第八章、始まり10
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html
聡の脳裏に、言語がはっきりした、香菜の言葉が走る。
(個人部門と団体部門を行っているの。個人部門では、私は油絵で人物画を出品するつもりで、
団体部門は..授業の一貫でグループ四人で制作する事になっていて、
アーケードアートの下書きをしている段階なの。個人部門の私の作品は..)。
香菜はその時、躊躇った。
聡は、「そっか..個人部門は、放課後に回される訳か!で..個人部門どんな物描いているの?」。
香菜、(....)。
聡、「ん..?どうしたんだ」。香菜に顔を近づけた。
その時、香菜の顔が、少し赤くなる。
脳裏に、(海辺の道路沿いに、麦藁帽子をかぶった少年が佇んでいるの。
その少年は、夕日が海に落ちて行く様子を、見ている後ろ姿なの)。
聡、「へー、見たいな!見せてよ、すごく見たいよ!」。
そう問いかけると香菜は、「う..うん」。肩を竦めて、恥ずかしがる。
聡はジンジャーエールを一口飲んで、
「あっ!そうだ..その絵の画像、今度携帯で送ってよ!」
その時、聡の脳裏に、(その姿のモデル、あの東邦生命ビルに居た時の、聡君..)。
聡はその時、うつろな眼差しで俯いた。
聡は表情が重くなり、食べていたハンバーガーをテーブルに置いて、
「俺、そんな、綺麗な奴じゃないぜ..」。
そう答えると、香菜は聡を見つめた。
聡、「俺..人一人殺している..。間接的な行為だけど..いや俺が..」。
聡は目に涙が溜まっていた。そして零れ落ちた。
香菜はそれを見て、手提げカバンから、自分のハンカチを取り出し、零れ落ちた涙を拭いてあげた。
そう..あの時、自分にしてくれた様に。
聡は吹いてくれた、香菜の手を握った。
そして、「有難う..ごめんな」。
香菜はその時、首を振った。
優しく涙を拭いてくれた香菜が愛しく、それで居て掛け替えのない、
心から愛する者へ今、導かれて行く。
二人は店を後に山手通りから、香菜の自宅方面の目黒通りを、目黒本町に向けて歩いていた。
聡が携帯を開き時刻を見ると、もう時はすでに十一時を過ぎていた。
郵便局の角を曲がり、少し歩いて細い路地に入ると、古い家屋と、まだ目新しい家屋が立ち並ぶ、
東京のごくありふれた住宅街だった。
そして築二十年以上は経っている様相の、二階建ての家の前で香菜は足を止めた。
その時聡は、香菜の家だと察知した様子で、繋いでいた手を離した。
聡は軽く香菜に、「じゃあ、また」。
香菜に問いかけると香菜も、“うん”と、頷いた。
その時だった、聡がいきなり香菜の手を持ち、自分に引き寄せ抱きしめた。
香菜は一瞬、驚いて、”はっ”っと、小さく声を出したが、体の力を抜き身を任せた。
聡は何も言わず、香菜の家の前で抱きしめていた。
そして、「ごめんな、こんな俺で..」。
そう呟くと、香菜は聡の背中に静かに両手を回した。
聡の脳裏に、(聡君はそんな人じゃないよ!優しい人。
私の心が聞こえるなら、もうとっくに酷い事してる..)。
聡は香菜の目を見つめた。
そして..
「愛してる、離したくないんだ..」。
そう呟くと、香菜は聡の背中に静かに両手を回した。
聡は、香菜の目を見つめた。
そして、口付けを..。
聡は口付けを終えた後、香菜を見つめて強く抱きしめて、
「大切にするよ、もう掛け替えのない子だから..」。
そう言いながら、涙がこみ上げた聡。
脳裏に走る事葉は、(私も愛しているよ、聡君以上に..)。
夜のこの静かな佇まいが、愛し合う二人を優しく包んで行のであった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




