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雲は遠くて  作者: いっぺい
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12章 ザ・グレイス・ガールズ (2) 

12章 ザ・グレイス・ガールズ (2) 


「まったく、最近の若い(やつ)奴は、女の子ばかりが、

目的なんだから、どうしようもないっていうか、

これじゃ、経済も、国政も、なにもかも、

堕落だらくして当たり前だよな!」


そんなふうに、矢野拓海やのたくみが、いきどおる。


「まったくっすよ。おれだって、女の子は好きですけど。

ギターくらいの楽器くらいは、できますよ。ヘタですけど。

ひとつも楽器ができないで、コーラスやりたいですよ。

あと、ダンスやりたいとか。女の子じゃ、

それも、ゆるせますけどね。

女の子なら、かわいいだけで、アートや絵になりますから。

男じゃ、それじゃあ、ダメというか、腹立はらたってきますよね」


そういう、1年生の岡昇おかのぼるの話には、

3人で、大爆笑だいばくしょうとなった。


「まあ、おれたちも、女の子にもてたいから、音楽やっているって、

いってもいいんだけどね。楽器が何もできないじゃね!

しかし、なんとかしないと。風紀ふうきみだれていけないな。」


そんなふうに、自省もわすれない矢野拓海やのたくみではあった。


「風紀も乱れるけど。いい年をした男が、女の子ばかりを追いかけるという、

なんというのかな、よくボケの、慣習かんしゅうとでもいうのかな、

まえ、もっと、真剣に、向き合うものが、あるはずだろうが!って、

つい、いいたくなるつーか、おれも、えらそうにはいえないけど、

人生への目的意識とでもいうのかな、大きなビジョンや夢とでもいうのかな、

そんな、何か、本当な大切なものが、忘れ去られているようで、

生きてゆくうえでの、倫理とでもいうのか、何かを感じる力や感覚のようなものが、

麻痺まひしているというか、欠如けつじょしているよね!

最近の男たちは。女の子にもいえるかな?

まあ、たぶん、男女をふくめて、大人おとなたちは!

ろくに、なにも、考えていないものだから、結局、

自分だけの、目先の、ちっぽけな、欲望ばかりに、

追われっぱなしでいるような人ばかりな、気もする!

ちょっと、見てると、そんなオトナばかりな気がするよ・・・」


そういって、声の大きな、2年生の谷村将也たにむらしょうやが、つくえを、

思わず、どんと、ひとつ、たたいた。


「まったくだ。しょうちゃん、おかちゃんの、いうとおりだよ!

おれはね、芸術の、アートの、音楽の、ミュージックの、

最後の牙城がじょうくらいに考えているんだよ。

牙城って、わかるだろう。 城中で主将のいる所というか、本丸というか、

本拠地ほんきょち本陣ほんじんのことだよね。

これを守らないことには、国も、地球も、滅びると考えているんだよ!

そんな気持ちで、おれは、ミュージック・ファン・クラブ(MFC)の、

幹事長も引き受けているのさ」


「さすが、拓海たくみさんだ」と、谷村。


「おれ、矢野さんの言葉に、感動して、泣きたくなりますよ」と、岡。


そんな、雑談をしながら、最低限、パーカッションのシンバル、くらいはできないと、

入部でいないという規則を、そこで、決めた。

そのようにして、女の子だけが、目当ての男子学生は、

「はい、残念ですが、失格です」とかいって、

いまも、ふるい落とすことに、成功している。

女子学生で、シンバルのテストで、落とされた女の子は、1人もいない。


≪つづく≫ 


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