第三章、待遇2
卸本町の蜃気楼、パターン2(過去からの訪問者)オリジナル
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「あ..あのさ~来週武道館のラルクのコンサートの話しだけど..」 。
恵美は聞く耳を持たずスッと、立ち上がると、顔を強張らせ席を離れた。
そして、ゆっくりと聡の席の方へ歩いて行った。
恵美は聡に囲んでいる、ファン達を無表情で押しのけ聡に近づいた。
「聡君..」そう言いながら、聡の机に両手を置いて。
「来週..日本武道館のラルクライブがあるんだけど..」
恵美はその時、後ろを振り返って斎藤を睨んだ。
斎藤は、その恵美の表情に怖気づいた。
その光景を、目の当たりした、聡とそのファンは、ひるんだ。
聡は、「あ..あの~さ~」そう言葉を発している間も、恵美は目を見開き、
聡の眼差しをじっと見ている。
聡は怯えるかの様に、周りを見渡した。
そして、「ごめん..今...そんな気になれないんだ..
浩二の事に対しても..周りの人達にも、迷惑かけてるし..
いきなりはしゃいでさ~そんな事出来ないし」。
恵美は..その聡の反応に、一瞬、聡を睨みつけた。
その後、笑みを浮べて、「そうだね..」。
そう言いながら、静かに聡の席を離れて行った。
聡とそのファン達は、その姿を唖然と見ていた。
恵美はプライドを、傷つけられた様な面持ちで、自分の席に戻って行った。
その光景を見ていた斎藤はまた、惨めったらしい顔をしながら、恵美に再度近づく。
そして、「やっぱ聡さ~、そんな気になれないみたいだし、せっかくチケット取れたんだから..」
恵美はふて腐れた表情で、斎藤の問いかけを無視していた。
斎藤は、その恵美の態度に対して、いささかむかつき..「なぁ~聞いてんだろー#!」
そう言いながら、恵美が座っている席の背後から、肩に手を掛けた瞬間!
「私..メジャーあんまり好きじゃないの#!」。
振り向きもせず、斎藤に対して冷たい返事を返した。
この教室いた生徒達誰もが、その光景を目の当たりにしていた。
そんな中、聡は脳裏に、複数のざわめきが走る。
それは、明らかに恵美の態度の事である。
無数に恵美の取った、行動に批判が走る。
(どうするつもりだったの恵美さー)。
(チッケット..聡の分..まさか斎藤ごまかして..)。
(ちょっと..恵美なに考えてるのー)。
(調子こき過ぎてね~)。
(あれほど、聡君が意識無い時、斎藤君に擦寄ってたのが、
息吹き替えしたら手のひら返した様に、聡君に今度は靡くの、都合よ過ぎない?)。
(馬鹿じゃねーのあいつ..皆が見てる前で…)。
陰口をこそこそと、言い合っている生徒達。
口を動かしていないのに、心の中で批判をしている生徒達が、同時に脳裏に走っている。
聡は気が遠くなって行く感覚に襲われた。
堪らなくなり、席を立ってこの教室から出て行った。
周りに居たファンの一人が、その光景を見て、聡に付いて行くと、
その後から数名、その一人のファンに、寄り添うように付いて行った。
廊下に出た聡は、何気に後ろを振り向き、
「ごめん..一人にしてくれ」、そう呟いて廊下をそっと歩きながら、
何気に廊下の窓の外を眺めていた。
聡は不安だった。
そうあの医師の硬く口を閉ざした、心理透視能力の果てにある物は..。
突然襲い掛かる不安と、孤独。
親しい友人にすら相談出来ぬまま、孤独な世界に心を委ねて行ったのであった。
そして放課後にて…..
今日の授業が終わり、聡は複雑な胸中で、教科書をバックの中に仕舞い込んでいた。
するとバンドのメンバー、他のクラスである真が、聡の教室に頭をかきながら入って来た。
そして聡の席の前に立ち、「病み上がりでなんだけど、バンドの事で..」。
真はしぶしぶ語る。
聡は教科書をバックに押し込みながら、真の顔をちらっと見た。
真は”つっ”と、頭をかきながら舌打ちをした。
聡が突然、「夢をもう一度か?」。
真「......」。
「あっ...あ~、お前もそう思うか、あ..あの~、俺もそう言おうと思ったんだ....」。
聡の脳裏に、(こいつ俺が言おうとしていた事、ズバリ!言い当てやがって..#)。
その時、聡が、「あっははははは.....」。
真はそんな聡に、不気味な感覚を覚えた。
そんな聡がさりげなく、「少し考えるよ、浩二の事も有るし、
俺もあいつの事に対して、いや、俺自身振り返って、見直したいしな..」
真は、その聡の意見に対し「あ、あーそうだな」。
聡の脳裏、(ちぇ..こりゃ~時間掛かるな..)
その時、聡が真を睨んだ。
真は下を向いて考え事をしていたが、何気に顔を上げた。
その聡の表情に、”ハッ!”とした。
聡はふと表情が戻る。
真がその時、目を細めて心の中だけで呟く.. (お..お前..)。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。