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第四章、やるせない日2

避雷針から..ファーストラブ オリジナル

http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1498311.html


TV台代わりにしていた、小物入れの下の引き出しから財布を取り出す。チェーン付き財布。


それをズボンの後ろのポケットに押し込むと、自分の部屋の大鏡に、自分の顔を映す。

 

鏡の前に置かれていた、固めのワックスを手に取り、フタを開ける。それを手に取り、頭に付けた。

 

髪を両手で立たせたら、決まってポーズを取る。目を細めて中指立てて。

 

カッコウは完璧!鏡の前で気合意を入れた。


「よ~し」。


ラップの鼻歌交じりに、家の階段を下りる聡は、玄関でスニーカーを履いて自宅を後にする。

 

だが一歩外に出た聡は、自分の見渡せる範囲内から声が脳裏に走る。


だが内容は、たわいも無い話題。


(お母さん、卒業式に着てく服、買いに行きたいの)


(いくら要るのよー#)。


(近藤さんの奥さん、夜十一時半頃になると、派手な服着て出かけるの知ってる?)。


(派手に見せているけどお金無いのでしょ、飲み屋にでも働きに…)。


(申しわけない..一昨日は、親戚の葬式で..)。


通りを歩いている、さまざまな人達から聞こえてくる内容。


母と娘が歩きながらの会話。

 

立ち止まり、携帯で話をするサラリーマン。


主婦らしき人達の会話。


みな小声で話す内容が、聡には通常のしゃべり声として聞こえてくる。

 

俯き加減で京王線の千歳烏山駅に向かうと、何気に切符を買おうとチェーン付きの、


黒い財布を後ろのポケットから取り出す。

 

普段の午後三時半、人もまばらな駅構内。


すると年老いた、女性の声が脳裏に走る。


(新宿までは、いくらだったかねー)。


ふと聡は、その脳裏に走る言葉に振り向く。

 

そこに年老いた、八十は出ているだろう、少し腰が曲がり気味のお婆さんを目にする..。

 

お金を自動切符販売機に入れてみた所、行き先の運賃が解らなくて、


指を自動切符販売機の点灯しているボタンの手前で、戸惑っている様子を見た聡は、


反射的か、自分の行き先と同じ運賃のボタンを押して上げた。

 

老婆はその聡の行動に、首を小刻みに聡の方に向けた。

 

その時聡は、「新宿ならこれで行けるよ!」。


そう答えると、お婆さんは、「あー!そうだったかね?」。


聡は、「ああ、間違いないよ」。


自分も新宿までの切符を購入して、小走りに自動改札機に向かい、


切符を入れ、ホームに向かって行ったのだった。


お婆さんは、ただ聡のその姿を、その場で佇みながら、見つめていたのだった。


電車を待っている間にも、さまざまな声が脳裏に走る。

 

都合よく、電車がホームに入って来た。


聡は電車が止まり、ドアが開いたと同時に、吸い込まれる様に、電車に乗った。

 

電車の中は座席が疎らに開いていたが、聡はドア付近のつり革に手を掛けた。

 

電車の中で今、自分の心理状態に戸惑う聡は、不安を抱くのであった。

この物語はフィクションであり、登場する人物、建物などは実際には存在しません。

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