第二章 奇跡
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html
「世田谷救急隊から...救急本部...」。
「こちら救急本部...世田谷救急隊どうぞ...」。
「患者は二名..二名とも男...二名とも年齢十七...学校の屋上でけんかをしている最中...
落雷に合った模様...」。
「本部了解....状態はどうだ...?」。
「一人はCPA..(心拍停止状態)CPR実施中(心臓マッサージ)..」。
「本部了解..」。
「もう一人は意識無し..呼吸有り..血圧五十の二十..」。
「本部了解..」。
「病院OK取れましたので、搬送します..以上世田谷救急..」。
「本部了解...」。
病院に、救急車が到着すると、直さま二人は、集中治療室に運び込まれた。
そして救急担当の医師が、看護婦に適切な指示を与えている。
病院には有りがちな光景でも、真、小百合にとっては、うろたえるしかなすすべは、無かった。
浩次は心臓停止状態に。聡は息は有るが、極めて危険な状態に置かれていた。
小百合、真は、集中治療室の外でただ呆然と、立ちすくむしか手立ては無かった。
学校からの連絡で、浩次、聡、の母親、担任の教師らが駆けつける。
事情を、真、小百合に尋ねるが、
気が動転している彼らには、聞く耳も持つ余裕など無った。
集中治療室から、一人の医師が出てきた。
そして両親、担任に、事情を説明し始めた。
「浩次君のご両親は..?」。そう尋ねると、事態をまだよく把握していない浩次の母親が、
顔を強張らせながら、担当の医師に近づく。そして医師は、
「浩次君は担当の医師が、全力を尽くして
治療に当っていますが、極めて危険な状態に置かれています」。
浩次の母親はまだ事態を、把握できぬまま挙動を荒立て、
「い..いったい、どうなってしまったのですか」。
その言葉に医師は重苦しい面持ちで、その危険な状態を母親に告げる。
「今、浩二君は、心臓停止状態に有ります。担当の医師が、心臓マッサージを行いつつ
心臓に電気でショックを与えて.....」。
医師がその言葉を、口にした瞬間。浩次の母親は、
病院の待合椅子に座り込み、挙動を荒立てたまま、
両手を顔に押し付けて、ただ泣きじゃくるだけで有った。
真、小百合、聡の母親が、同時に聡の容体を担当の医師に尋ねる。
「聡君の容体は...」。
担当の医師が、右手を頬に当てながらながら、
「聡君は、息は有りますが..、意識は有りません..。ただ、
落雷した時..右足のシューズが脱げていたと考えられす。
搬送されて来た時に...、右足だけシューズを履いていませんでした。
つまり落雷が有った時、電気は心臓を通らず、履いてい無かった右足から、
電気が抜けたものと考えられます。従って、手から上下つまり..
脳に到達しながら、右上半身を通り..右足を経由して..
伝導率が良い雨、つまり水を伝わって抜けたものと考えられます。
ですが意識が戻ると言う保証は、確実には有りません..
最悪の場合を想定いたしますと..このまま意識が戻ら
ないと言う、可能性も覚悟の上、ご承知願いたいと思います...」。
そして..担当の医師は頭を深々と下げ、重苦しい面持ちのまま、集中治療室に戻って行った。
真、小百合、担任、母親二人は、返す言葉を失い、
ただその姿をじっと、見つめるに過ぎなかった。
そして..十日後。
「..なんだ..どうなったんだ..俺は...」聡は闇の中から、ざわめく声を耳にする。
(死んじゃったの...)
(もうコイツだめだろ~..かれこれもう十日も、こんな状態だぜ..)。
(恵美には悪いけど私..聡君に..手紙で、ずーっと、告ってたのに..)。
(香典とか出すのかよ、今月、金ねーんだよ、息吹き返してくれよー..)。
(聡が死ねば恵美は俺の..)。
(受け持ちの生徒が死ぬなんて、初めての事だから..関係者、親御さんに、
どう対処して行けば..、鈴木君のクラス担当の山下先生、頭抱えて悩んでたしな)。
(浩二は死んで..こいつは植物人間かよ..もうバンド解散するか、メンバー探すか..)。
(聡君..聡君..死じゃだめ..)。
(俺、聡に金返してね~や、まっいっか、息吹返す様子..無さそうだし...)。
聡はその時、大きく息を吸った。
そして、目をゆっくりと..開けて行くと、
同じクラスの友人、両親、担任、の顔が真上から見下ろし、
驚愕な眼差しを、目の当たりにした。
そして、母親が、「聡、聡」と、聡の右手を両手で持ち、
泣きながら、聡の胸に顔を埋めて行った。
「生き帰ったんだぁ~」彼女の白畑恵美は、聡の左手を、両手で持ちながら、はしゃいでいた。
みなこの状況下に、抱き合い喜び合っていた。
まだ事態を把握していない聡が、ただ朦朧としていた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。