第六章、恋の瞬間7
避雷針から..ファーストラブ オリジナル
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聡も椅子に座ると、トレイに置かれていた、シェイクとハンバーガーを分けた。
そして香菜に、「食べなよ!」。
そう言われると香菜はストローを、シェイクの容器にさして少し飲んだ。
香菜は聡を見つめていた。
聡もジンジャーエールの容器にストローを刺して、
少し飲みハンバーガーの紙包みを外して、ハンバーガーをほおばる。
聡が香菜に、「学校行っているの?」。その問い掛けに少し頷く。
「俺、今日サボりでさー、雨の日は必ず決まって」。
香菜に答えると香菜は少し微笑んだ。 その時、香菜は聡の顔を見つめると、
聡が、「へへ、同じか..」、香菜は、満面な笑みを浮かべた。
聡が、「俺、パンクバンドのボーカル、やってたんだけどさー、結構売れてたんだぜ!
インディーズのオリコンチャートだって、常に上位でさー。だけど校舎の屋上で、けんかして、
仲間一人失って、俺があん時、素直に謝ってりゃーこんな事に」。すると俯き加減に..。
その時聡の脳裏に、(あなたの、せいじゃないよ...神様が運命を与え、
あなたには試練を与えたのだと思う、きっと生まれ変わって来たら、
あなたはその人に尽くし、その人は尽くされた喜びを、得てゆく事を、
神様は与えて行くのだと思うよ)。 ふと、聡は香菜の顔を見つめた。
そして一言だけ、「有り難う」。
二人は心の中に、互いに芽生える何かを覚えたのであった。
聡は思いに更けて行った。
騒がしいこの場の声が、次第に聡の脳裏から消えて行く、あの時の屋上を思い出していた。
「気にいらね~んだったら、止めてやるよ#!」
あの土砂降りの光景が、目に浮かんでいた。
浩次を殴りつけた瞬間、闇に襲われた光景を。
聡はハンバーガーを持ちながら、はっ!とする。
周りの声がフェードイン、されていった。
その姿を横でそっと見つめていた香菜。
何気に聡は香菜に顔を向けると、心配そうな面持ち。聡は咄嗟に、覚束ない笑顔を見せた。
聡は窓の外を見つめた。
香菜はただ黙って、そんな聡を横で見つめていた。
ざわめく店内。若い子達がはしゃぐ中、二人は穏やかな様相をかもし出していた。
香菜はそっと顔をハンバーガーに向けると、包みをはがし食べ始める。
聡は、ハンバーガーを持ったまま、外を眺め続けていたのだった。
香菜はハンバーガーを両手で持ち、一口食べるとまた、聡の方に顔を向ける。
聡も外を見つめながら、片手でハンバーガーを持ち口にほお張る。
聡を見つめていた香菜は俯き加減に..。
聡は急に脳裏に言葉が走った!
(私、人にうまく自分の気持ちを伝えるの苦手なの。
でもあなたは、私が求めていた物を持っている人)
さりげなく聡は窓から目を離し、そっと香菜に顔を向けた。
すると俯いていた香菜の瞼から、涙が零れ出していた。
聡は咄嗟にテーブルに置いてあった、口を拭くペーパーで涙を拭って上げながら、
「泣くなよ、心配すんなって、俺達さー、これが終わりじゃない、始まりだから」
聡は焦りながらペーパをたたんで、また香菜の涙を拭った。
止め処なくあふれ出る香菜の涙は、ペーパーでは追いつかない。
聡は自分のセーターの袖で、涙を拭ってあげた。
香菜はしきりに鼻をすすると、言葉にならない声で「ごめんなさい、ごめんなさい」。
そう呟いていた..。
聡は鼻をすすりながら、俯いている香菜の両手を持ち、
「安心しろよ!寂しいのは俺も同じさ!助け合って行こうぜ、
きっと俺たち神様がそう言う風に仕向けたんだよ!な解るだろ..な!だから泣くなよ..」。
香菜は俯きながら頷いた。
その時大粒の涙が、香菜の膝に落ちた。
この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。




