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花拾う人 伍 【異形の愛】

挿絵(By みてみん)



 浅葱の暖簾の向こうから弥平が無邪気な顔を覗かせたのは、空気がかすかにゆるみ始めた早春一歩手前。

 江戸の空が茜に染まる、暮れの頃である。


「よっ。坊主、元気だったかい。今日は妙にあったけえなあ」

「おっ、弥平じゃねえか」

 明るい声と共になだれ込んできた弥平を見て、一休は破顔する。

 一休といえばちょうど、土間に座り込んで煙管を一服吸い込んだ所だ。口に含んだ煙を、宙に向かってふうと吹く。

 生ぬるい空気に、紫滲みの煙はゆっくりと離散した。

「ひどくご機嫌だね、弥平の旦那」

「最近は妙に空気が暖かくなっていけないや。温い空気だと人肌燗の酒が旨くってね。進められるままに、ついつい、一杯二杯三杯と……」

 酒臭い息を吐き出しながら、おぼつかない足取りで弥平は右手を挙げる。

 左手にぶら下げているのは昨今はやりの砂糖菓子。南蛮渡来のその菓子は、口に含むとくしゃりと崩れ口の中を甘く染める。

 色も赤や白にと愛らしい、金平糖と呼んで江戸の人間は喜んでいる。

「ほらよ、みやげだぜ」

 それを一休に押しつけて、弥平は土間にだらしなく座り込んだ。

 弥平の体からは、酒と白粉と金の香りがする。

 古物商として名の知られたこの男はそろそろ40絡み。悪いこともしてきただろうが、どこか憎みきれない愛嬌があった。

 土が付くのも構わずに土間座り、目を細める様はただの小僧のように見える。

「今日もこの店に迷わずやって来られたな、弥平」

「おうよ。普段はちいっともこの店に辿り着けねえが、用事があるときはすぐ側にある。妙なもんだ。この店も、お前等も」

 弥平は酔眼でぐるりと周囲を見渡した。

 土間と畳の間、気持ち程度の家財道具。そんな小さな家の中には、土の埋まった鉢ばかりが置いてある。芽の出たものもあればまだ土だけの物も多い。

 鉢が多いせいか、空気はどこか甘く湿っている。

 その空気を吸い込んで、弥平はへらへらと笑ってみせた。

「何の店なんだか、わかりゃしねえ」

「だから外に書いてあるだろ、花髑髏」

 ここは、一休と地獄太夫の師弟が江戸の町にしつらえた、仮の住まい。

 花髑髏といかにも人を食った屋号で営む小さな店に、この男は迷わずやってくる。

 そもそもこの家自体、意識をしなくては普通の人間には気づかない類のものだ。この家に気がつく人間は、一歩あの世に足を踏みこんでいる。

 そういう類の、店である。

 それを不思議とも不気味とも思わず、この男は平然とこの家で飲み食いもすれば居眠りまでする。肝の太い男ではあった。

「今日はこの金平糖を持って来たら、すぐさま店への道が開いたぜ。ずいぶん都合のいい店だ」

「ところで、弥平の旦那。えらく景気がいいじゃねえか」 

 煙管をふかす弥平の顔をのぞき込み、一休は苦笑した。

 紫の煙がふわりとあがる、なかなかいい煙草である。その日暮らしのこの男にしては、高級な葉であった。

「ん? いい葉だろ。ほうれ、煙だけはお裾分けしてやらぁ」

 まるで戯れるように弥平が一休に煙を吹きかける。ふっと一休が身をそらせば、背後にあった影が小さな悲鳴を上げて尻餅をついた。

「きゃっ」

 黄八丈の愛らしい着物に前掛け姿。結い髪も初々しく、艶やかな白い肌にぷくりと膨らんだ頬の丸みが愛らしい。

「やだ……」

 黒い目をきょときょとさせて、小さな動物のように彼女は一休の袖にすがりつく。

 茶を運んできたのだろう。零れた湯が一休の膝をしたたかに濡らした。

「ぼう様……ぼう様」

 一休を坊様と呼んで震える少女は人見知りなのではない。人間が、怖いのだ。

 今もまた、彼女は細く白い首元ばかりを気にしている。一休は、その肩をそっと叩いてやった。

「牡丹。平気だ、この男はな。人間と言っても変わり種。怯えるこたあねえよ」

「おいおいおい、お前さん。綺麗な太夫観音だけでは物足りず、こんな愛らしい娘まで手籠めにしたのか、この腐れ坊主め」

 牡丹の顔を覗き込み、弥平が酒臭い息を吐く。牡丹はきゃ。と小さく叫んで顔を隠した。

 ……地獄に繋がる門前町のその入口に、牡丹の花咲く茶屋がある。この娘は、その茶屋の看板娘である。無論、人ではない。首ばかりがよく伸びる、轆轤首の娘である。

 休暇となれば地獄太夫に会いに、よく地上へと顔を出す。そのくせに、人に慣れないのがこの娘であった。

 妖怪というものは、元来気の弱い生き物である。

「この娘は太夫の友人さ。あんまり怖い顔を近づけなさんな。この子は太夫と違ってウブでね」

「……おししょ様」

 つん、と背をつねられて顔を上げれば地獄太夫が澄まし顔で立っている。彼女は澄ましたまま弥平に盆のものをすすめた。

「弥平さま。大したものも御座いませんが……」

 盆からは、人肌程度に暖まった酒に、旬の走りの鮑の煮付け。上に乗せられた山椒の小さな葉が、春らしい香りをまき散らす。

「相変わらず粋だね」

 ううむと呻いて弥平は箸をとる。が、その箸を一度置いて彼は懐を探った。

「今日も俺の観音菩薩は美しい。で。この娘さんはそんな菩薩のご友人。そうなりゃ天女様と同じ事。娘さんよ、驚かして悪かったね」

 弥平の懐から出て来たのは、銀の細工も美しい簪だ。

 華奢な造りだが、手が込んでいる。先には美しい椿の花の飾りが揺れていた。

「こいつをあげよう」

 一休の後ろに隠れる牡丹の髪に、弥平がそっと簪を差してやる。自然な手の動きを見て、この男、幾人の女を泣かせてきたか……と思うも、一休はその言葉を酒と共に流し込む。

 言わぬが花の男の友情であった。

「つばき……」

 簪に触れ、牡丹は不思議そうに首を傾げる。牡丹の娘に椿の簪など妙な組み合わせではあったが、弥平は満足そうに牡丹を眺めた。

「お前さん、牡丹という名前らしいが……どうも、椿がよく似合う。こう、伏した花の恥じらいが、お前さんにそっくりだ」

「あら……」

「おや、照れたね。そうさそうさ、照れ顔のほうがずっと愛らしい。ほれ、金平糖も甘いよ。坊主に喰わせるにゃ惜しいが、可愛い娘さんになら大歓迎だ」

「なんだい、坊主にも喰わせておくれ」

 袋を解いて掌に転がした金平糖は、赤と白の艶やかな色合いである。一つ摘まんで口にすれば、ほろほろ崩れて甘みが広がる。

 生まれて初めて金平糖を口にしたと思われる牡丹は、驚くように頬を押さえた。

「あら。美味しい」

「ほんに……今日の弥平様は気っ風がようござる。何やら危ないお仕事でも?」

 白い指先で弄ぶように金平糖を摘まんだ地獄太夫は、赤い唇の中にそれを押し込む。

 それをぼう、と見つめる弥平は慌てたように自身の頬を叩いた。

「いやさ、いい仕事が入ってさ……まあそれはこっちの話さ。それより、奇妙な噂を聞いたから、ちっとは役に立てるかと思って情報を持ってきたんだ」

「太夫に会うのが目的のくせに」

「美味しい情報で、いとおしい俺の菩薩様に喜んでもらえるのが一番の至福……」

 地獄太夫を菩薩とも観音ともよんで、手の一つも握らないのがこの男である。今もまた、杯を両手で受けて、たまらなく嬉しそうに一息に煽るのだ。

「弥平様、長くなるようですし、どうぞ部屋にお上がりに……」

 いや。と、気せわしそうに弥平は首を振った。今から仕事であるという。その前に取り急ぎ、情報だけを伝えにきたのだと彼は慌てるように言った。

「ちっとだけ立ち寄るつもりが、可愛い人と綺麗な人に囲まれて、ついつい長居をしちまうところだった。危ねえ、危ねえ」

 弥平は二杯目の酒を煽り、甘い息をはき散らす。そしていかにも大事な話をするように、声を抑えて語り出す。

「いやね、ここから三里ばかりいったところにある、寂れた山なんだが……」

 弥平が語ったのは、江戸の町から外れた山の話であった。

 人も住まない、寺ばかりがぽつぽつあるような寂しい山である。その山は江戸の城から見れば鬼門にあたる。そこに、最近奇妙な噂が立っている、という。

 夜な夜な泣きわめく亡霊がある。赤子を抱いた女の霊がある。いずれも近づけば生者を恨み取り殺すまでついて回る。幾人もその山で命を落とした……と、弥平はおどろおどろしく語って笑った。

「あんたたちの稼業の役に立つんじゃないかと思ってさ」

 弥平のいう一休の稼業とは、恨みを残した亡霊を捜すことであった。それを知ってからというもの、弥平はまるで忠犬のように、そんな噂ばかりを集めてくる。

 自慢げに胸を張る弥平に、熱い茶を与えてやりながら一休は口を尖らせた。

「……まあ、弥平よ。情報を貰っておいて、こんなことをいうのもアレだがね」

「なんだい」

 ふうふうと、茶碗に向かって息を吹く弥平には邪気はない。

 この邪気の無さが、いつか仇となるのではないかと一休は危惧している。

 実際のところ、弥平は無邪気にすぎるのだ。

「お前さん、あんまりこっちの世界に深入りしすぎると、いつかコロリといっちまうぜ」

 そう苦言を呈せば、弥平はぽん。と額をたたいた。

「そうさねえ。俺が死んで、もし頭に角でも生えてりゃあ……」

 人が恨みを残して死ねば、額を割って一本の角が生える。

 それが育てばやがて人は鬼となる。その前に、つみ取ってやるのが一休と太夫の目下の仕事である。

 そのことを知る弥平は、いかにも幸せそうに笑ってみせた。

「その角を、太夫にぽきりと折り取ってもらいたいもんだ。そうすりゃ、きっと俺は極楽にでもいけるだろう」

 玄関の向こう、不意に強風が吹き付ける。

 それはがたがたと、小さな長屋を揺らす。春の雨を連れて来る風だ。春の嵐の予感である。

 季節の花を全て散らしてしまう。と、地獄太夫が切なげにため息をついた。



 夜になるにつれ、風はますます強くなる。

 時折、温い雨が顔を打つこともある。しかし旅慣れた二人に風など足止めにもならない。

 青から群青、紺から熟し柿の茜色、混じる雲は朱に染まり、風に雲が吹き飛ばされればそこに現れたのは夜の色。

 闇の合間を縫って山を駆け上がれば、自然に二人の息が揃った。

 人がいない。生きたものの気配がない。まだ春浅いこの季節、虫も眠りから覚めていないのだろう。春や夏なら聞こえるはずの、虫の声も聞こえない。

 早春の山は、血の通わない女の肌に似ている。

 そのくせ、山の中に作られた鬼門封じの寺から、低く高く念仏の声が聞こえるのが不気味だった。

「この山にゃ違いねえはずだがな」

「轆轤の娘が渡してくれた、この枝が頼りになりまする」

 一休のすぐ後ろを歩く地獄太夫が持つのは、桃の枝を乾かした細い棒である。あやかしの気配があれば右に左に揺れるのだ。それは先ほどから、真っ直ぐ目前の道を指している。

「こんな便利なもの、牡丹はどうして手に入れた」

「あの子は、地獄の獄卒と……」

 地獄太夫は珍しくも、眉を少し寄せて困ったように首を傾げて見せる。

 牡丹の娘は、地獄の獄卒に惚れている。まだ深い仲では無さそうな、淡く幼い恋である。

 牡丹の気を引きたいのか獄卒は時折、職務に関わるものまで娘にやるのだという。

 端からみれば愛らしい恋心だが、所詮獄卒と妖怪など叶わぬ恋の物語。それをやるせなく思うのか、地獄太夫は最近溜息ばかりを吐いている。

 その憂鬱を払うように、一休は手の錫杖を一度鳴らした。

「なるほど、その枝は正しいぜ。あれにみろ、確かに妙な小屋がある」

「……気配があります、おししょ様」

 地獄太夫が、ふと足をとめた。

 木の隙間から、小さな明かりがみえたのだ。それは木と茂みに埋もれたあばらやである。

 火が灯っているのだから、人が住んでいるのだろう。亡霊は火を使わない。

 もしくは、人間を誘い込もうとする魂火か。

「……女の気配」

 地獄太夫はこくりと首を傾げる。一休もまた、目を閉じて気配を探る。

 目の前の家からは、白粉の香りが流れてくる。衣擦れと、なまめかしい脂の香りもする。そして、もう一つ。

「べっぴんの気配だな。あとは……」

 それは、男の香りである。乾いた香りだ。年寄りだろう。かすかに薫る血は、獣の血か人の血か。

「こいつは、一気に二本も収穫できるかねえ」

 一歩、踏み込むと足下に影がのびた。

「……おっと」

 一休は思わずたたらをふむ。

 気配など一つもなかったというのに、突如横の手から一本の棒が延びてきたのである。

「とっとっと」

 一休は片足で数歩すすみ、地獄太夫の袖をとる。彼女を自分の背に隠し、ようやく錫杖で地面を突いた。

「おいおい、いきなりご挨拶じゃねえか」

「錫杖の音に白粉の匂い。フウン、坊主が女連れとは恐れ入る」

 くつくつくつと、低く笑う声が静寂を破った。

「……こんな山奥に珍しいことがあるもんだ。お客さんかイ」

「いや、迷ったのさ。この山は暗くていけねえ」

「坊主と女の道行きにゃ、暗い方が都合が良さそうなもんだがヨ」

 側面から現れたのは、一人の老人であった。

 背は低く、短く刈られた髪はすっかり白い。皺の寄った目は硬く閉じられ、薄く見える目の玉は白く濁り光もない。

 垢のしみた小汚い着物をまとい、背には琵琶を背負っていた。

 盲目の男である。手に持った棒は体を支えるための杖だ。それで一休の足下を違わずついたのだから、ただものではない。

 どのような稼業の男なのか、聞くも野暮だろう。と一休は思う。

 目こそ閉じられているものの、その精悍に焼けた肌と体躯の力強さはおおよそ、かたぎではない。

「坊主にお嬢さん。迷ってンなら、茶でも飲んでくかイ」

「ありがたいね……いやなに。旅の途中で、変な噂をきいてね」

 一休は男の顔をのぞき見るように、ゆっくりと語りかける。

 その顔は、生きているのか死んでいるのか分からない。しかし、その肌は生きているものだ。死んではいない。その癖、不思議と血の気を感じない。

 あまりに、静かすぎる。

「この山にゃ、幽霊がでるってな。それで来たんだが……お前さん、幽霊かい?」

「念仏でも唱えて徳の一つも積んでいくつもりか、坊主よ」

「こんな恐ろしい山に住む化け物に、俺の念仏がきくもんかね」

「さァ。試してみな。少なくとも、俺にゃ馬の耳に念仏だ」

 ついてこい。と、男は杖を頼りに歩きだす。

 一休らが男のあとに続いてあばら屋の戸をくぐれば、つん。と白粉の香りが強くなる。今にも崩れそうな家の中、真ん中には囲炉裏が一つ。ぽうと灯った火が、上にかけられた鍋を揺らしている。

 一歩、中に入れば温い空気が顔を包んだ。

「恐ろしいと言やァ……家に入るときにゃちょいと気をつけなよ坊主にお嬢ちゃん」

 男は相変わらず人を食ったようなものの言い方で、一休を省みた。

 見えていないはずの目が、にやりと怪しく微笑む。

「俺の可愛いヤツは、嫉妬深くてなァ」

「時雨!」

 声は、上から振り落ちてきた。

 甲高い、女の声だ。先ほどから身じろぎ一つしなかった地獄太夫がはじめてかすかに動く。

 彼女の黒目が、一瞬だけ空を見てそして止まる。

 一休も、つられて天をみた。

 山のあばらやによくある話で、この家は天井までがひどく高い。太い木々で組まれた天井と柱の混じり合うその支柱に、不気味なまでに長い蜘蛛の足が見えた。

「雲。妬くンじゃねえよ、客だ。降りてきなあ」

 時雨と呼ばれたその男は平然と、その足に向かって呼びかけるのだ。

 黄色と黒の混じり合う蜘蛛の足の大きさは、人のものとさして変わらない。短い毛がびっしりと生え揃い、とがった爪はいかにも鋭く支柱をつかんでいる。

 それがやがてぎちぎちと、音を立ててうごめいて、ぶくりと膨れた蜘蛛の腹が見えた。一抱えもありそうな、巨大な腹である。

 続いて柱の向こうから見えたのは、赤と黄色に染め抜いた友禅織の袖に垂れた帯。

 そして、その上に付いたものは、意外なまでに小降りな女の顔である。

「時雨。なんで、こんな変な坊主に……女なんて」

「……ほう、女郎蜘蛛か。本物は初めてみたよ」

 一休は思わずためいきをつく。

 柱の向こうから不服そうに顔を出したのは上半身を人間、下半身を蜘蛛とする女郎蜘蛛であったのだ。

 女は体に似合わぬ素早さで飛び跳ねると、時雨の後ろに隠れる。時雨はそれを不気味がることもなく、女の髪をそうっと撫でた。

 慈しむその手の動きに、一休は大笑する。

「女郎蜘蛛もはじめてだが、女郎蜘蛛をモノにした男もはじめて見たぜ」

「お雲、ってんだ。おい雲ヨ。挨拶しな」

「……」

 時雨が背を押しても、雲はうんとも寸ともいわない。一休を見ているのではない。地獄太夫を睨みつけているのだ。

 地獄太夫も張り合うように、じいっと雲を睨んでいる。

 阿婆擦れた雲の美しさと、気高いまでに美しい地獄太夫の視線は、痛いほどに宙で絡み合う。

「太夫よ。いい顔だな」

「おししょ様。太夫の顔はちいっとも、動いておりませぬ」

「そうかい」

 人の世界に混じり合っているせいか、最近の地獄太夫には少しばかりの人らしさが芽生えている。一休はそれが何よりも嬉しいのである。

「……おい爺さん。こんな化物と暮らしてたら食われちまうぜ」

「おかしいねぇ。俺ア、雲をもう百回は食ったがまだ食われる気配もねエ。おい雲よ、お前は俺を食いたいかい」

「あたしゃ、時雨に食われる方がいい」

「だとよ」

「のろけか。食えねえ爺さんだ」

「てめえもな、坊主」

 鍋の中には、湯がたぎっている。それを割れた茶碗に注いで時雨は一休に差し出した。

 ぱちり、と火が弾けると暖かさが指にしみた。

 江戸の町は早春でも、この山は春が遠いのだ。

「……なあ、坊主にお嬢ちゃんヨ。てめえら、死んでンだろ」

 時雨は背に負った琵琶をおろして、指ではじく。鈍く響く、粋な音である。

 一休は足を組み、その音に聞き入る。

「……さてねえ。実際、死んでるんだか生きてるんだか。自分でも分かんねえ時があるよ」

「目が見えなくなりゃ、耳ばっかりが良くなっていやンなっちまう。坊主もお嬢ちゃんからも鼓動もなんも聞こえやしねえ。ほれ、そこを飛ぶ亡霊どもとおンなじだよ」

 ふ。と時雨が琵琶をかき鳴らす。それはうめくような音だ。その音に引き込まれたか、空気がよどんだ。

 は。と地獄太夫が扇子を広げて顔を庇えば、そこに一筋の血が垂れ落ちた。

 顔を上げれば、天井に苦悶に満ちた顔がひとつ、ふたつ……無数。

 男も女も子供も誰もみな、血にまみれた顔で声で恨みを叫ぶ。

 血がぽたぽたと、床にはねる。しかし時雨は気にもせず、血塗れの指で床においた琵琶をたたく。

 太夫はそれにあわせて舞うように扇子を泳がせた。浅葱色の扇子が赤色に染まったと見えたが、それは幻だ。

 琵琶が泣きやめば、亡霊は一瞬でかききえて、血の跡も消え失せた。

「おいおい爺さん。こりゃ見事に恨まれてるな」

「だろうな。全部、俺が殺した」

 ぼん。と琵琶が揺れる。時雨の背にぴたりと張り付いた雲が、一本の足で琵琶を撫でたのだ。

「あたしが食ったのも幾人か混じってるよ。時雨ばかりの、仇じゃあない」

 雲は時雨の腕に絡み、頭に口を付け猫の子のように甘える。

 そんな雲の腰に手を回し、時雨はにいっと笑った。

「亡者の泣き言恨み節は、耳に五月蠅いねエ」

「なるほど、ここは化け物屋敷ってえわけかい」

 弥平の言っていた噂話とはこの家のことか。と、一休は首を傾げる。それにしては妙だ。空気が静かすぎる。それに先ほどの幽霊は、屋敷というよりも時雨にのみ取り憑いている。

 それに地獄太夫の持つ桃の枝は、先ほどから屋敷の外ばかりを指しているのだ。

「殺したければいつでもどうぞと、言って聞かせても嘆くばかりで近づいても来やしねエ。お前さんがたも、あの亡霊と同じと思ったが、チィっと違うみてえだな」

 この家は邪気に包まれているが、この二人に邪気はない。弥平の勘違いか、それとも場所を誤ったのか……一休は一瞬考えこみ、やがて腰を上げた。

「ちょいと失礼するぜ……ん?」

 一休が一足跳びに触れたのは、時雨の額だ。

 雲は目をカッと見開き今にも一休に噛みつきそうに腕を振り上げたが、一休はそれを寸でのところでかわした。

 時雨は身じろぎも一つせず、にやにやと笑っている。

「なにを驚くことがある」

「いやね、鬼の角の気配を感じてきてみたのだが、おまえさんに角はねえ。本当に、生きてんだな、爺さんは」

「人だもの。角なんぞ」

「いやさ、死んでないことに気がつかねえやつも多いのさ」

 一休は腰を下ろしなおし、まだ温い湯を飲んだ。喉と胃がきゅっと暖かくなる。死んでなお、酒や湯は一休を暖めるのだ。

「恨みを残して死ねば人でも物でも額に角が生える」

「ほう? 面白い話だ」

 人は恨みや後悔を残して死ねば、未練が足をひく。足を引かれれば恨みごとばかりが死んだ体にのしかかる。

 その重さはやがて一つの塊となり体から沸き上がってくる。

 未練と恨みは額を割って、一つの角となるのである。

「俺はね。そんな角を集めている」

「酔狂な坊主だ。角を集めてなんとする」

「地獄に」

 先ほどまで雲とにらみ合うばかりであった太夫が、ようよう声をあげた。

「……植えまする」

「俺が地獄に向かうのは、残念ながらもうちっと先みてエだなお嬢さん」

 突然の地獄太夫の言葉にも、時雨は動じない。雲の手を撫でたその手で、彼は自分の額をたたいてみせた。

「俺の額を叩いてみても、からんからんと空っぽの音しかねエだろ。なぜだと思う」

「さてな、変わり者の爺さんの考えてることなんざ分かりやしねえ」

「恨みなんンぞないからさ。ただし、ちいっとばかし未練はあるがね。こんな綺麗なイロを残して死ぬのはまだ惜しい」

 そうささやいて、時雨は雲に頬ずりをする。雲はその声に、生娘のように赤くなった。

 化け物とはいえ、確かに美しい娘であった。地獄太夫に及ぶことはないが、きかん気の顔立ちは十分、そそるものである。

 この顔で、女郎蜘蛛は人をおびき寄せて食うのだ。もちろん今は、逆に時雨に捕らわれてしまっているが。

 一休は雲の顔をのぞき込み、笑う。

「盲目のおまえさんには見えないだろうが、確かにその娘は綺麗な色を持っている」

「ふん。坊主に褒めらるなんぞ、怖気がふるう」

 雲は照れもしない。ただ白い糸をぷっと、一休に向かって吐き出すだけだ。

 その糸を、太夫の扇子が払い落とす。彼女は珍しくもふてくされた顔で、一休を睨むのだ。

「おししょ様」

「はは。妬くな、妬くな」

「妬いてなどおりませぬ。年寄りの冷や水と申し上げただけです」

 地獄太夫の白い指が、ついっと一休の指をつねりあげる。ちくりと走った痛みに、一休は大笑した。

 ……大笑ついでに吸い込んだ空気の中に、ふと甘い香りが混じった気がして一休は動きを止める。

 すん。と鼻を動かせば、確かにどこからか甘い香りが漂ってくるのだ。

「……ところで、爺さんよ。外から薫ってくるのは梅かい」

「アア。梅園がある。ついてきな」

 杖を頼りに時雨は立ち上がる。けなげなまでに雲がそばに寄り添って、二人が案内をしたのはあばらやの裏にある小高い丘である。

「夜な夜な、わけエ男の泣き声が聞こえる。坊主よ、探してるのはそこの場所じゃないのかい」

 家の裏、丘の上には闇夜にもまぶしい白と朱が舞っている。

 それは梅の花である。一面が、梅園なのだろう。外にでると香りが強い。くらくらとするほど、甘い香りだ。

 人の手に頼らず育った梅の花は野性的で、強い。

 その香りの中心から、若い男のすすり泣く声がかすかに聞こえた。地獄太夫の持つ桃の枝が、身もだえをするように震える。

「爺さん、なんぞ人でも殺して埋めたかい」

「梅園に人を埋めた記憶はねえな。雲よ。お前は何か知ってるかい」

「さあて」

 雲は花になど興味もないようで、時雨にしなだれかかり赤い舌をちろりとだした。

「あたしも人喰いはご無沙汰だ。あんたに惚れちまったからねえ」

「だ、そうだヨ」

「ご馳走様だ、爺さん。ま、梅の園に行って見れば、わかるだろ。ちょっくら行ってくる」

「俺も助けてやろうか」

「いんや。こいつにゃちょいっとコツがある。お前さん。人は殺したことがあっても、亡霊を殺したことはあるまい」

「化物には化物の戦いがあるってエわけかい」

「坊主の仕事だと言ってくれよ爺さん」

 時雨はあざ笑いながら、その場に座り込む。見学を決め込むつもりなのか、背の琵琶を下ろして弦の調節ばかりをしている。

「おししょ様」

「太夫もそこに居な。二人でやるにゃ、ちいっと狭そうだぜここは」

 一休は草鞋を落として錫杖を抱えるなり丘を駆け上がった。緩い丘のくせに、一歩一歩が重い。梅の花の香りがますます強くなる。

 一休を拒むように花が揺れる。

 鋭い枝が、こちらをみる。

 梅が、一斉に一休をにらんだ。

「おっとっと」

 梅園に駆け上がれば梅の枝がしゅるりと延びた。まるで鞭のように一休の足を、腕をからめ取ろうと動き回る。それを錫杖でたたき落として、一休はぽかんと目前の風景を見た。

「おお、おお。見事なまでの梅園だ」

 しっかと大地に根を張った梅の数は千を超えるか、万を超えるか。いずれも見事な枝振りで、天に向かった太い枝に数千数万の花が咲く。

 朱に白に桃色に、形も色もさまざまなその花に共通するのは甘い香り。

 闇の中で妖しいまでにぽうと灯る花、花、花の群生だ。

 その花の中心に、ひときわ大きな梅の花があった。

 大人が並んで囲んでもまだ掴みきれないその太い幹、枝は男の腕ほどもある。そんな巨大な枝には花がみっちり咲き誇り、まるで鋭い刀のように天に向いている。

「あいつが、ここの主かな」

 折れた枝には年経た年輪が幾つも輪を描いて浮かんでいた。長く生きたものは化け物となるという。ならばこの梅は、化け物である。

 そんな梅を守るように、一人の男が立っていた。

「つまんないねえ。なんだい、あのひょろひょろの若造は。ああ、鎧装束は遊びかえ。ちいっともそそられない」

 いつの間に丘を駆け上がってきていたのか、背後から雲のせせら笑う声が聞こえた。

 彼女は毛の立った蜘蛛の足で梅の枝を踏みつけて、その赤い唇で梅の花をむしゃりとしゃぶる。梅の枝はあらがうが、その動きが彼女の嗜虐心をくすぐるのだろう。

 雲はいたぶるように枝をちぎり、花を踏みつけ、その舌が蜜をしゃぶる。

 彼女の触れた先から、梅の枝が腐って落ちた。

 そして、目前に立つ男を、忌々しそうに睨むのだ。

「ああ。優男ってやつがあたしは一番嫌いだよ」

「坊主ヨ。俺にひとつ、分かるように説明してくれ。雲は俺にベタ惚れで、よその男を見りゃ悪口しかいわねえのよ」

 丘の下から、時雨の声が聞こえる。空気が澄んでいるので、音がいつもよりよく響くのだ。

「爺さん、あんたの言いぐさにも慣れてきたぜ。まあ、爺さんの勘は腐っちゃいなかったってことだな。朱と白の梅園に、鎧装束の男がひとり。ああ、こいつは恨みを残して死んでござんなる」

 目前に立つ男は死人である。その白い顔に、恨みを残して泣いた顔。体には百年も昔の古い鎧を身につけて、腰にまとった刀も今ではほとんど見られない、古い形のものである。

 死人とはいえまだ年若い、美しい男である。いずれ名のある家の若武者だったのだろう。

 戦装束を身につけているところをみると、戦で死んだか。戦の幾前に死んだか。

 能面のような白い顔で、男は泣いている。

「……なんと見事な、能の舞台だ」

 一休は、うめいた。

 白と朱の梅の舞台に若武者の霊、吹き付ける春の風に枝が揺れれば、空に映るは上弦の三日月。

 これほど見事な舞台をいまだ見たことがない。

「能ならば、合いの手を入れてやろう、坊主」

 丘の下から、琵琶がひとつ、鳴った。

「お嬢ちゃんの背から、三味線の掠れた音が聞こえるねエ。背におうたものは飾りか」

「あい。三味線にございます」

「弾け」

 有無をいわさぬ言い様で、時雨の声が響く。

「俺も琵琶をたたくからよ」

「時雨っ」

「妬く声も愛らしいなあ、雲。お前は俺の口でも吸ってりゃいい」

「……あまりにも貧しい腕ならば、名人にお聞かせするのも耳障りになろうかと思いましたが」

 琵琶の音の向こうに、三味線のかすかな音色が聞こえた。ぎりりと、擦る音だ。やがてそれは、ぴんと弾ける音となる。

「琵琶と合わせていただけるのであれば光栄至極」

 琵琶と、三味線が同時に音をたてた。その音が風を起こしたか、目前に花が舞う。花の向こうで、若武者は一人、嘆きの声をあげて刀を抜いた。

 舞い落ちた梅の花は、やがて小さな矢へと姿を変える。それは枝から解き放たれて、いくつも一休の足下に突き刺さった。

「血気盛んな亡霊だな。話し合いじゃあ満足しねえらしい」

 一休は錫杖を刀のように構えて、笑う。

「……そいじゃ、一つやり合うか」

 確かに若武者の額には、愛らしい角がひとつ、みえたのだ。



 どれだけ走り回っただろうか。

 梅の舞台は観るには良いが、いざ走るとなると息が切れる。右から左から、梅の花が枝が一休の動きを封じようと邪魔をする。

「仇を」

 武者姿の男は、泣きながらそればかりを叫んで刀を振り落とすのである。

「仇を」

「お前さんの未練ごとは、仇討ちか」

 しゅ、と風をきって刀が一休の頬を掠める。丘の下から高く低く響くのは、時雨と地獄太夫の琵琶と三味線。風の音に乗って、爪弾く音まで聞こえてくる。

「武者と生まれ落ち、このような花の園で……」

 男は音など聞こえてもいないのか、落ちくぼんだ目の奥から涙を溢れさせて大きく腕を上げた。

「死ぬなどと」

「坊主よ。塵がこっちにまで飛んできてるぞ」

 ぴん、とバチの激しい音が聞こえる。丘の下に、花の矢が飛んだのを時雨がバチで叩き落としたのだろう。その刹那、音が止まり静けさが耳を突いた。

「……話を聞いてやろうか。若いの。お前は仇討ちの前に、ここで死んだか」

「……父の仇を殺す戦の前に、俺は、この梅に」

 静けさが彼の心を落ち着かせたのだろう。若武者は刀こそ手放さないが、乱れた息を弾ませて、巨大な梅の木を仰ぎ見る。

「……俺は梅の木を愛して」

 無数の花を揺らすその木は、まるで若者を守るように腕を大きく広げている。

 春に先立ち花を付ける梅の木は、元来、情の深い花である。

「行くなと……泣く梅に哀れを催し」

 木の根元に、老いた女の姿がぼう、と浮かんだ。

 艶やかな着物を老いさらばえた体に纏い、白の髪で顔を隠し彼女は男の腕を取る。

 それは優しい、優しい愛撫だ。

「俺は、この場所に」

「捕らわれた」

「仇も討てず」

 女の腕が男の胴をかき抱く。腕に絡みつく。行ってくれるなと、老婆は嘆く。男は突き放すこともできず、その場に崩れた。

 何百年も、このように繰り返してきたのだろう。武者の鎧は、胴の辺りが擦れて薄くなっている。

「なるほどな。お前は仇を討ちたし、梅の木は離れがたし……」

 父の仇を討つと決めた若武者は、梅の木の情愛にとらわれてここで死んだ。

 愛に生きれば未練もなかったものを、武者としての血が足を引き、成仏もできず毎夜ここで嘆き続けて過ごしたのだろう。梅の木もまた、男への未練と己が愛の浅ましさに嘆いて過ごす。

 いずれも、行き場のない未練である。

「よし、俺が仇だ。斬られてやろう」

 一休は錫杖を放り投げた。その途端、丘の下から琵琶の音が響き渡る。

「お前が……?」

「おうよ。俺がお前の仇だ」

「お前が」

 静かな琵琶の音色に乗って、男が立つ。老婆がすがりつくのも構わずに、男は刀を振り上げる。

 波のような刃紋が、花の光を受けて青く光る。

「……斬った」

 真っ直ぐに振り下ろされた刀は、確かに一休の体を縦に裂く。

「斬った!」

 男は震える声で、その場に崩れ落ちる。梅の花が、ざっと音を立てて風に舞った。 

 甘い香りに包まれて、男は呆然と己の手を見るのである。

 男の額の角が割れ、その手の中にほろりと小さな粒が落ちた。

 それは愛らしい、梅の実である。

「俺は、仇を……討った」

 男が崩れ落ちるのと同時に、老婆が駆け寄り彼の体に覆い被さる。

 その体は一瞬のうちに、花の大群に姿を変える。サッと広がった花の粒は、地面に触れるなり汚い茶色に朽ち果てる。

 その上に膝を落とした一休の体を、小さな手が不意に掴んだ。

「おししょ様!」

「大丈夫だ。太夫」

 一休の体を後ろから支えたのは、地獄太夫の白い腕。それをぽん、と撫でて一休は笑って見せる。

 一休の体には、傷の一つもついてはいない。

「俺を斬ったのは、ほれ。あれだ」

 一休が指した先は、花に埋もれた男の腕。彼が掴んだ刀は、古びた梅の枝である。

「梅の、枝」

「いつからか、刀は朽ちて代わりに梅の枝を手に仇を待ち続けたのだなあ」

「ああ。枯れていく」

 梅は音を立てて枯れていく。そもそも梅も生きてはいまい。男の執念だけで生かされた。

 男が真の意味で死んだ今、梅もまた生きてはいけまい。

 ぎしぎしと音を立てて崩れる梅は名残に甘い香りをまき散らし、やがて花も枝も幹も全てが枯れ果てた。

 巨大な梅は朽ち果ててなお、起立したまま立ちつくす。

 剥き出しとなった根元には、張り出した太い枝が鎧装束の髑髏を貫いている。

「梅の枝に突き刺さってしんでござるよ」

「……幸せそうに微笑んでいらっしゃる」

 地獄太夫は枝に絡みつくその体を、どこか羨ましげに見た。

 髑髏の手は、まるで梅を愛撫するように固まっているのである。

 地面に落ちた小さな梅の種は、男の額から落ちた鬼の角。それを手のひらに包み込み、地獄太夫は額を俯ける。

「……春の園に植えてあげましょ」

「せめてもの、はなむけだ」

 一休は懐に収めてあった金平糖をまき散らした。

 赤と白の金平糖が、枯れた大地にサッと広がる。

 その色は、満開の時を思わせる。白の髑髏に咲く砂糖菓子の花を見て、地獄太夫は一言、念仏を呟く。

 一休はその背をそっと叩いた。

「生きた世も、幽霊の世も、切ない、切ない」

 いまだ丘の下には、時雨が琵琶で遊んでいるのだろう。

 まるで同意をするように琵琶の音がほろりと泣いた。

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