第八章、始まり6
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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その時ポケットの携帯が鳴る。
聡は徐にズボンのポケットに手を入れて、携帯を開いた。
すると、香菜からの返信だった。
[今、授業終わったの、授業中で、返事返せなくてごめんなさい、でも遣り残した課題が有って]
聡は携帯の時計を見ると、もう五時三十分。
薄暗いこの通りは、車のヘッドライトが眩しかった。
聡は携帯を畳んで、持ったまま歩き出した。
するとまた携帯が鳴る。聡は歩きながら手に持っていた、折りたたんだ携帯をまた開けて、
受信歴を見ると恵美からだった。 メールを開いてみると、[今、会える?]。
聡は立ち止まり、その送られて来たメールをボーっと見ていた。
聡は携帯をピピピと押して、メモリーリストから恵美を選んだ。
そして恵美の携帯に、電話を掛けた。
“ププププ、プルルルループルルルループッ”「もしもし」
聡、「おう、なんだよ..」。
恵美、「会いたいの..」。
聡、「今日はもう、家に帰るぜ」。
恵美、「聡君、斉藤君と..もめたの?」。
聡、「....後輩がそう言ってたのか?」。
恵美、「....」。
聡、「同じ繰り返しはもう、したくないんだ」。
恵美、「それ...どう言う意味?ねえー会って話そうよ!」。
聡、「それが、同じ繰り返しだ」。
恵美、「だから!どう言う事なの?」
聡、「俺達、いや..浩二も含めて、二年間同じやり取りをして来た」。
恵美「...」。
聡、「今日の斉藤みたいに、浩二と話して、最終的にお前を、
どちらかが攻めると、攻められた方に前が必ず付いて、
あやふやなまま、どちらでもないお前と浩二と俺との関係。
挙句の果ては、泣きじゃくってお前を許すしか無くなる」。
恵美、「そんな事ないよ#!って言うよりそれでうまく..ハッ!」。
恵美は今、自分の本音を言ってしまった事に気付いた。
恵美、「って言うか、...と..とにかく会おうよ、聡君の家の近くで、あぁー部屋でもいい」。
だが、言い訳は通らなかった。
聡は穏やかに答えた。
「終わろうぜ、もう..。少なくとも、浩二の死は、
お前にも責任は有るぜ#!間接的ではあるがな!」。
恵美、「どうして、私がどうして!」。
聡、強い口調で、「お前がハッキリすれば、少なくとも浩二と俺は、
屋上でやり合わなくて済んだ#!あいつが俺を、屋上に呼んだのは、
バンドの事だけじゃねー、お前が俺と付き合いながら、
浩二にも気がある事を、お前は浩二に匂おわせていたからだろーが#!」。
恵美泣きながら、「そ..そんなことない、そんなことないもん」。
聡、「ばーか..同じさ、そこで同じ繰り返しなんだ!」。
そして沈黙の時が流れる。
恵美は電話の向こうで、しくしく泣いているだけであった。
聡は歩道の真ん中で、携帯を耳にあて、ただ黙ってやるせない表情だった。
聡、「あいつ(浩二)、結局バンドの事よりも、幼馴染だったお前を取られたくなかったんだ。
俺も今となっては、言い訳にしか過ぎないけど、浩二から奪うつもりは無かった。
それにあいつは..お前が俺に、進んでアプローチしている事を知っいてた。
浩二と俺は..お前の事に対しては、何時も冷静だった!
それはバンドが売れ始めて来ていて、揉め事は起こしたくなかった事も有ったが、
何より俺たちは、お前の性格を把握していたからなぁ~#!」。
恵美が涙ながら、「だって寂しかったんだもん!バンドやってる浩二は、
カッコ良かったけど..バンドの話しばっかりで、
何処にも連れてってくれなくなるし。何時も行くって言えばスタジオだし。
少し聡君に私が揺らいだら、振り向いてくれると思ったの!
でも聡君と付き合ってみると、面白い所いっぱい知っていたし。
いろんな所、連れて行ってくれたし。友達も明るかったし。
私の知らない、美味しい店たくさん知っていたし。私の話聞いてくれたし..」。
聡、「じゃーなんで、俺だけじゃなかったんだ#!
ハッキリ浩二に言うのが、怖かったとでも今更言うのか#!
何度も浩二と俺が、互いお前に 『ハッキリしろよ!怒らねーから..。俺達お互いに!
どちらかにハッキリすれば、俺たちもめ事無しで行くから..』。つったろ#!」。
恵美、「浩二..小学校の時から、『結婚するなら恵美だからな!』って言っていた。
小学校から中学に上がっても、私と浩二..何処行くにも一緒だった。
でもバンドやり始めてから一年くらい経った、中三の夏休みくらいから急に、
周りから騒がれ始めて、色んな女子生徒から、電話かかって来る様になって、
色んな噂も飛び交ったの。スタジオでガンガンやっている時、
よくスタジオに遊びに来ていた、二十歳くらいの女と仲良くなって、
浩二..私の事なんてもう、眼中に無かった。
歳の割には大人びて見えた浩二は、周りの噂通り、『その女と寝た』と、
浩二に告げられた。私とは、まともなキスもしてなかったのに..。
でも浩二..その女に捨てられて、周りからは浩二の、陰口叩かれたけど我慢していた!
捨てられてから..急に私に優しくなって、ある日、浩二の部屋でめちゃくちゃにされて、
された後なにげに、『やっぱ大人の体はいいよなぁ~』って。悔しかった!
同時に信じられなくなっていた男を。聡君と付き合うと、聡君も、浩二と同じ様に、
人気が上がるに連れて、色んな噂が学校中流れた。中三の…、そうあの時の浩二と、
同じ繰り返ししたくなくて。でも私バカだね..違う意味で同じ繰り返ししていた。
でも浩二と聡君は違っていた。それは私を裏切らなかった。
あの中三の浩二の時き寄りも、聡君を支持する女が多くても、
聡君、私を何時も横に連れてくれていた。
土曜の夜、ライブガンガンやった次の日でも、午後から夜遅くまで遊んでくれた。
でも私は臆病だった..信じ切れなかった。私の臆病な気持ちが、どっち付かずにしていた。
聡君、人気が有るから、言い寄る女はいくらでも居る。だからいつか私を捨てる。
それに、個人的人気が有るのだから、クラウ解散しても、他のバンドが目を付けるから、
聡君、自分の人気は保てる。でも..浩二ならバンドを解散したら、普通の人と同じになる。
バンドの様子見ていたら、解散近いと感じていたし。
私まだ浩二の結婚の約束..信じていたの。ばかだね!あんなにひどい事されたのにね..」。
聡は黙って聞いていたが、穏やかな口調で呟いた。
聡、「お前遅いよ!そんな大事な事、今..言うなよ..それに言う相手、間違えているぜ..」。
恵美は電話の向こうで、泣きじゃくっていた。
聡は静かに耳から、携帯を放して行った。
取り返しが付かない事を、今更押し返している、恵美の会話がもどかしくて堪らない聡。
耳から放した携帯からは、恵美のすすり泣く声だけが、小さく聞こえていたのだった。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




