第三章 待遇
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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事件から二十日後の城南高校にて....
あの事件以来、屋上に生徒は立ち入りを禁じられ、鍵が掛けられた。
今日二十日ぶりに聡は、学校に復帰する。
聡は検査のため、授業を後れて出てくる予定になっていた。
そして聡は、学校の 門の前に佇んでいた。
聡はためらっていた。
普通の常識では考えられない事態が、自分に降りかかっている事に。
そう..特殊能力。
ふと聡は、門から学校を見上げた。
何時もと変わらぬ風景も聡にとっては、何処か大きく違う感覚に襲われていた。
それは人の心が見える恐怖。心に重く伸し掛かるのであった。
佇んでいると背後から、ちゃり~んちゃり~んと、自転車のベルの音が聞こえた。
ふと後ろを振り向くと、自転車に乗った隣のクラスの、能天気な加藤が、
ママチャリに乗ってスッ!と、聡の横に止まった。聡の肩に手を添えて、
「よぉ~聡、助かったって!ラッキーだったなぁ~!それじゃ~学校で...」。
そう言って何食わぬ顔して、学校の門の中に消えて行った。
聡はその加藤の一言で、少し気が楽になったか..徐に学校の門を潜った。
校舎に入ると、何時もの様相を漂わせている、この空間の雰囲気を受け止めていた。
そして、自分の下駄箱の扉を開いた。
すると右片方の、上靴だけ無い..。
「あれ..?そうか..!まあいいや」。そう囁くと聡は、あの時の屋上が蘇り、恐怖で体が震えた。
仕方なく左足だけ上靴を履いて、階段を上り自分の教室が在る二階に向かった。
二階に辿り着くと、自分の教室の組が書いてある、プレートを見つめた。
ボーっと見えていた、焦点がゆっくりと合って行く、
すると少し文字がかすれた2-3の文字が、見えた。
聡は、ゆっくりとその教室に向かう。 静まり返った校舎、一人廊下を踏み出す聡。
自分のクラスにたどり着いた聡は、廊下から扉のガラス戸越しに、授業風景を眺めていた。
それは見慣れた授業風景。何時もなら、遅れて教室に入って行っても、おどけていた聡..。
だが今は、境界線が張られている様な感覚に、襲われていた。
聡はその授業風景を、ガラス戸越しに見つめていた。
しばらくするとこの教室の、一番前の席の入り口に近い男子生徒が、
ふと入り口の方に顔を向けると、“はっ”と、した顔をしながら、
徐に隣の席の女子生徒に、話し掛けている。
話し掛けると、即座に、ガラス窓の方を指した。
女子生徒は、指差した男子生徒と顔を見合わせて、「お~い!」そう男子生徒が急に叫んだ!。
生徒達は一斉に、叫んだ男子生徒の方に顔を向けた。
叫んだ男子生徒は、ガラス戸の方を、指差した。
皆”へ”と言った様な、表情を見せながら、指差す方に顔を向けた。
それを、目の当たりにした、ガラス戸の向こう側の聡が、
「うをぉ~」と声を出して驚き、体を仰け反らした。
その瞬間!教室から「おぉ~」っと言う歓声が上がった。
そして授業を進めていた教師も、そちらに顔を向けた。
聡は恥ずかしそうに、左手を後頭部に据えながら、
ガラス戸をガラっと開けて、頭をぺこぺこさせながら教室に入って来た。
その瞬間教室の生徒達は、拍手喝采で歓声を上げた。
聡は席に付き、拍手をしてくれているクラスメイトに、ぺこぺこ頭を下げていた。
授業を行っていた教師が、「あー皆な、静かにしてくれ..」。
教師は、突然のこの事態に焦りながら、この状況を速やかに対処しようと、
必死で、「じゃ~聡君の全快の、歓迎は後にして、授業を進めま~す」。
そう発している教師の言葉など、生徒達は聞く耳を持たなかった。
その瞬間、聡の脳裏に言葉が走る。
(この授業が終わってから入って来いよ..)。
その言葉で聡は”ハッ”と、教団の方に目をやると、ふて腐れた様な眼差しの教師が目に入った。
聡はそれをなにげに観ていたが、クラスメイト達の歓迎振りに、気を取られてしまった。
聡は、この状況下に対し、ほのかに安心感と、
これからのライフスタイルを見出して行くのであった。
休み時間を迎え、2時間目の授業が終わり。
長く学校を休んでいた聡が、隣の席の女子に授業内容を大雑把に聞いていた。
その最中女子生徒の甲高い声が、廊下の方から聞こえて来た。
さりげなく聡が廊下の方に顔を向けると、聡のファン達がこの教室に雪崩れ込んで来た。
その瞬間聡は逃げ腰に、席を後ろにずらした。
女子生徒達は聡に群がり一斉に、「退院おめでとう..」。
そう言い放つと聡は、椅子から体を仰け反せ、「あ..あ~りがとー」と、どもりながら答えた。
その時、何気に視線を感じる。
そっと顔を前の方に向けると、彼女の恵美が顔を強張らせていた。
その瞬間脳裏に....(聡君はこれからも....私が.....)
そして、恵美は、聡に向かって微笑んだ。
聡は覚束ない表情を、恵美に見せた。
その直後、恵美の後ろの席に居た、女生徒が恵美に、「ねー斎藤君どうするの..」
恵美に話し掛けている、姿を聡は捕らえていた..。
聡はファンに囲まれている状態など、眼中に無かった。
すると恵美から三つ後ろの席の、斎藤が立ち上がった。
何気に恵美に近づく、恵美の耳元で囁いていた。
聡はその光景を、じっと見つめていた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。