勇者パーティには変わり者しかいないのでしょうか的、な。
ミラ様回終了。
首席魔法使い様だなんて、きっと高齢の気難しい方なんだと思っていたわたしは、実際にはまだ若い女の子だったことに少し驚きました。
しかも、すごい可愛い女の子です。
ちょっと神官長様とのやりとりに不安を覚えないわけではありませんが、「よろしく」と言ってくれたことですし、仲良くできそうでよかったです。
「は、はい。よろしくお願いします。わたしはマリアベルと言います」
わたしがそう挨拶してぺこりと頭を下げると、首席魔法使い様……ミラ様はにっこりほほ笑んだ。
「ではさっそく実験のお手伝いをしていただこうかしら~。そこな下僕、わたくしの作成した魔法防御のベストを着て、ちょっと攻撃魔法を受けて頂けるかしら?」
……はい?
「え、ええと?」
「ミラ……! マリアベルはあなたの実験体ではありませんよ。それに下僕とはなんですか、下僕とは……!」
神官長様にそう言われたミラ様は、目をぱちくりとさせました。
「まあ、下僕ではありませんの? では、あなたは何なんですの? 魔法使い? 騎士? 賢者? 神官? 巫女? 何ができますの? 攻撃魔法? 防御魔法? 治癒魔法? 剣技?」
ああ、今までわたし自身が疑問に思っても誰も明確に回答してくれなかった質問をされました。
「わたしは、……村娘? です。何ができる……、ですか。料理、とか裁縫とか……?」
苦し紛れに答えたわたしに、ミラ様は首を傾げました。
「料理や裁縫が魔王討伐に役に立ちますの?」
「……立たないと思います」
そうですよね。
本当に、その通りですよね。
わたしは胸の前で手を組むと、神官長様を見上げて言いました。
「し、神官長様。やはりわたしがこの場にいるのは何かの間違いでは……」
「託宣に間違いはありません。あなたは今はこの場にいるだけでよいのです。この役目はいずれ、おのずとわかることでしょう」
即断で却下されました。
……やはり村には戻れないようです。
「それはともかく、ミラ。そういうわけで、マリアベルに失礼な態度を取るのはおやめなさい」
「はあい、わかりましたわ~。でも魔法使いでも勇者でも騎士でも神官でも下僕でもないなら、あなたのことは何と呼べばいいのかしら?」
そこは普通に名前でいいんじゃないんでしょうか。
そしてミラ様の中では魔法使いや騎士や勇者や神官と下僕は同列なんですね……。
「それに下僕でも魔法使いでもないなら、わたしはあなたをどう扱えばいいのかしら? 役割がないとわかりませんわ~」
「そ、それは、お友達……ということで」
「お友達?」
ミラ様はパチパチと瞬きされました。
そのまつ毛がとっても長いので、ふさふさと音がしそうな気がします。
う、羨ましくなんかないんですからね。
「お友達……って、あの、何の用もないのに無駄にお喋りしたり、お茶をしたり、食事をしたりする、あの?」
「は、はい」
無駄、かどうかはわかりませんが。
「一緒に出かけたり、買い物したり、遊んだりする?」
「はい」
それは間違いありませんね。
「一緒に寝たり、永遠の誓いをしたり、それを破ったりしたら末代まで祟るような?」
「は、……は?」
永遠の誓い? 末代まで……?
「以心伝心で一心同体、魂の結びつき、わたくしのソウルメイト……! わかりましたわ、マリアベル! わたくしのお友達! これから、よろしくお願いなのですわ~」
「え、……えええー?」
重い、重すぎます。
たかが友達でそれは重すぎます……!
わたしはそれは違います、と訂正しようとしました。
ですが、「はじめてのお友達」と、うきうきと浮かれている美少女の前に、わたしは沈黙を守ることしか出来ないのでした。
次回は王子登場、予定。