そんなの無茶です的、な。
やっと本題突入。
喉を通過させるもの正直厳しいほどものすごく苦い、文字通りの苦痛の寛ぎティータイムが終了し、ほっとしたところで、おもむろに神官長様は口を開かれました。
「マリアベル、今回のことはとても驚かれたことと思います」
はいもう、驚いたなんてものじゃありません。
「あの、託宣で、とのことでしたけれど、託宣とは何の……」
その言葉を告げられた時からわたしの頭の中を占領していた質問を投げかけました。
「託宣、そうですね。託宣とは何か、はご存じですか?」
「……何となく、ですけど」
心持ち不安げに首を傾げると、神官長様は詳しく説明してくれました。
曰く、託宣とは神殿本殿の奥の宮にいる巫女姫様のみが受け取れる神の啓示である。
巫女姫様のみが神との意思疎通が可能である。
託宣とは滅多にあるものではない。
託宣の結果は絶対である。
託宣とは国の大事に関わることである。
因みに前回の託宣は十年前、勇者様選定時のものである。
「…………」
それを聞き、よりなお何故わたしに託宣が下ったのか不思議で仕方ありません。
国の大事に関わること。
託宣が、そこまでの意味を持ってるとはさすがに思いませんでした。
「……あの、人間違い、とかでは?」
「あの村であなたと同い年のマリアベルさんという女性は他にはいますか?」
「……いません」
「では託宣の相手はあなたで間違いありません」
託宣とはそこまで特定されるものなのですか。
辺境の農村の名もない普通の女の子であるわたしを名指しだなんて、神様はどこまでお見通しなのでしょうか。
ううん、もともとするつもりはないですが、これではとても悪いことなんてできませんね。
……あら?
「そう言えば、託宣の意味はわかりましたが、そもそもわたしに下された託宣っていうのはなんでしょう? わたしがここに連れてこられた理由は……」
問うたわたしに、神官長様はゆっくりと頷きました。
「そうですね、ではお話しします」
「は、はい」
「さきほど、前回の託宣は勇者の認定だと申し上げたのは覚えてらっしゃいますか?」
「はい」
さすがにこの短時間で忘れようはありません。
「今回の託宣は、その勇者の一行にあなたを加えるように、とのことでした」
勇者の、一行に、わたしが……?
「……………………はい?」
聞き間違えたかな、とわたしは首を傾げました。
「勇者のパーティのメンバーに神より直々に選ばれた、ということですよ」
わたしの反応に、神官長様はご丁寧にわかりやすく言いかえてくれました。
が、問題はそこでなく。
「あの、勇者様って、魔王を倒したりするアレの方ですよね?」
「ええ、あと魔族や魔物を討伐するアレのこのとですね」
「そのメンバーに、わたし?」
「はい、あなたが選ばれました」
「……………………」
わたし、何の戦う力もないただの女の子なんですが。
そんな無茶ぶり、ありなんですか……?
勇者は次回、延びたら次々回に登場、予定。