11:何とか一命は取り留めたらしい
これから段々と、成り上がっていきます。
今回は長めです。
「…………て…ださい!」
「起……てください!」
「起きてください!」
誰かに呼びかけられる声が聞こえ、目を覚ます。
(う…ん?何やってんだ俺?確か魔族に切りつけられて…あぁ、俺それから海に沈んで…死んだのか、でもそしたら何で意識があるんだ?…まさか死後の世界とかか?異世界があるんだ、案外ありそうだな…)
取り敢えず、現状確認のため目を開け、体を動かそうとするが、あいつらに殴られた時のような激痛が走り、起き上がれなかった。これは参ったなと、考えていると、近くから声が上がる。
「大丈夫ですか!?やっと起きてくれましたか…よかった〜!」
と、顔をのぞきこんでくる。
なんというか、もうあの女王が廃れて見えるぐらいの美少女だった。
「おわぁっ!?」
(近いから、近いから!顔、顔!)
悲しいことに前の世界では、異性と付き合うどころか、ほとんど接したりもしなかったので、顔をのぞき込まれただけで、非常に心臓に悪い。しかも、途轍もない美少女である。
しかし、のぞきこんでくる顔を見ているうちにあることに気がつく
(耳が長い?人間じゃないな、エルフか?)
そう考えるが、即座に頭の中で否定する。俺だって城にいた二週間ほど何もしなかった訳では無いのだ。城から追い出されることを、考えて少しでもこの世界に詳しくなっておこうと、城にある図書室で本を読み漁っていたのだ。その中には当然この世界にいる種族の事も載っていた。
その本によると、エルフは魔法技術が高く長齢であるため、元から繁殖力が低く種族全体の数が少ないらしい。ここまでは、前の世界のエルフと同じだった。しかし、彼らはおよそ50年ほど前、その高い魔法技術を狙ってきた。とある人間の国に敗北、個々の力は強いものの、絶対数が少ないため、負けたのだとか。そのため、エルフは全滅、この世からいなくなったらしい。
つまり、この美少女がエルフであった場合、ここは本当にあの世ということになってしまうのである。
(流石に、そんなことは無いよな?)
と思ったが。一応確認しておく。
「ここはどこであなたは誰ですか?」
「ここは海底都市で、私はエルフの姫、フィナと申します。」
と、速攻で返事が返ってきた。
おそるおそる聞いてみる。
「つまり俺って、死んだって事ですか?」
「なぜ、そうなるのですか?」
「何故って…だってエルフって、戦争で全滅してしまったんじゃ…」
「それは、間違いです。ただ単に、人間がこの場所を見つけられていないだけです。私達は、生き延びて、国全体に、結界魔法をかけ、水圧や、人間達から守っているのです。その結界魔法の調整中にあなたが、沈んできたので助けた次第です。」
と、衝撃の発言が帰ってきた。これ、歴史の教科書変わっちゃうね、うん。
しかし、それにしても、それなら何故、人間の俺なんかを助けたんだろう。
思ったことを、そのまま聞いてみると、
「いくら、同胞が殺されたとはいえ、目の前で亡くなっていくのを、黙って見ているほど薄情ではありませんから……それに、あなたのステータスを見てしまいましたから…」
そうか、あのステータスを見たのか、まぁ隠すほどのものでもないんだけれど、まだ見られるのは、警戒してしまうな。
しかし助けてくれたのに変わりはないのだから「ありがとう」と言っておいた。
「どういたしまして」
と、笑いかけてきた彼女は、非常に可愛かった。
「さて、くらい話はここでやめにして、取り敢えず、お父様…国王様の所へと向かいましょうか!」
今更ながら、フィナが、エルフの姫だということを思い出し、返事が
「はっ、はい!お姫様?」
と、返事してしまったが、「フィナで良いですよ。」と言ってくれたので、そう呼ぶことにした。
そして、俺らは国王様の元へと向かって、歩き出した。
既に、お察しの方がいると思いますが、フィナはヒロインです。はい。