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第十四章、つて9


避雷針から..ファーストラブ オリジナル

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html

そして..しばらく聡達は、恵美を遠くから見ていた。


まだ夜は、肌寒い季節に斉藤は、自分の着ていた、ジャンパーを恵美に羽織って上げていた。


すると、夕方の様相とは違い、長い髪を後ろでまとめ、黒のパンツ姿に白のコットンシャツ、


紺のジャケットを羽織って現れた。


美紀の顔を見ると、夕方の時の顔とは、別人の様で有った。


大人しく、それで居てきひんがあるようで、まさかあんな噂が立つ事が、信じられない程だった。


恵美が、「先ほどはどうも」。


そう言うと、軽く頭を下げた。


美紀もそれを見て、頭を下げ、「入りましょう」。


そう告げると恵美が、「ええ」と、頷き二人は店の中に入って行った。


店内は、疎らな人で、何時もの奥の席に、二人向かい合わせで座った。


すると恵美は美紀の右手首に、目をやった。


大きく太い縦線が入っていた。


美紀はさり気なく、それを隠す様に左手で覆った。


店員が水を持って来て、二人の前に置くと恵美は「アイスカフェオレ」と答え。


美紀も、「同じものを」。と、店員に告げた。


品物を参照し二人に確認すると、頭を下げ立ち去った。


美紀が、「貴方には迷惑掛けたわね」。


美紀、「いえ、そんな事は…、死んだアイツがあなたを口説いた事は、


それとなくアイツから聞いてます。貴方には責任は、有りません」。


美紀、「二月の初めに浩二君の事は、大崎さんから聞いたわ…」。


恵美、「そおですか..」。


美紀、「思い出した、浩二君とやり合った子が、聡君だったわね、付き合っているの?」。


恵美、「正直、今は違うとは言えません」。


美紀、「そうね、スタジオに居た時の貴方と聡君、妙に違う感じがした。


まっ直ぐで、誰かを頑に守ろうとしている眼が、印象的だったわ」。


恵美、「あの人は、私を頑なに愛してくれました。でも私が裏切りました」。


しばらく沈黙が流れる、先ほど注文したアイスカフェオレが、テーブルに置かれた。


恵美、「浩二が、貴方と付き合って居る時、私は自分の幼さに、自分を恨みました」。


美紀、カフェオレを飲み、「それは、あの時の私を見てね」。


恵美が少し頷く、それを美紀がチラッと見て。


美紀、「私も、格好は、大人びて居たかも知れない、でも心は、幼かったわ、


しいて言えば、中学の時の貴方より、ちょっと大人くらいだったかな…」。


恵美、「浩二、貴方と別れてから、浩二に呼び出されて部屋で、男性経験がない私を、


メチャクチャにして、最後に『大人の体はいい』と言われました。


私は、死にたくなりました。そして、家に置いて有った。母親が服用していた、


睡眠薬を大量に飲んで、手首を切り、ベッドで倒れていた所を、母親が見つけて、


病院に運ばれて、幸い意識が朦朧としていた時の事で、手首の傷は浅く、一命を取り留めました」。


すると突然、美紀の眼から涙がこぼれ落ちた。


美紀、鼻を啜り、「ごめんなさい」と、涙を指で拭った。


美紀、「私も、浩二君と意気投合した時、歳の差を感じてなかった。


貴方よりちょっと大人だった私は、何時も決まって、このくらいの時間の、


この席よ…、浩二君と少し話をしてホテルに行くのが都合のいい、


浩二君の家から一番近い、話が出来る、普段は人も疎らな、


人目に付かないこの場所が、お気に入りだった。女になって始めての男性が、


浩二君だったの。優しくて、何時もモッツ、ラフインノーズ、パンクバンドの話で盛り上がっていた。


ある時、私はブロンドの長い髪を、バッサリ切って、


フレンチボブのフェイスラインにシャギーを入れ、周りの毛先だけ自然にすいた髪を浩二君は撫でて、


すてきだねって言われた。その時私、真の女になれた気がした。



それから、なんでも許してくれた、こんな時間に呼び出しても、夜..、風俗で働いていた事も、


浪費癖が有る事も、お金があまり無くて、ホテル代を持ってくれた事も、


中学生だと言うのに。でも一つだけ許してもらえない事が有った。


それは、性転換した事だった。私はある日、浩二君の優しさに、気を許し、


ホテルのベッドで、さり気なく、本当の私の事を口にしたの、そうしたら、


急に態度が冷たくなり、服を着て『出よう』と、『嘘だ』と、『冗談』と、言っても聞く


耳を持ってくれなかった。それから、浩二君の携帯の番号と、メールアドレスが変わっていた。


私は、気が狂いやけになっていた。働いていたニューハーフのお店の、


控え室の台所に置いてあった、果物ナイフで手首を切った。


台所でしゃがんでいた時、同僚がそれを見つけて、直ぐ病院に運ばれ一命は取り留めた。


でも、心の傷だけは、いまでもあまり完治していない。時々もの凄い蟠りが私を襲うの。


そうすると、口説いた、男の子を呼び出して、デリックレコードを武器に持て遊ぶの。


それが日常的に続いているのが今よ」。


恵美、「私も、それから、卑怯になりました。浩二、聡君を往復しました。


浩二は小学校の頃からの付き合いで、中学に入って直ぐに、


『結婚するなら恵美だから』と、言われてました。バカだから私、


今の今までその言葉心の奥で、信じていて..。聡君は貴方が言った通り、


まっ直ぐな人です。でも、浩二に、一度裏切られたトラウマが、


私をどっち付かずにしていました。何時も強く攻められてる方に、私は靡く。


そんな毎日を送っていました。ある日浩二が死んで、聡君は意識不明に..


卑怯な私は..今付き合って居る斉藤君と言う、同じクラスの男子と仲良くなり、


聡君の意識が戻ると、聡君にまた靡く。でもある時、聡君に優しい思いやりがある、


女の子が居る事を知りました。


その女の子は純粋で、聡君を頑なに信じています。


その子は言語障害で、聡君は、その子を一途に、愛し守る姿を見て、


私は我の行いを振り返りました。


気が小さい私は、卑怯になる事で、それを解消していた自分を知りました」。


二人は、しばらく下を向いたままで居た。


美紀が、「解ったわ、あなたが償いたい気持ちが」。


恵美は驚いた表情で顔を上げた。


美紀、「レコーディング終えているんでしょ、二人は…」。


恵美、「は..はい」。


美紀、「今度の木曜、大崎さんの所に、今日と同じ時間に、スタジオに出向くから、


その時に、レコーディングした曲、聞かせて貰うわ」。


恵美は、落ち着いて、「有難うございます。必ず伝えます」。


そう言うと、美紀は羽織っていたジャケットを着て、椅子から立ち上がり、


透明の筒から伝票を取った。


すると恵美に、「あなたが、悪い訳じゃないわ」。そう言って立ち去ろうとした美紀に恵美が、


「済みません、スタジオであんな態度とって」。


美紀は、「また一緒に、食事でもどお?、貴方とは、あのろくでなしよりもずっと、


話し相手になれそう、無論別の所で」。


恵美、「ぜひ、お願いします」。と、言うと微笑んで立ち去って行った。


この二人の蟠りが、ここから始まり、ここで終りを告げたのであった。


この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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