第八章、始まり8
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html
目黒区葵都立芸術高校にて..
香菜は学校の展覧会個人部門の作品を、汗ばみながら油絵で仕上げていた。
それは海辺の道路沿いに、麦藁帽子をかぶった少年が、
夕日が海に落ちて行くさまを、見ている後ろ姿だった。
その時すでに、教室の時計の針は九時を指しかけていた。
すると教師が、教壇に立ち手を叩いた。
”パンパンパン”。すると生徒たちは、キャンパスに描いていた手を止めて、
一斉に教壇の方に顔を向けた。
教師は、「皆さん続きは明日にしましょー。もう九時を回ります」。
生徒たちは、キャンパスに描いていた手を止めて、皆な肩の力を抜いて、
膝に手を置き集中していた 全体の力を抜いて『はー』と、ため息を付いた。
皆な帰り支度をてきぱき済ませ、パラパラと教室を出て行った。
教師も、おおよその生徒が出て行くのを見て、教室から出て行った。
香菜は自分の描いた作品を眺めていたが、”ふー”と、息を抜き帰り支度を行った。
後ろの席に居た三人が、「川坂さんおやすみー。と声を掛けてくれた」。
香菜は笑顔で、その三人に手を振った。
香菜も帰り支度を済ませて席を立ち、まだ二~三人この教室に残っていた、
生徒に手を振りながら、軽く頭を下げて教室を跡に、振り向いた目の前に聡が立っていた。
はっ!と、驚いて一歩後ろに下がる。
聡、「脅かしてごめん、会いたかっんだ。電気照るいてる教室、
二階とここだけだったから、何気に除いて見たら..」。
聡は照れながら呟いた。
ソックスのまま何も履ずに、私服で佇んでいた姿に香菜は、
「あ..あ..あ~」。何と答えていいか解らない有様で焦った。
時教室に残っていた二~三人が、その二人の姿を見ていた。
聡はその生徒達を、少し気にしていた様子だったが、
「あ..あの、一緒に帰ろうか..この頃一人だと物騒だし」。
とっさに口実作り、香菜に問いかけると、香菜は目を丸くしながら頷いた。
そして二人は、教室を出て行った。
数人の生徒達は、ただ呆然と出て行く二人の後ろ姿を、見届けていた。
香菜は下駄箱で、靴を履き替えていた。
その時聡が、「ごめん!突然来て..」。
そう呟くと脳裏に、(驚いたけど、嬉しい..)。
香菜の顔を見ると、微笑んでいた。
香菜が聡の横顔を見て、「なひは、あっはの?」。(何かあったの?)。
聡、「う..う、うん、まあ..」。
聡はぎこちなく答え、ぎこちなく頷いた。
脳裏に、(聡君初めて会った時、ハンバーガ食べながら、そんな顔していた)。
聡は香菜に振り向くと、香菜は手下げかばんを持ち、
自分を見つめて、首を傾げて表情を伺っていた。
聡は香菜の手を軽く握り、「出ようか」。そう言って香菜を、校舎の外へと連れ出した。
校舎を出ると握っていた香菜の手を一度離し、手を繋ぎ直した。
そして校門を後にする。二人は黙って歩いていた。
聡が何気に、「お母さん心配しない?」。
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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香菜に問いかけると、「はっひ..へーふひはお」(さっき..メールしたよ)。
聡、「そっか」。
聡は微笑みながら問いかけて、手を繋いだまま歩いていた。
聡、「目黒本町だよね」。
香菜は、“うん”と頷いた。
聡、「へ..電車かバスで通っているよね?」。
香菜、聡の横顔を見つめた。
聡の脳裏に、(電車使ったり、歩いて帰ったり、その日の気分なの)。
聡、「そっか」。
そしてまた、この二人は黙ったまま山手通りを、香菜の自宅が在る目黒方面に向けて、
歩道を“テクテク”と歩いていた。
聡は香菜と手を繋いだだまま、俯き思いに更けていた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




