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雲は遠くて  作者: いっぺい
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130章 日本人やゴッホの自然観、ゲーテの語る自由

130章 日本人やゴッホの自然観、ゲーテの語る自由


 8月19日の人気の『多摩川花火大会』は、

雷雨など、大荒れの悪天候のため、中止となった。その順延もない。


 花火を楽しみにしていた信也たちは、気分を変えて、

≪チーズタッカルビ≫を食べに行くことにした。

渋谷駅から山手線に乗って、傘も持って、韓流の街といわれる新大久保に向かった。


 そのメンバーは、次の12人だった。


 川口信也、1990年2月23日生まれ、27歳。身長175センチ。

 信也の彼女の大沢詩織しおり、1994年6月3日生まれ、23歳。身長163センチ。

 信也の飲み友だちの新井竜太郎、1982年11月5日生まれ、34歳。身長178センチ。

 竜太郎の彼女の野中奈緒美、1993年3月3日生まれ、24歳。身長165センチ。

 森川純、1989年4月3日生まれ、28歳。身長175センチ。

 純の彼女の菊山香織、1993年7月26日生まれ、24歳。身長163センチ。

 信也の妹の利奈りな、1997年3月21日生まれ、20歳。身長166センチ。

 利奈の彼氏の菊田晴樹、1997年3月30日生まれ、20歳。身長177センチ。

 信也の妹の美結みゆ、1993年4月16日生まれ、24歳。身長171センチ。

 美結の彼氏の沢口涼太、1992年10月8日生まれ、24歳。身長184センチ。

 岡昇のぼる、1994年12月5日生まれ、22歳。身長173センチ。

 岡の彼女の南野美菜みな、1992年4月4日生まれ、23歳。身長170センチ。


 チーズタッカルビは、韓流の街といわれる東京・新大久保が発祥で、

日本のオリジナルといわれる。

韓国料理の定番のタッカルビに、溶かしたトロトロのチーズとからめた料理だ。


 タッカルビは、とり肉や野菜や、棒状のもちをトッポギを、

コチュジャンや砂糖を使って、鉄板で甘辛あまからいためて作る。

タッカルビの≪タッ≫は、鶏肉のことだ。


 予約していた、市場タッカルビ(シジャンタッカルビ)は、

JRの新大久保駅から歩いて4分ほど、祥栄ビルの1階にある。

雨のぱらつく、日暮れの6時を過ぎたころ、みんなは店内に入っていった。


「きょうの花火が中止とは、ついてないですよね。

今夜は、楽しくやりましょう」


 この店の予約もした純が、テーブルについたみんなに笑顔でそう言った。


「純さん、この店は、おれも来てみたかったんですよ。楽しくやりましょう!」


 竜太郎がそう言って笑った。


「そうそう、楽しくね。あっははは」と信也も笑った。


 ほかのみんなも、「確かに!」とか「楽しみましょう!」とか言って、笑った。


「チーズタッカルビって、おれも初めてなんだけど、生ビールに合いそうだよね」


 信也がそう言った。


「日本って、花火を打ち上げて、夏の夜空を楽しんだりして、

平和なイベントを大切にする国民よね」


 そう言って菊山香織は、肉と卵がとろけるようにおいしい、和牛ユッケを楽しむ。


「日本って、太古の昔から、大自然と友だちのようにして、

生きてきたらしいわよ、香織ちゃん」


 美結みゆがそう言って微笑ほほえんだ。


「大自然と友だちかぁ。そんな感じかなぁ、確かに。

四季の変化やその美しさとか、世界でも数少ないほどの、

ゆたかな自然の環境なんだろうね、日本は!」


 美結の彼氏の沢口涼太がそう言う。


「そんな日本に生まれてこれて、おれも幸せですよ!あっははは」


 岡昇がそう言って笑う。


「確かに、ホントよね。気候や降水量とかの水にも恵まれてるから、

植物も豊富だったりね。わたしも、日本人でよかったと思う!」


 そう言って、岡の彼女の南野美菜みなが微笑む。


「日本人って、仏教なんかが入ってくる前の、大昔から、

自然のゆたかなめぐみに感謝したり、

崇拝すうはいしたりしていたんだよね。

また、その反対に、地震や津波や雷や台風なんかがあったりで、

人知の及ばない、不可知な存在として、自然を畏怖いふしたりもしていたし。

そんな大自然を『カミ』として、まつってきたんですよね。

それが、いまも、神社でやっている信仰の神道しんとうですよ。

その神にしても、地域によって、いろいろと違いがあったりしてね。

山の神や川の神とか、いろいろあって、

八百万やおろず的に、増えちゃうんだよね」


 生ビールをおいしそうに飲みながら、竜太郎が、

時々みんなを見ながら、そんなことをゆっくりと話した。


「竜さんって、やっぱり、副社長だから、お話もすばらしいですよ!

でも、八百万やおろず的って、どういう意味なんですか?」


 信也の妹の利奈りなが、無邪気になんのこだわりもなく、竜太郎にそう言う。


 「あっははは、利奈ちゃん。さすが勉強熱心ですね。

八百万的っていうのは、数が非常に多いってことですよ。

ほら、あの宮崎駿はやおのアニメの『せん千尋ちひろの神隠し』は、

八百万の神々が出てくる、とても楽しい映画だったよね。あっははは」


 みんなも、飲み物や料理を楽しみながら、明るく笑い合った。


神道しんとうって、宗教として認識しいる人って、少ないんじゃないですかね。

神社に、神をまつる、神棚かみだな祭祀さいしはあるけれど、

守るべき戒律も、明文化されている教義もないし。教祖も創立者もいないし。

ほかの宗教の一神教とかと比べると、宗教としての要素が希薄ですよね。竜さん」


 純は、そう言って、竜太郎を見た。


「そうですよね。神道は、それだから、何々きょうではなくて、みちなんでしょうね。

道とは、つまりは、人の歩むべき道や姿とかで、

人の在り方を表示ひょうじしているのでしょうね。純ちゃん」


「神道って、おおらかで、いいですよね。自然の中の自然の営みのすべてには、

神が宿るって感じなんでしょうね。だから、教義も戒律も必要ないんだだろうし」


 そう言って、利奈の彼氏の菊田晴樹は、竜太郎に微笑む。


「どこから、どこまでが、神道の『わく』だというものがないのよね。竜さん。

それだから、なんにでも、対応できるし、仏教や儒教でも道教でもキリスト教でも、

どんな神様にしても、神道の立場からすれば、

おそれ多い外国の神様という感じで、受け入れられるのよね。竜さん」


 奈緒美が、彼氏の竜太郎にそう言いながら微笑む。


「そう言えば、わたし、ゴッホの絵が好きなんですけど・・・。

『星月夜』とか、『夜のカフェ・テラス』とかは特に好きですけど。

そのゴッホも感性が鋭い人だったから、日本の浮世絵に感激したそうです。

そんな絵からも、日本人の生活感や自然への考え方を読み取ったらしくって、

日本人のそんな自然観を見習わねければいけないって、

弟のテオに手紙に書いているのよね。

やっぱり、ゴッホって、偉大な画家ですよね」


 信也の彼女の詩織がそう言って、みんなに微笑んだ。


「おれも、ゴッホは好きだなぁ。絵や音楽とかの芸術でも、宗教にしたって、

本来は、人を自由にしてくれるもので、元気にしてくれるもので、あるはずだよね。

本物の芸術や宗教ならばね。

おれの好きなゲーテも、自由については、いいことを言っているんですよ。

『最高の自由とは何か?最高の自由とは、好き勝手やわがまま放題のことではない。

最高の自由とは、人と人のつながりを意識しながら、

自分を高めて、生きていこうとする意志のことである。

最高の自由とは、人々が生きている間だけではなく、

そののちの人々の安全まで考えることで、

ずっと先の人々のことまで考えないのならば、虫けらに等しい。』

とか言っているんです。

要するに、人をおもう、愛や想像力のない人には、

本当の自由はありないってことでしょうかね」


 信也はそう言って、生ビールをうまそうに飲んだ。


「おれも、ゲーテもゴッホは好きだな!」とか

「わたしもゲーテやゴッホ大好き!」とか

「ゴッホも、ゲーテもいいよね!」とか

「確かに、ゴッホやゲーテはすてき!」

とか、みんなは言った。


そして、楽しく飲んだり食事もして、時間は過ぎていった。


☆参考・文献・資料☆


1.ゲーテの言葉  一校舎比較文化研究会編 ナガオカ文庫

2.一個人 保存版特集 神道入門  KKベストセラーズ


≪つづく≫ --- 130章 おわり --- 


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