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雲は遠くて  作者: いっぺい
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135章 クラッシュビート・メンバーたちの新年会

135章 クラッシュビート・メンバーたちの新年会


2018年、1月4日、正月の木曜日。

北風が吹いて、気温は10度ほどだが、晴れわたる青空だ。


 渋谷駅から歩いて1分、道玄坂の『天ぷら森川・渋谷北口店』で、

バンド、クラッシュビートのメンバーたち4人だけでの新年会が始まている。


 『天ぷら森川』は、外食産業のモリカワが、

東京や主要都市に40店舗を展開する天ぷら専門チェーン店だ。


 クラッシュビートのメンバー全員は、下北沢にあるモリカワ本社で課長職をしている。


 川口信也しんやは、1990年2月23日生まれ、27歳。早瀬田大学の商学部卒業。

クラッシュビートの、ギター、ヴォーカル。


 森川純じゅんは、1989年4月3日生まれ、28歳。早瀬田大学の商学部卒業。

父親は、モリカワの社長の森川誠まこと

クラッシュビートのリーダーで、ドラマー、ヴォーカル。


 岡林明あきらは、1989年4月4日生まれ、28歳。早瀬田大学の商学部卒業。

クラッシュビートの、リードギター、ヴォーカル。


 高田翔太しょうた。1989年12月6日生まれ、28歳。早瀬田大学の商学部卒業。

クラッシュビートのベース、ヴォーカル。


 予約しいておいた座敷カウンター席は、堀こたつ式の、純和風なしつらえのたたみで、

ふんわりの座布団でくつろぎながら、

カウンターの中の板前のわざ堪能たんのうできる。


「そういえば、あの紅白の安室奈美恵ちゃんの『HERO』は、よかったよね!」


 上機嫌に、日本酒で酔っている純は、みんなにそう言って笑った。


 『HERO』は、2016年、NHKのリオデジャネイロのオリンピックとパラリンピックのテーマソングで、

神聖なオリンピックにふさわしいスローテンポと、軽快なダンスビートの構成の名曲だ。


「安室ちゃんも、あのラスト紅白の『HERO』で、みんなもヒーローになれるんだから、

夢をあきらめないで、がんばってね、そんなメッセージをこめたかったんだろうね、純ちゃん」


 信也がそう言って、熱燗の徳利の日本酒を、純のグラスに注ぐ。


「近ごろのみんなは、夢や大志を抱くの、忘れているみたいだからね。

そう言う、おれも、おれたちもそうなんだろうけどね。あっははは」


 高田翔太もそう言って、日本酒に酔って顔を赤らめて、明るい声で笑う。


「そう言われてみれば、たぶん、幕末の志士たちのような、

命をかけてるような夢や大志って、持ってないよね、おれたちは。あっははは。

でも、この日本酒ていうのは、日本男子の伝統というか、

歴史というか、心意気というのか、そんなものを感じる酒だよね。やっぱ。あっははは」


 岡林明もそう言うと、笑った。

 

「ネットで見つけた情報だけど。安室ちゃんは、引退したら、好きな音楽が聴ける、

小さなジャズクラブを作ってみたいと言っているらしいよ。

大きな店じゃなくって、親しい友だちが気軽に集まれる音楽サロンのようなものを」


 森川純は、そう言って、ごま油でカラッとがったエビの天ぷらをほおばった。


「ジャズかぁ。ジャズもいいよね、純ちゃん。

おれたちってさ、普通に仕事しながら、音楽もやってるじゃん。

だからかわかんないけど、音楽で食っていくとかまでは、

結局考えないから、好きな音楽だけやっていきたいと思うわけじゃん。

そうすると、おれも、ジャズって、究極の楽しい音楽っていう気がしてくるんだよ」


 そう言って、信也はみんなに微笑ほほえむ。


「音楽やって、それを、みんなに聴いてもらったからって、

それで世の中が変わるほど、世の中はあまくはないもんね」


 森川純はそう言って微笑む。


「まあ、たまにケンカもするけど、気の合うオレたちだもん。

楽しくバンドを続けていこうよ。あっははは」


 高田翔太がそう言って笑った。


「しかし、おれたちのクラッシュビートも、マンガと映画の人気が、

おれたちよりも、人気になっちゃってしまって、

最近は、ライブはやらないんですか?って、問い合わせも頻繁ひんぱんでこまるよね」


 森川純はそう言って、頭をかきながら笑う。


「ライブかあ、ああいうのって、準備もいろいろ大変で、やる気起きないよね。あっははは」


 信也がそう言って、みんなの目を見る。


「なんか、おれたちのこのわがままって、ビートルズに似ていない?

レコードは売れまくっていたのに、

コンサート活動の終了させたビートルズみたいな感じだよ。

ネットで調べると、ビートルズの、シングル、アルバム、ビデオの売り上げは、

6億枚とか載っているけどね。

そうすると、おれたちの音楽は、いまのところ、60万枚くらいは売れてるから

ビートルズの1000分の1くらいは、売れているけどね。

わがままさだけは、ビートルズと同じだね。あっははは」


 岡林明が、そう言った。


「いまからでも、ビートルズに追いつけるかもよ。あきらめずにがんばろうよ。あっははは」


 信也がそう言って笑った。みんなで大笑いをした。

 

≪つづく≫ --- 135章 おわり ---


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