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雲は遠くて  作者: いっぺい
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1章 駅 (その2) ≪改訂.2017.2.4.≫

1章 駅 (その2)


 韮崎駅のちかくの山々やおかには、雨にあらわれた

ばかりの、濃い緑の樹木じゅもくが、しげっている。

さらに、遠い山々には、白いきりのような雲がちている。


「おれって、やっぱり、田舎者いなかものなのかもしれないな。

東京よりも、この土地に、愛着があるようなんだからね」


 れわらいをしながら、信也しんやじゅんにいった。


「おれだって、こんなに空気のいい土地なら、住みたくなるから、

しんちゃんが田舎者ってことはないよ」


 純はわらった。


「ところで、信ちゃん。もう一度、よく考えなおしてくれるかな。

おれも、しつこいようだけど・・・」


 歩きながら、純は信也のかたうでをまわして、

かるすった。


「ああ、わかったよ。でも、さんざん考えて決心して、

帰って来たばかりなんだぜ。それをまた、すぐにひっくり返す

なんてのは、朝令暮改ちょうれいぼかいっていうのかな、

なさけないないというか、男らしくないというか……」


「そんなことはないよ、しんちゃん。いまの時代は変化が

はげしいんだし、多様化の時代だし、1度決めたことだって、

変更してもそれが正しいことのほうが多いと思うよ。

いまの政治家とかのしている話だって、朝令暮改で

あきれるばかりじゃん。まあ、おれたち若者の場合は、

決心したことを変更する勇気のほうが、おれは男らしいと

思うけどね」


「またまた、純ちゃんは、人をのせるのがうまいんだから」


 二人ふたりは、わらった。


「な、しんちゃん。おれに力をすと思って、親父おやじ

会社に入ることを考えてほしいんだ。一緒いっしょに、

ライブハウスやバンドをやって、夢をっていこうよ。

おれは真剣なんだ。冗談じょうだんきで。

かわいい美樹みき)ちゃんだって、それを願っていると思うよ。

信ちゃんは長男だから、家をぐと決めたことはわかるけど、

『信也さんの実力をためす、いい機会ですよ』って、

とうさんとおかあさんに、おれが説明したら、

昨夜も、ニコニコと笑顔で、わかってくれているみたいだった

じゃない。話のわかるご両親で、おれも、ほっとしたよ」


「純ちゃんは、説得の名人だからなあ。まいったよ」


 韮崎駅に着いた二人は、改札口の頭上ずじょうにある

時刻表と時計をながめた。


 新宿行き、特急スーパーあずさ6号の到着時刻の

9時1分までは、あと5分ほどであった。


「まあ、しんちゃん、よく考えください。おれらには、

時間は十分あるんだし・・・」


「わかったよ。まあ、何事も簡単にはいかないよね。

おれもまたよく考えてみるよ」


 そういって、純と信也は手をにぎりあった。


 純は切符きっぷ購入こうにゅうすると、改札口を

抜けてかえる。笑顔えがおで、信也に

かるく手を)った。信也も笑顔で手を振る。


 そして、純はホームへ続く階段へと姿を消した。


≪つづく≫ 


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