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雲は遠くて  作者: いっぺい
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73章 利奈の進学祝いのパーティー

73章 利奈の進学祝いのパーティー


「川口利奈さん、早瀬田わせだ大学のご入学、おめでとうございます!

それでは、みなさま、かんぱーい(乾杯)!」


 なごやかな雰囲気の中、ワイングラスを持つ新井竜太郎が、テーブルに座ったままで、

乾杯の音頭をとった。


 オーダーした飲み物やフランス料理が並ぶテーブルには、

川口信也と妹の美結と利奈、

新井竜太郎と、竜太郎のお気に入りの野中奈緒美の、5人が、席についている。


 野中奈緒美は、竜太郎が副社長のエタナールの、芸能プロダクションのクリエーションに所属する、

人気上昇中のモデル、タレント、女優で、身長は165センチ、21歳の可憐な美少女である。


 5人は、フルーリ、渋谷店に来ている。


 フルーリは、渋谷駅のハチ公改札口から、スクランブル交差点を渡って3分、

大型複合ビルの最上階の、エタナールが経営する、リーズナブルなフランス料理店である。


 フルーリとは、フランス語のフルール(花)から来た言葉で、フルーリは、

「花が咲いている、花がひらいた」の意味である。


「この店の1号店は、湘南しょうなんの茅ヶちがさきにあるんですよ。

ここは今年の1月に、オープンしたばかりの、第3号店なんです」


 そういって、新井竜太郎は、川口信也の右隣の、妹の利奈に微笑ほほえむ。


「竜さん、きょうは、こんなにステキなお店に、招待してくださって、ありがとうございます。

そうなんですか、1号店は、湘南にあるんですか。

わたし、湘南って、あこがれてしまいます。湘南といえば、サザンの桑田佳祐さんや、

湘南の風さんの出身地なんですよね」


「利奈ちゃんは、湘南の風がお好きなんですか」


 前髪が、瞳を隠すほどに伸びているヘアカットの竜太郎は、やさしい眼差しで、

テーブルの向かいに座る、利奈にそういう。


「ええ、好きです。純恋歌なんか、大好きなんです!」という、利奈の瞳は楽しそうに輝いた。


「純恋歌ですかぁ。いい歌ですよね。あの歌は確かぁ、2006年のヒット曲でしたよね」


「すごーい。竜さん!よく覚えていらっしゃいますよね。そうなんですよ、2006年なんです。

わたしの誕生日が3月21日で、湘南の風の純恋歌は、3月6日のリリース(発売)だったんです!

あの時は、とても、純恋歌のリリースの日が待ち遠しかったでした。

わたし、まだ、小学3年生だったんですけど」


「あっはは。利奈さんは、小学3年生だったんですかぁ。

それで、湘南の風の純恋歌がお好きだったとは、利奈さんもなかなかのものですよね。

やっぱり、お兄さんのしん(信)ちゃんに似て、きっと、音楽の才能が豊かなんですよ。あっはっは」

 

「わたしが音楽の好きは、きっと、しんちゃんや美結ちゃんの影響が大きいんですよ。

うちの中はいつも、音楽であふれていたような感じなんですもん。うふふ。

わたし、早瀬田わせだ大学のサークルにも参加させていただこうと思っているんです。

しん(信)ちゃんも入っていた、ミュージック・ファン・クラブ(MFC)に入れてもらおうかなって、

思っているんです。うっふふ」


 利奈はそういいながら、右隣にいる兄の信也と、左隣にいる美結と、目を合わせる。


「利奈ちゃんも、おれと似ていて、歌をうたうのが好きだからね。あのサークルはいいと思うよ。

おれからも、MFCのみんなには、よろしくって言っておくから」


 信也は利奈にそういって、頼りになる兄らしく、微笑む。


「利奈ちゃんは、しんちゃんと同じで、小学生のころから、歌が大好きだったからね。

いい趣味だと思うわ。、利奈ちゃんには、学生生活をたくさん楽んで、充実させてほしいわ」


 利奈の左隣の席の美結が、利奈にそういった。


「おれの感なんですけど。利奈ちゃんには、お姉さんの美結ちゃんのようなタレント性とか、

しんちゃんにあるような、ゆたかな音楽性とかがあるような気もしているんですよ。

ですから、勉学と同時に、歌のほうも、がんばってみてほしいです。

おれも、いつでも、応援させていただきますから」


「竜さん、ありがとうございます。わたしの音楽の趣味は、やっぱり、ただの趣味なんです。

音楽は、楽しめればそれでいいんです。わたしには、音楽の才能なんてないと思いますから」  


「利奈ちゃん、才能ってものは、不思議なもので、がんばって続けていれば、突然、

空から舞い降りてくるようなものなんだよ。インスピレーションとか、霊感に近いようなもので」


「芸術には、創造のためのヒントやひらめきが大切ですもんね。

しんちゃん、それって、よくわかるような気もします。やっぱり、わたしには無理だわ。うっふふ」


「でも、利奈ちゃんは、声もとてもステキなんですもの。それに、ルックスもいいんですもの。

きっと、芸能界に入っても、成功できると、わたしは思うわ。ねえ、竜さん」


 利奈にそういって微笑むと、野中奈緒美は、隣の席にいる竜太郎と目を合わせた。


「奈緒美さん、お褒めの言葉まで、どうもありがとうございます。

わたしって、たぶん、みなさんと同じように、音楽とかの、美しいものが大好きなんです。

世の中って、いろいろと、ひどい出来事ばかりがあるじゃないですか。

わたしには、気持ちが落ち込むことばかりなんです。

そんな時には、美しい自然の景色を楽しんだり、きれいな音楽を聴いたりするんですけど。

いい映画を観たり、詩を読んだりして、いろんなジャンルの芸術を楽しむようにしているんです。

特に、音楽って、いつも、身近にいて、元気にしてくれる、親友のような気がしているんです」


「そうですよね、まったく、同感です。利奈ちゃんのおっしゃるとおりです。

それでは、みなさまの、これからの毎日が、

楽しい日々でありますように、お願いして、また乾杯しましょう!」


 ワインに酔って、上機嫌の竜太郎がそういって、みんなはまた笑顔で、乾杯をした。


 3月21日に、18歳になる利奈は、上質なハチミツと、みずみずしいレモンの酸っぱさが、

スイートで飲みやすい、おいしいレモネードの入った、かわいいグラスで、みんなと乾杯をした。  


≪つづく≫ --- 73章 おわり ---   



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