託宣には逆らえない的、な。
ノリで続けてるサブタイがおかしいですが、変えるのもアレなんでもうこのままでいきます。
その日は突然訪れました。
庭先で洗濯物を干していたら、村では滅多に見かけることのない騎士様達の姿が。
いったい何事かしら? とのんきに眺めていたら、どんどんわたしの家に近づいてくるではありませんか。
あらあらあらと思っているうちに、あっという間に騎士様達は洗濯物を手にしたわたしの前までやってきました。
あの時は本当に生きた心地がしませんでした。
悪いことなどしたことない、やましいことに心当たりはないとは思っても、そんなの理屈じゃないって思いました。
そんなわたしの心のうちを知ってか知らずか、一人の騎士様がわたしの前にスルスルと書面を掲げて見せました。
そこには何かが書いてありましたが、わたしには読めませんでした。
字が読めなかったわけではありませんよ?
達筆過ぎて読めなかったのです。
硬直しているわたしに、騎士様はわたしの名を呼びました。
「マリアベル」
「は、はい」
わたしは由緒正しき庶民なので姓はないのです。
村ではそれで通じますし、よそでは~村のマリアベル、~町のマリアベルって名乗るのが一般的なのですよ。
それはそれとして、騎士様はわたしの返事を聞くと、一度頷いてから大きな声で言ったのです。
「そなたに、王宮の神殿より託宣が下った。われらはその迎えの者だ」
わたしは思わずぽかんとしました。
託宣、の言葉の意味がわからなかったわけではないですよ?
何故一介の村娘でしかないわたしに、王宮の神殿の託宣が下されたのかがさっぱり理解できなかっただけです。
普通託宣が下るというのは、国の一大事だと思うのですが。
だけど、そんなことは預かり知らない騎士様は、きっとわたしが言われたことを理解していないと解釈されたのでしょう。
今度はもっと噛み砕いて、おっしゃいました。
「神殿の偉い方がそなたをお呼びだ。そなたに拒否することは許されていない。わかるかね?」
「は……はい。でも、あの、どうして……?」
「それはわれらも知らぬ。王都に行けば神官長直々に説明があるはずだ」
「は……」
わたしはぐるぐるした思考のまま、頷きました。
拒否権はない、ということであれば断るのは不可能です。
「い……一日だけ下さい。準備、しますので……」
やっとのことで、それだけ口に出来ました。
騎士様はそのわたしの返答に、小さく頷いてくれました。
次回はマリアベル、ドナドナ編です。