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雲は遠くて  作者: いっぺい
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39章 女性に人気の松下トリオ (1)

39章  女性に人気の松下トリオ (1)


 5月18日。空はよく晴れわたり、風もさわやかな日曜の朝。


 リビングの窓のカーテンからは、まぶしい陽の光が感じられる。


 7時頃に目覚めた清原美樹は、毎朝の犬との散歩を終えると、

家族がくつろいでいるリビングのソファに座った。


「おはよう、美樹ちゃん」と姉の美咲がいうと、家族のみんなも

「お早う」という。


 リビングのソファには、父の和幸かずゆきや母の美穂子みほこ

祖母の美佐子みさこがいる。


「お早う」といって美樹も微笑ほほえむ。


 テレビでは、チャゲ&飛鳥のASUKAが、5月17日に、覚せい剤取締法違反

(所持)の疑いで逮捕されたというショッキングなニュースをやっている。


飛鳥あすかさんが、大変なことになってしまったわね」


 そういって、美樹は、ポメラニアンのラムを抱いて美咲の隣のソファに座った。


 しっぽをふっているラムは、白に、うすちゃ毛並けなみの、

8歳になるめすであった。夏向きに、毛をきれいに短くカットしている。


「才能に恵まれて、世の中で成功して、かがやかしい栄光を手にした人の心情

とちうものは、平凡な生活しか知らないものにはわからないものがあるのだろうね。

特に、そんなはなやかな栄光の座から降りるとなったら、その落差がどれほどの

その人の悩みやストレスとなってしまうものなのか?」


 うすめのアメリカンコーヒーを飲みながら、父の和幸かずゆきがそうつぶやく。 


「そんなものかしら?じゃあ、美樹も気をつけないと!」と美咲が隣の美樹にいう。


「わたしなんか、まだまだ、成功なんていう状態じゃないわよ。ちょっとアルバムが

売れて、現役の女子大生のロックバンドなんていう興味本位で、マスコミとかで

さわがれているだけだもの。わたしはだいじょうぶ、楽天家だから!」


「そうよね、美樹ちゃんは楽天的だから、だいじょうぶね。わたしもとても

うれしいのよ。美樹のがんばったことが世の中から認めれれているんだから。

これは、とてもすばらしいことだわよ。さあ、朝の支度したくをしてくるわね」


 そういって、美樹を見て微笑むと、母の美穂子みほこはキッチンへ行く。


「そうよね。美樹は確かにバンドで、がんばっているんだものね。わたしも

うれしいわよ、美樹の成功は。でも、姉のわたしよりもお金持ちになっちゃった

とはね。ちょっとショックだわ」


「そんなぁ、お金持ちだなんて。でも美咲ちゃん、わたし、お金なんて、本当は

どうでもいいのよ。お金で幸せになんてなれないって信じているから」


「そうよね。美樹はそこがよくわかっているから、また、偉いのよ。確かにお金が

あっても、心がすざぶ人もいるわ。人としての道を踏みはずしたり、

人生の重大な失敗のきっ かけが、お金とかの欲望に始まることは多いんだから。

弁護士のお仕事をやってみて、つくづく、心に芽生めばえる欲望ってこわいと思う」


「お金より、何が大切かって、やっぱり愛じゃないかと思うもの。美咲ちゃん」


「そうよね、美樹ちゃん。愛が1番だわよね。陽斗はると君もうまくいっている

んでしょ!そうそう、今日は陽斗くんのコンサートがあるんじゃない!美樹は

真央ちゃんとふたりで行くんでしょう?」


「うん。今日のコンサートは、客席が限定85名で、チケットも即完売だったの。

お姉さんには、岩田いわたさんとご一緒に来てもらいたかったけど、この次は

ご招待させていただくわ」


「楽しみにしているわ、美樹ちゃん」と美咲。


「美樹、おれたち家族全員も、招待してほしいな」と父の和幸かずゆきもいう。


「はーい、わかりました」というと、美樹は無邪気なあどけない表情でわらった。


「美樹ちゃんは、いつも幸せそうよね!陽斗はるとがいるからよね!」


「お姉さんだって、岩田さんがいるから、いつも幸せそうよ!」


「まあ、そうだけどね」と美咲。


「なるほど、男って、そんなにいいものかな」と、ふと、父の和幸かずゆきがいう。


「やだーあ、お父さんたら」とって、美樹はわらう。


「もう、お父さんってば」と、美咲もわらった。


 リビングは、明るい笑い声であふれた。


≪つづく≫


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