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雲は遠くて  作者: いっぺい
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34章 神か悪魔か、新井竜太郎の野心 (3)

34章 神か悪魔か、新井竜太郎の野心 (3)


「うん、そうよね。今回のM&Aっていうんだっけ、

モリカワの買収の騒動では、真央ちゃんに竜太郎さんは

ふられたり、真央ちゃんの兄の蒼希(あおき) さんが、

エタナールに入社しちゃったりって、いろいろあったわよね」


「ははは。そうだよね。モリカワが買収されなかったのは

良かったけどね。でも、竜太郎さんは、モリカワの経営手法を

参考にして、エタナールをもっと大きくするらしいからね。

モリカワミュージックのマネをして、芸能プロダクションも

立ち上げたからね。これから先は、モリカワの競合他社と

なっていきそうな感じなんだよ。そうはいっても、この社会じゃ、

誰が競争相手でも同じようなもので、それをけては、

やっていけないんだけどね」


「この世の中、競争ばかりが先行していて、チャップリンの

モダンタイムズみたいに、人間なんか歯車みたいなあつかいに

なっているって感じることあるもん。チャップリンて、100年近くも前に、

人間の尊厳が失われて、機械のいち部分のようになっている世の中を、

喜劇映画にしたんだから、その先見性って、やっぱりすごいわ」


「まったくだよね。まあ、竜太郎さんは、この前、バーのカウンターで、

いっしょにカクテルとか飲みながら、おれに話してくれたんだけどね。

会社を大きくして、その力で、世の中をいい方向に変えたいんだってさ」


「そうなんだ。志が高くって、すてきじゃないの。竜太郎さんって」


「そうなんだけどね。でも、彼の場合、いっていることと、やっていることに

矛盾があると思うんだ。エタナールをブラック企業とうわさされる会社

にしたのも、竜太郎さんたちなわけだからね。

おれって、黙っておけないタイプだから、竜太郎さんにその点について

聞いてみたんだ。そしたら、まずは、会社を大きくして、高収益を上げる

企業にしなければ、そして社会的に優位に立つ強者にならなければ、

世の中をよい方向に動かす力を持つこともできないっていたけどね」


「それも、正論かも。ブラック企業って、どんな企業のことをいうのかしら」


「サービス残業とかをさせたり、社員に過度な心身の負担をさせたり、

極端な長時間の労働をさせたりするなどで、劣悪れつあく

労働環境で勤務をさせる会社のことだよね。そして、それを

改善しない会社のことだよね」


「そうなんだ。エタナールって、会社はモリカワの10倍も大きいのにね。

でも、モリカワをモデルに、ホワイト企業を目指して、改善しているんでしょう」


「まあね、竜太郎さんもそんなことを、おれに話してくれていたけどね。


「それならば、よかったじゃない」


「まあね。でも竜太郎さんは、野心が大きいからか、よくわからない人だよ」


「そこが、スティーブ・ジョブスみたいに、神か悪魔かなんていわれるのね」


「いい意味でも、悪い意味でも、天才肌なのだろうね、竜太郎さんは。

彼がいたから、エタナールもあんなに大きくなったのは確かだしね」


「弟さんの幸平さんは、いい人よね」


「そうだね。幸平くんは、おれの1つ歳下とししたで、

おれをしたってくれるし、性格もわかりやすくって、

気持ちのいいヤツだよ」


「幸平さんも、美樹ちゃんのお姉さんの美咲さんのことが、

大好きなのよね」


「兄弟が、ふたりして、片思をしていたってことかぁ」


「わたしたちは、両想いで、よかったわよね」


「まったくだよ」


 そういって、信也と詩織はわらった。


 カー・オーディオからは、ビートルズの アビィ・ロードが終わると、

ジミーペイジのリフが軽快で始まる、レッド・ツェッペリンⅡが流れる。


 ロックのリズムとともに、ホワイトパールのトヨタのハリアーは、

安定した運転で、東京スカイツリーに向かう 。バイクのときも、

クルマのときも、信也の運転は、たくみなアクセルやブレーキの

操作で、安全運転のマナーを守る、的確さであった。詩織は、そんな

信也の日常の仕草しぐさに、男らしさを感じている。


 運転に集中する信也の横顔に、うっとりと見とれる、詩織であった。


≪つづく≫ ーーー 34章 おわり ーーー


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