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第十五章、スカウト2

避雷針から..ファーストラブ オリジナル

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html


ギターが軽快に鳴り響くと、この二人はその状態から、俯き加減に..。


聡が歌い出すと、この二人は寄り一層切なさが増して行くのであった。


その曲は、幸せだった頃を思い出させる様に..。


曲がクライマックスになると、二人の瞼が揺れた。


二人は眼を瞑っている瞼から、大粒の涙が零れ落ちた。


曲が終わると、プレーヤーの、ランプが赤に変わった。


二人は、静かに、目を開けて、思いに更けていた。


涙を拭く事もしないで。


美紀は我に返るように涙を拭う。


それに気付く恵美が、自分も拭う。


美紀は下を向き、何気なく呟く、「天罰だったのかな..浩二君」。


恵美も、こぼれる涙を手で拭いながら、上を向き、


「浩二には、運命を与え、私たちには試練を与えた」。


美紀が、下を向きながら、静かに恵美に顔を向ける。


恵美、「そう言っていました、あの子が..。それは.. 誰でも当てはまる事ですよね」。


美紀、「そうね.. 自分が卑怯になればなるほど、傷が深くなり、蟠りもより強くなる。


一瞬の快楽が欲しいばっかりに、過ちを犯し繰り返す。


朝起きると虚しい自分がそこに居る。誰も慰める人が居なくなる。


誰もが自分から遠ざかる..。 誰も居ない部屋に、惨めな女の姿をした、男がただ一人..」。


恵美、「私もそう.. 結局どちらかに、頑なに愛を求められ、


私を強烈に欲しがるどちらかに、私が靡いて。挙句の果ては、奪い合いになり、


悲しい思いをする事になる..。同じ事を繰り返せば、最終的に、浩二に味わって来た、


比べもにならない程の傷を追う事になる..。 そして周りから信用を無くし、


誰も慰める人が居なくなる。そして誰もが自分から遠ざかる。


派手な姿をした女が、夜中に泣きながら、街を歩き、欲望を満たしたい男が言い寄り、


優しさを言葉巧みに並べられ、男の欲望に犯されて、


朝起きたらひどく顔が荒れた、惨めな女がベッドでただ一人..」。


美紀はそっと椅子から立ち上がり、プレーヤーのイジェクトボタンを押すと、


静かにCDを乗せたトレイが開いた。


手に持っていたケースを開き、ディスクを優しく収め、ケースを閉じた。


そしてこのフロアーから何も言わず、出て行った。


恵美も立ち上がり、プレーヤーの上に置かれていた鍵を持って、部屋を出たのであった。


ミキサー室に戻った美紀は大崎に、「お願いが有るの」。


そう言うと大崎が、「あー何だ..言いたい事は解っているが」。


美紀、「この子達のバックアップ、お願いします」。


大崎、「あーそうするつもりだった、最初から、緒方が遣らないと言えばな..」。


美紀、「私も社長に掛け合ってみますから」。


大崎、「その辺、俺もな.. 社長の和蔵に頼んで見るよ!


ずいぶんバンド時代の頃から、貸しはあるからな奴には、はっははは」。


恵美が静かにこの部屋に戻ってくると、大崎に鍵を渡した。


恵美、「大崎さん仕組んでたんだ、しゃべり声聞こえた」。


大崎は渡された鍵を、器具に戻し、「ああ、仕組んだ事で、一つになったろ、お前ら、緒方も含めて」。


皆な唖然とした。


大崎が聡に、「俺がスタンドで、お前に言った事、皆に言ったか?」


聡、「え?えー、そう言えば..」。


大崎、「バンドの事は、個人で悩んでも無駄だ、またばらばらな思想を抱くだけだ、


バンドの事は、皆で考えなければ解決しないと」。


真、「最初から、それが狙いだったっすか? 大崎さん..」。


大崎、「あー そ・の・と・お・り」。首を傾げる。


皆なが吹いた。


美紀、「真似しないで下さ~い」。と、膨れた。


大崎、「お前の毒矢に掛かる奴ら、ろくでもない、思い上がりな奴らばっかりだったな、


浩二を抜かしてだがな。違うか.. 浩二がお前を口説いたんだな、そう言えば」。


美紀、「口説かれたのは、女になって最初だった」。


小百合、「浩二も、かなり思い上がってた様な気がするけど..」。


大崎、「アイツは口で能書きたれてた分、実行して、


半分は成功したじゃねーか、ただ嘘も付いたがな、さまざまな部分で」。


恵美、「アイツのポリシーは、嘘も方便よ」。


美紀、「それ言えてるね」。


聡と香菜が皆に、「これから宜しくお願いします」と、深々と頭を下げた。


大崎、「やっと、皆な、わかり始めた様だな、一人じゃ何も出来ない事が」。


そして大崎は、香菜の所に行き、「良かったな!」と、頭を撫でた。


香菜は笑みを浮かべて、潤んだ。


大崎、「恵美#!」。いきなり名前を呼んだ、恵美はっと大崎に顔を向けて、


「は..はい」と、答えた。


大崎、「お前..自分にとって、聡がどれだけ大事だったか、解ったろ!」。


恵美、俯き、「はい、だから償ってゆくつもりでいます」。


大崎、「それは、もういいんじゃないか、十分だと思うな..」。


恵美がその言葉に驚き、躊躇いながら、「どうして..どうしてですか」。


大崎が恵美に顔を向けて、「これからは、香菜ちゃんに任せるんだな」。


恵美、「へ…どう言う事ですか」。


大崎、「今、愛すべき人は斉藤君だ、そこまで言えば解るだろ」。


恵美は躊躇ったが、冷静に何か考えていた。そして、大崎に顔を向けて、


「ええ、その通りですね、聡君が意識不明の時、短い間でも、私を慰めて居てくれた人、


『必ず助かる!』と、慰めてくれた斉藤君に、これから償います」。


聡、「寂しかったのだろ、二人が死んだら、もう誰も愛してくれなくなる、


二股掛けていたお前、皆に敬遠されてるしな」。


斉藤、「放課後、四階の正幸先輩の教室行出て、廊下の何処からか、


すすり泣く声がして、何気なく屋上の階段上がって見たら、


階段の一番上で座って恵美が一人で泣いていて、


『どうしたんだ、二人の事か?』って聞いたら、私が悪いのって繰り返して」。


恵美、「浩二と聡君、『私が殺したの』って言ったの、聡君、皆から


『もうダメだ!』って言われていて。そうしたら、斉藤君、


『聡は助かるよ、絶対に俺が保障する絶対に助かる』って」。


斉藤、「俺、事情よく知らなくて、そうしたら泣き止んで、


『違うのっ、あれはバンドの事じゃない、私の事なの』、って言うもんだから、


ただ、その時は好きだとか、嫌いだとかの感情なかったけど、泣き止ませる言葉それしかなくて、


でも泣き止まないから、つい..」。


恵美、「そうしたら斉藤君私に、『お腹空かないか?』って」。


聡、笑いながら、「あははは、俺と同じ事言ってる、お前..」。


香菜が、微笑んで、「はとひふんほおんはひ」(聡君と同じ)。


小百合、「聡君とおなじ、って?」。 皆が微笑んだ。


聡、「解った、頷いた恵美が、斉藤に連れられて、斉藤、


『何処行く』と聞くと、千歳台のファミレス、そして恵美の縄張りへと」。


美紀を残し皆一斉に、「そ・の・と・お・り」と、首を傾げた。


美紀、「もう、社長に頼むの止める」。


大崎を残し、皆な真面目に、「済みません」と、誤った。


大崎が大笑いした。


大崎、「与えられる事しか知らなかった、お前がこれから、本当の意味での優しさを、


愛情を与えて行く..そう、お前が斉藤君の、香菜ちゃんになるんだろ」。


恵美、「はい、必ず誓います」。


大崎が今度は、「美紀#!」美紀が、「はい..」。


大崎、「やっと、自分を振り返る事が出来たろ」。


美紀、「ええ、白畑さんのお陰です」。


それで要約話が出来る。


美紀は、「え?」っと言い、首をかしげた。


大崎、「武なーお前の事、解ってくれていたぞ、あれから、高校卒業後、別れたんだ直ぐ彼女と。


『理解し合えた唯一の人だ』と、『別に構わないです、一緒に居ても、


もう恥ずかしく有りません』とさ」。


美紀はその時、驚きのあまり声を出すことが出来なかった。


大崎、「近くで働いて居たの知らなかったろ」。


武、さり気なく美紀に近づき、「お久しぶりです」。


美紀が緒方だったと時のバンド仲間、そう..美紀が好きだった、


島崎 武が、美紀の目の前に作業服で立っていた。


どう応えていいか解らず、体が震えて止まらなかった。


大崎、「さー、何時もの調子で行こうぜ!」。


大崎は武に、美紀の名刺を渡した。


大崎、「武、ここの携帯の番号有るだろ、これを自分の携帯に打ち込んで発信してくれるかな?」。


ここに居た皆が、見守っていた。


武、作業服の上着ポケットから、携帯を出して、美紀のアドレスを打ち込んだ。


そして発信ボタンを押した。


美紀のバッグから着メロが鳴った。


美紀は、バッグから携帯を取り出し、着信を受けた。


美紀、「もしもし」。


武、「ずいぶん変わったね」。


美紀、「貴方は変わらないわね..」。


武、「又、語り合おうよ、パンクの話で一晩中!」。


美紀、「えー、喜んで」。


粋な計らいを見せた大崎。皆は微笑んで、そんな二人を見届けていたのだった。





この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。


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