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激甘・団子・レンジ  作者: kotarouop
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激甘・団子・レンジその1

「私お団子が食べたい。」


 とある日下がり。

 いつものように二人で何をするでもなく家でくつろいでいると彼女はいきなりそんなことを言った。

 「急にどうしたの?」

 「どうしたもこうしたもないわ。私が楽しみに取っておいたお団子を勝手に食べてしまったのはあなたじゃない。これはもう私のために街へ出て、一日百個限定のあの店のお団子を買ってくるしか私の機嫌を直す方法はないわ。」

 「今からかい?もう昼過ぎだし売り切れてるんじゃ・・・。」

 「いいから行きなさい。」

 「はい・・・。」

 

 そんなわけで僕は一人家を追い出されて街まで行くことにした。

 僕の家から街まではおよそ自転車で一時間ほど走らなければならない。季節は夏に入ってないとはいえ、決して日差しが弱いわけではない。遠くで聞こえる消防車のサイレン音がさらに僕を不快な気持ちにさせる。僕は首筋や額に汗が伝うのを感じながらペダルをこいだ。


 家から自転車で十分ほど走った辺りで泣いている女の子を見つけた。


 見た目は小学校低学年くらいで眉より上で一直線に迷いなく切られた前髪が可愛らしい見た目をしている。肩のでたノースリーブのワンピースはもう季節が春ではなく夏に向かっているのだとしみじみ感じさせた。


 さて、どうしよう?

 僕は家で待つ彼女のためにせっせと自転車をこいでるわけで、しかも一日限定百個のあの店の団子を買うことが任務だ。

 時間はもう昼を過ぎている。

 今余計な時間を使うことはそれすなわち彼女の機嫌を直す唯一の特効薬とも言えるあの店の団子の入手の確率を著しく下げてしまう。ならばそれはもう考えるまでもなく結論は出てしまう。大体なんで僕が見ず知らずの女の子のために足を止めてやらねばならんのだ。僕は今忙しいし、何より僕は泣けば誰かが助けてくれると思っている奴が大嫌いなんだ。

 それに今この場でこの小さい女の子を助けてしまうことは「泣けば誰かが助けてくれる」という思考をこの子に植えつけかねない。

 ならば人生の先輩としてこの子をここであえて助けないということこそ常識的でありまた教育的だろう。僕は心を鬼にしてこのいたいけな少女を助けないという選択肢を選ぼうではないか。


 結論を出した僕は一気にペダルを蹴る力を上げその子の脇を通り抜ける。

 と、同時に左のブレーキペダルを思い切り握りこみ華麗にドリフトを決めつつ僕は女の子の前に回り込みそして最高の笑顔をつくりいってやった。

 「どうしたんだいお嬢ちゃん?何かあったのかい?そうかいわなくてもわかる。迷子なんだろ?お兄ちゃんが家まで送ってあげるから早く自転車の二台に乗って住所と電話番号をいうんだ。大丈夫僕は怪しいものじゃない。通りすがりのただの善良な一般市民だ。」

 「えぇ?あの・・・。何ですか?」

 おっと、少し驚かせてしまったか。

 無理もない知らない街で迷子でさぞかし不安だろう。

 これはなおさら僕が責任を持って家まで送っていくしかない。

 「大丈夫。お兄さんは怖い人じゃない。君迷子なんだろ?僕が責任もって家まで送っていってあげるよ。さあ早く家の住所と電話番号を僕に教えるんだ。」

 女の子は泣きやみ僕のほうをじっと見つめた。

 何だろう?

 ものすごく可愛い。

 潤んだ目や火照った頬はまるで僕を誘惑しているかのようだし、よく手入れされているようなつやのいい髪はついつい都条例なんか無視して迂闊な行動に走りかねない。

 「あの・・・。私迷子じゃないです。」

 「おや?そうなのかい?僕はてっきり迷子だと決め付けてしまったよ。ごめんね。じゃあ君は何でこんな昼間から道端で泣いているんだい?」

  「それは・・・。」


 話を聞けばこの子は家で温泉卵を作りろうとして家の電子レンジ卵を温めたところ爆発したらしい。

 なにその可愛い失敗。

 僕なら許しちゃう。

 「でね。私怒られちゃったから家を飛び出してきちゃったの。」

 「そうか。怖かったね。大丈夫かい?よければ僕が家まで送っていくよ。」

 「今帰っちゃだめなの。」

 「なんで?」

 「あのね、卵たくさん温めちゃってレンジから火が出ちゃって、お母さんがそっちに気を取られている間に逃げてきちゃったの。」

 「なるほど。確かにそれは帰れないね。」

 今朝の消防車はこの子の家に向かっていたのか。

 温泉卵を食べようとしただけでかなりの大事になってしまったようだ。

 「だから、どうしていいかわからなくてすごく不安で、怖くて。」

 「そうだったのか。でも、もう大丈夫。これ以上不安になることも、心配することもない。」

 え?と小さい女の子は顔を上げ僕お見返す。

 そこで僕は今まで生きてきた中で最高の笑顔を作りこういうのだ。

 「僕が何とかして見せるから。」

 やさしく微笑むと女の子も微笑み返してきてくれた。

 こうして僕と女の子の電子レンジを巡る旅が始まったのだった。

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