12:閑話 勇者達の計画
今回は勇者サイドです。
時は遡って、魔族との戦いの2日前、勇者神乃の部屋で、それは行われていた。
「でさ、今日もあいつのこと軽く殴ったら気絶しちまってさぁ〜」
「うわー、軽く殴っただけでか?」
「ああ、かるーくかるーく、な」
「神乃の軽くが強すぎるんじゃないの〜?それでも、一撃とか弱すぎない〜?」
「それほど、役に立たないのですから、せめて脇役として私たちに貢献してほしいですね。」
そう話をしているのは彼ら…神乃陽太、盾原優人、八重魔道、癒村杏奈、は勇者である。
そして、その彼らの話の中で中傷されているのは平井浩介、彼ら勇者とは真逆に、なんの力も与えられず、召喚に巻き込まれてしまった同年代の高校生である。
「それにしても、本当に脇役は使えねぇよな」
彼らは、この世界に来させられた、辛みや恨みを晴らすかのごとく、彼をいじめの的としていた。そして、彼の話をしているうちに、次第にヒートアップして行き、彼らの中で、遂にしてはいけない選択をしてしまう。
ーーあんな使えないやつ邪魔なだけだ殺してしまおう
と。彼らは、この世界に召喚されたストレスと、魔物を既に何体も殺していることから、この答えが出てしまうのは、時間の問題だったかもしれない。
「それなら、俺はいいこと知ってるぜ。あいつのスキルのことだ。」
そして、彼らは彼ーー平井浩介を殺す計画を練っていくのであった。
そして、その計画は早々に叶うことになる。魔族が出現したのだ。それも上級魔族が。彼らは、練ってきた作戦を開始した。
彼らの作戦は、単純明快、彼の持っているスキルを利用するだけである。平井浩介の持つ、スキルは致命の一撃を受けそうになった勇者を絶対に庇うというものだった。これを逆に利用するのである。神乃はわざと攻撃を受けて、死にかければいいだけである。そうすれば、平井浩介は勇者を庇って死ぬだろう。兵士ならまだしも、一般人よりも、低いステータスの彼ならば、確実に。
果たして、彼らの作戦は成功した。神乃がステータスを見て次の攻撃を受ければ死んでしまう。という所で、あからさまに動きを遅める。そんな彼に吸い込まれていく、魔族の剣の間に、勇者でさえ視認できない速度で浩介が飛び込んでくる。
すると、
「よっしゃ、3人とも逃げるぞ!」
彼の行く末も見ずに、勇者達は、恐らく彼らの行動に、呆気に取られていた、魔族横を通り過ぎ、都市国間トランスポーターに向かって、逃げるのだった。
その後、彼らは謁見の間にて、事前に打ち合わせていたとおり、嘘の事情を説明し陽太の部屋へと再び集まるのだった。
「なんだ、すげー簡単だったじゃん。」
「勝手に俺らのことをかばって死んでくれたんだから感謝しないとな〜!」
などと、卑下た笑みを浮かべ自分らの邪魔者がいなくなったことに歓喜するのであった。
もはやその姿は、傍から見れば勇者ではなく、悪人のそれだった。
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