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雲は遠くて  作者: いっぺい
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15章 カフェ・ド・フローラ (3)

15章 カフェ・ド・フローラ (3)


菊山香織は、昨日の7月26日、

20はたちになったばかりの、2年生だ。


「このお店、楽しい雰囲気ふんいきだから、

わたしも、ウェイトレスでも、したくなっちゃうわ」


「香織ちゃんなら、きっと、すてきな、かわいい、

ウェイトレスだよね。

いつでも、お願いしますよ。

ただ、ぼくとしては・・・、

グレイス・ガールズのドラマーとしての、香織ちゃんといいますか、

香織ちゃんの、これからの、活躍を期待しちゃうな!

きのうの香織ちゃんのドラミング、すごく、よかったよ」


「あら、純さんに、めていただけるなんて。

とてもうれしいわ・・・。

純さんのドラムこそ、ホントに、お上手じょうずなんですもの!」


「はははっ。これでも、おれは、初めのころは、

クラッシュ・ビートのメンバーに、ドラムがうるさい!とか、いわれて、

邪魔じゃまあつかい、されてたんだよ」


といって、森川純は、陽気ようきにわらった。


「うそでしょう!純さんのドラム、タイムを正確にキープしてるし、

あんなに神業かみわざみたいなのに、信じられないです」


「ぼくも、信じられないなあ。純さんのドラムで、

クラッシュ・ビートは、まとまっている気がしますよ」


と、ちょっと、生ビールで、あから顔の、矢野拓海やのたくみ


「またまた、ふたりとも、ひとを持ち上げるのうまいな。

でも、ありがとう。うれしいっすよ。ほめてくれて」


と、森川純は、上機嫌じょうきげんに、声を出してわらった。


「香織ちゃんは、お兄さんの影響で、ドラムを始めたんだよね」

と、ビールで、ほろ酔いの矢野拓海。


「ええ、そうなんです。兄には、しっかり、手ほどきを受けました。

わたし、兄のたたく、ドラムの音というか、

シンバルの音が、なぜか、大好きだったんですよ。

シャリーンという、なんていうのか、あのスウィング(swing)感が・・・」


「そうなんだ。だから、香織ちゃんは、リズム感がいいんだなあ。

努力もあるだろうけど、もともと、きっと、リズム感がいいんだよ」


「そうなのかしら」


菊山香織と森川純と矢野拓海は、楽しそうにわらった。


「純さんも、香織ちゃんも、ったり、すわったりの、

のこなしが、いつも、すらっとして、

姿勢しせいがいいのは、

きっと、ドラムをやっているせいなんでしょうね」


矢野拓海が、そういって、ふたりにほほえんだ。


たくちゃん、それはいえるよ。姿勢が良くないと、

ドラミングは、うまくできないからね。

さすが、MFCの幹事長だね。観察力もすごいよ」


矢野拓海やのたくみは、第50代の幹事長である。

森川純は、第49代の幹事長であった。

MFCは1954年に創立の、

伝統ある早瀬田わせだ大学公認の、バンド・サークルであった。


「あと、からだの柔軟性じゅうなんせいとかね。

おれの日課も、ストレッチだもんね。

香織ちゃんも、ストレッチは、日課でしょう?

肩こりのある、ドラマーってありえないですよね」


「ええ、そのとおりです。わたし、ストレッチや

ヨガとかの、柔軟体操、大好きです」


「よし、おれも、きょうから、ストレッチにはげみます!」


と、目を丸くして、矢野拓海がいう。3人はわらった。


「お兄さんが、きっと、すぐれた人なんでしょうね。

香織ちゃんのドラミングは、ちからまかせでなくて、

ちゃんとした、技術で、たたいていますよ。

アーム(腕・うで)じゃなくて、ハンド(手)でたたくとかの、

手の使い方も、完璧だと思うよ。

あれなら、女の子でも、疲れずに、楽にたたけるよね。

あと、ぼくが、

香織ちゃんの、すごいと思うのが、

バス・ドラムの、右足のダブルを、ちゃんと、決めていることだよね。

きのうの、ライブを見ているときも、感心していたんですよ」


同じ、ドラムスの奏者の、森川純は、

菊山香織と、語り合うことが、特別に、楽しいようであった。


≪つづく≫ 


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