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物語のレストラン~短編集~

「もしも、私―――――――たら、ここに迎えてくれる?」

作者: 桜 夏姫

 大人になったら入れなくなる不思議な山。山には“人ならざるもの”が、跋扈していた。紗那は、今十九歳。十九歳までは、“人間に成ってはいない”と“人ならざるもの”たちは、認識し、山の中に入ることを許可するのだ。紗那は、もうすぐこの山に入れなくなってしまう。彼らに、“人”であると認識されてしまったら、山への門は閉ざされてしまうのだ。狭間町にある狭間山はそういう山。

「「「もういいよ~」」」

 何処からともなく聞こえた言葉で、ふと紗那は我に返った。紗那は、山に住む彼らとともに、かくれんぼをしていたのだ。今は、紗那が鬼。隠れるのは狸君や狐君といったかくれんぼの名人たちだから、見つけるのはなかなか難しい。彼らは、とても器用に化けるのだ。でも、まだ幼いので変化が完璧ではないのが唯一の救いでもある。

 紗那は、ざくざくと落ち葉を耳を澄まし、目を皿のようにして日がそろそろ落ちだし始めた山の中を見渡す。あたりには、山のふもとで見る木と同じものもあれば、いったいこれは何の冗談なのだろうというような歩き回る木もある。木になっている果物も、ふもとではまだ小さく緑色のみかんもこっちでは、見事なオレンジ色だったり、一つの木に、桃とリンゴが鈴なりになっていたりと目を疑うような光景が広がっている。しかしこれらは、この山に通いなれた紗那にとって見慣れたものだった。紗那の視界に、ふさふさとしてもふもふとした何かが、映った。栗の木の根元に、不自然にある茶色くてもこもことしたあったかそうなしっぽ。紗那は、まず一人発見と口元に笑みを浮かべながら木の根元に近づく。

「狸坊や発見! みいつけたっ」

 紗那の声に反応しない。もしかして、まだばれていないと思っているのかなぁと思った紗那は、実力行使に出た。しっぽを無ぎゅっとつかむと、木の根だったものがあっという間に小さな狸の形に変わる。

「いいいいいいったい! 離して! 紗那姉!」

 言われたとおりに話してあげる紗那。うっすら涙目になっている狸坊や。

「すぐに観念しない方が悪いの」

 そう文句を言いながら、他の子たちも探す。むじなちゃんは、さっきのミカンの木に化けていた。目が合って気が付いたのだけど、紗那にとってそれはちょっとしたドッキリ状態だった。まぁ、むじなちゃんの方もまさか目が合うなんて思ってなかったみたいで、びっくりして変身が溶けちゃったのでお互い様なのかもしれない。

 最後の狐君はと言えば、大きな石に化けていたみたいだけど……耳がそのままだった。頭隠して尻隠さずならぬ、耳隠さずだなぁと思わず吹いてしまった。

 森の子供たちと仲良く遊んでいると、上空から、声がかかった。

「おい、もうすぐ、大人になるんだろ?いつまでも、そんなお子ちゃまでいいのか?」

 天狗の馬鹿にしたような物言いに、紗那は腹を立てる。

「天狗兄のいじわるっ! たまには、童心に帰ったっていいじゃないの! 大学生っていうのもなかなか面倒なんだよ。宿題出るしテスト出るし、人間関係メンドイし」

 途中から文句から愚痴になっている気がしたが、この際紗那は、気にしないことにした。

「だったら、そんなところいかなければいい」

「そうはいかないのよ。就職するにはそれなりのステータスっていうやつが必要なんだもん、たぶん?」

「なんで、最後自信なさそうなんだろうな?まぁ、紗那には紗那のなやみがあるんだな」

「そうよ、人間には人間の悩みがあるのよ」

「そうか、もうすぐお前はこの山に入れなくなるのか。人間に成るんだもんな」

 天狗の言葉に紗那の表情が曇る。

「紗那姉、遊びに来れなくなるの?三笠姉の時とおんなじ?」

「え、やだ」

「寂しくなるよ」

 天狗と紗那のやり取りを聞いてた、鬼に見つかった三匹は、哀しげな声を上げる。

「私から見ればはじめっから人間なんだけどなぁ~。そうかぁ、三笠さんも、ここにきてたんだ。初耳だなぁ……。まぁさ、決まり事だから仕方ないよ。そう言いつつも、簡単に割り切れそうにもないんだけどね」

 流れに身を任せていたら、いつの間にか大人というカテゴリーに分けられるようになったという感覚。自分では、何にも変わったようにも思えないのに、周りの認識は大きく変わってしまう。たった、一年の差なのに、不思議だと思う。

「でもね、この山に入らなかったり、山の民に合わなければよかったとは思えないの……たとえ、だれも信じてくれなかったとしてもね」

 天狗は黙って話を聞き、三匹たちは、紗那に撫でられておとなしくしている。この山の存在を知っているのは、昔からここに住んでいる家の者くらい。よその場所では、妄想で片づけられてしまう。確かにここにあって、ぬくもりを感じさせてくれる存在だ。でも科学で満ち溢れたこの世界で、紗那の言葉を信じる者はほとんどいないだろう。

「お前が、ここに居たいと望めばいることはできるんだぞ? ただし、もう二度とふもとの世界には戻れないけどな」

「うん、そうだね。でも、私の世界はこっち側じゃないからね。私の家族は、ふもとにいるし、私のやらなければならないこともふもとにある。このまま、神隠しになってもいいかなって思っちゃうこともあるけど、そうしたらふもとの世界では大騒ぎになる」

 昔のように神隠しで済ませられない。誘拐事件と考えられていろんな人を巻き込む。紗那は甘い誘惑を、自らの意志で遠ざける。

「そうか」

 ただ、天狗は静かにそういった。そのたった三文字の言葉に、どれほどの思いを封じ込めたか、紗那にはわからない。だから、紗那は、天狗の耳元で囁く。

「もしも、私―――――――たら、ここに迎えてくれる?」

驚いたように見開いた眼と、紗那のいたずらを思いついた子供のような瞳が夕焼けの中ぶつかった。



学校の課題作品

テーマは「19歳」

でも、あまりうまく書けません。起承転結も今回の作品いまいちかもしれません。アドバイスしていただけると嬉しいです。


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