第七章ファーストラブ3
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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香菜は視線を逸らす。
聡は人差し指で、涙を拭って上げた。
「泣きたいのは、俺も同じさ..」。
そう囁くと、香菜は小さく頷いた。
さりげなく聡は、香菜の手を引いた。 この二人は歩き出す。
目的も言わぬまま、ただ。
二人は代々木公園を後に、公園の道路沿いの歩道に出ると、
地下鉄千代田線、代々木公園駅前に出た。
そこから渋谷方面に向かうと、香菜はチラっと、聡の顔を見た。
聡は黙ったまま、香菜の手を引いていた。
次第に派手な様相の十代が騒ぐ風景へと、街並みが変化して行く。
香菜は俯き加減になる。
聡はその香菜の様子を見つめると、繋いでいた手を少し強く握った。
香菜はその時、聡に顔を向けた。
聡は微笑んで、「心配するなよ..」。
香菜は強い安心感と同時に、愛と言う物が何かを実感した。
憧れが今、現実に変わった瞬間を覚えたので有った。
訳もなく集まる若者の街、渋谷。
決して儲ける訳でもなく、大金を落とすでも無い十代が戯れる街。
メディアはこの街を煽り立てる。
何が魅力か、ひたすら同じ様相の、店が建ち並ぶ建物。
十代はここに、身を委ねる不思議な街。
夜になれば麻薬、売春、ぽん引き、酔っ払い、けんか、警察、やくざ。
スクランブル交差点は、クラクションのオンパレード。
臭く汚いガード下。一歩入れば古びた飲み屋が建ち並ぶこの街は、
本音とたてまえがはっきりし 過ぎた、東京を表す原点だと言える。
金と欲望が見え隠れする狭間に、飾りつけた張りぼて。
まるで街中が、仮幻想の塊な街。
それが都会..。
二人は賑わう街中を抜け、渋谷駅にたどり着くと、聡は香菜に「疲れた?」。
そう尋ねると、香菜は聡の顔を見た。
心の中でだけで呟く..。
(大丈夫、何時もっと歩くから)
聡が微笑んだ。
そして聡がまた香菜の手を引いて、歩道橋の階段を上がると、渋谷の交番方面に向かう。
長い階段を下りて、少し上り坂になる。
そこは元東邦生命ビル。
この二人は、何かに導かれんとするか、自然とここに向かうのであった。
短い歩道橋を渡ると、そこは、この二人を癒す場所だった。
すでに沈みかけていた夕日が、今まさにビルの谷間に落ちて行く。
二人は、ここに佇み、その光景を見届けていた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




