そう言われてみると先程よりも周りの風景が通り過ぎていくのが早くなった気もする。そういえば、ステータスはどうなってるんだ?
「ステー「ちょっと待つのじゃ!」えぇ…」
「走っておる時にステータスなど気にしておったら、気が散るであろう!それにちまちまと確認するよりも、最後に一気に上がったステータスを見た方が良いのではないか?」
ニヤニヤと笑いながら言ってくる。腹が立つがなんかその方がお得感がある気がする。クッ!今回はあとで見ることにしてやろう。決して丸め込まれたわけじゃないぞ?
それから更に走り続けて4時間後、長かったマラソンがやっとゴールを迎えていた。50キロメートルぐらいあっだろうか。今はヒールのおかげで肉体的な疲労はないが、いかんせん精神的に疲れた。途中で眠気が襲いかかってきて寝そうになるとリフレッシュという魔法ですぐさま眠気を飛ばされるし、師匠に至っては「ずっといるほどわしも暇ではないし、飽きてきたのでお主の肉体の疲れを察知して自動的にヒールをかける術式を組んでおいたのじゃ。因みに監視魔法も術式も組み込んであるので止まると、攻撃魔法が放たれるからサボれないようになっておるのじゃ。まぁがんばるのじゃよ?」とか言ってどっかへ消えていってしまった。話し相手もなくただ一人で4時間も淡々と走り続けるのだ。これが精神的に疲れないわけがないだろう。
しかし、なんかまぁ辛いことほど達成すると嬉しいというか、ものすごい達成感がある。90往復目ぐらいではもう前の世界の身体能力を余裕で抜かしていた気がする。最初にあれほど遅かったというのに4時間程度で50キロメートルぐらいを完走したことからもわかるだろう。
もう、そうなると、ステータスが気にならないわけがない。ちょうど見計らったかのようなタイミングで家から出てきた師匠に許可をもらいステータスを見てみる。
「ステータスオープン」
名前:平井浩介
歳:17
性別:男
職業:脇役剣士
称号:脇役・巻き込まれしもの・転移者
レベル1(成長の限界)
体力10/10 (+150)
魔力1/1 (+80)
筋力1 (+120)
速度1 (+100)
賢さ1 (+30)
スキル:回復魔法2・鑑定1・脇役の心得(勇者を庇う効果消滅)
……えっ。強くなりすぎじゃね?この世界の大人の平均ステータスが30じゃなかったけ?しかも魔法の訓練もしてないのに魔力量上がってる上に回復魔法まで覚えちゃってるし。しかもレベル2で。師匠に聞くと、「わしも魔法をずっと受けてたからじゃないかのぅ」との事。「それでも強くなりすぎているがの」とも言ってた。そのことを聞くと「潜在スキルでもあるんじゃないかの」と言われた。潜在スキルとは、この世でただ1人固有スキル:神眼、を持っている人物にのみ鑑定が可能なものらしい。潜在スキルは師匠でも見ることが出来ないんだとか。きっと成長速度が上がるスキルでもあったのだろう。
正直もう早く寝たいので「早く帰らせてくれ」と言うと「明日の朝は8時半にここに集合じゃ遅れたら50往復追加かのぅ?」とか言ってたから、起きないわけにはいかないだろう。
俺は早めに家に帰って明日の朝起きれるようにするために、帰路へ着くのだった。
賢さ=知能ではないです。賢さは魔法の強さのことですね。作者は50キロメートルも走ったら次の日は一日中筋肉痛で動けない自信があります。
6/5 ステータスにレベルを入れたり修正したりしました。