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雲は遠くて  作者: いっぺい
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15章 カフェ・ド・フローラ (2)

15章 カフェ・ド・フローラ (2)


たくさんの料理の皿が、置いてある、

ゆったりとした、ひろさの、

円形のテーブルのあいだを、

黒と白の、モノトーンの、うつくしい服装の、

ウェイトレスやウェイターが、すらすらととどこおりなく、

流れるような優雅さで、動いてゆく。


ウェイトレスの、ふわっとした、ロングスカートや、

胸元むなもとが大きくあいている、白いエプロンが、かわいい。


ウェイターは、白いシャツ、黒のパンツが、

きりっと、ひきしまって、見える。


どちらも、ノー・ネクタイの、

清楚せいそな美しい、コスチューム(服装)であった。


まるいテーブルには、12席と、4席との、2種類の大きさがあった。

どちらのテーブルも、

見ず知らずの客が、隣同士となっても、

気を使うこともなく、くつろげる、ゆったりとした、ひろさである。


そのスタッフたちの給料きゅうりょうは、

固定している基本給に、さらにプラスの、

担当するテーブルの、売り上げの10%、

という、働く意欲のわくような、システム(制度)だった。


「このお店は、フランスによくある、カフェのような、

雰囲気ですよね。じゅんさん」


サークルの幹事長、大学3年、21歳の矢野拓海やのたくみが、

隣の席の、23歳の、森川純にそういって、微笑ほほえんだ。


「さすが、たくちゃん。

この店は、フランスのパリにある、有名なカフェの、

カフェ・ド・フロールを、モデルにしているんですよ。


お店のスタッフも、お客さまも、ある意味、

人生という劇場の、スターであったり、演技者であったりする。

という発想が、そのカフェ・ド・フロール(Cafe de Flore)にはあるんですよ。


フランスのパリの、サンジェルマンデプレ大通りにある、

140年以上も続いている、老舗ろうほのカフェなんです。


おれって、資料でしか、そのお店のこと知らないから、

小遣いがたまったら、ぜひ、行くつもりなんですけどね。はははっ。


そのお店の、そんなコンセプト(基本的な考え)には、

おれたちも大賛成だいさんせいなんです。

人生って、何かをえんじているともいえるわけで、

まくりるまでは、そんな人生の舞台で、名演をしている、

役者なのかもしれませんしね。あっはっはっ。

誰だって、少しでも、ましな、役を演じたいじゃないですか!?

あっはっはっ。


同じ店の名前では、ちょっと、なんなんで、

カフェ・ド・フローラ (Cafe de Flora)に、ちょっと、変えて、

いまのところ、大都市が中心ですけど、

全国に展開中なんです。

フローラも、フロールも、意味は、ほぼ同じですけどね。

あっはっは。


多くの芸術家に愛されたそのカフェの常連じょうれんには、

画家のピカソとか、哲学者のサルトルとか、

ボーヴォワールとかが、いたそうです。


芸術や文化や政治とか、何でも気軽に語りあえるような・・・、

恋人たちが、愛を語りあうのは、もちろんですけどね、はっはっ。


そんな、コミュニケーション(心のふれ合い)の、

社交場しゃこうじょうの、カフェを、モリカワでは、

日本中に展開したいんですよ」


森川純は、矢野拓海と、右隣みぎどなりすわっている、

菊山香織きくやまかおりに、

言葉を確かめながら、力説すると、わらった。

そして、森川は、目を細めて、生ビールに、おいしそうに、口をつけた。


「へーえ、森川さんの会社って、革命的なことをやっている感じですよね。

売上金うりあげきんの1部を、寄付したり、チャリティー活動も、

いつも、やっているし」と、矢野拓海。


「わたしも、感動しちゃうわ。チャリティーとか、

いまの純さんの、お話に・・・」と菊山香織。


「会社って、もうけるばかりでは、存続はできないですよ。

とみがあれば、

それは再分配さいぶんぱいしなければいけませんよ。はっはっは。

それと、

おれらのやっていることは、バンド活動と同じようなものですよ。

みんなの力を、結集けっしゅうすれば、

ビートルズのように、世界を変えられると思うんだ。

ある程度だろうけどね・・・。

何もしないでいるよりは、まだ、ましさ・・・」


「ねえ、香織ちゃん・・・。

このテーブルクロスはね。ちょっと、普通と違うんだよ。

コットン(木綿・もめん)で、

あたたかみもあるけど、

耐久性たいきゅうせい抜群ばつぐんなんだ。

それに、

特殊加工がしてあって、

どんなものを、こぼしても、シミがつかないんだ。


クロスには、絶対に、みこまない、ってわけなんですよ。

コーヒーでも、ビールでも、何でも・・・」


森川純は、香織の耳もと近くで、親しそうに、そう、ささやいた。


「ほんと!すごすぎ!デザインも、おしゃれで、すてきだな。

薄紫ううすむらさきというのかしら。

スミレ色の、色もすてき!光沢こうたくうつしいわ」


森川純の、そんな親しげな、様子ようすに、

菊山香織きくやまかおりは、

微妙な、胸の高鳴たかなりのを感じながら、

そういって、ほほえんだ。


≪つづく≫ 


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