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夕木索理は女の子になりたい!  作者: 朔良 海雪
一章

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22/24

多忙系才色兼備

 真宵は一日の大半を学校で過ごしている。それも、日によってまちまちの団体で活動しているものだから、校内で彼女を直接捕まえるのは至難の業だ。


 そんなわけで、真宵の予定を取り付けるにはチャットアプリが一番早い。日々忙しくしている彼女の返信にスピード感はないものの、置き手紙のように利用することはできる。結果としてそれが一番早い。


 藍と詳しい予定をすり合わせるためにも、索理は三人用のグループチャットに文字を打ち込んでいく。


『今度の土曜、午後から藍とカラオケに行くんだけど、真宵も一緒にどうかな? 確か次の土曜は部活が休みだって言ってたよね。歌いたい気持ちは半分くらいで、期間限定のスイーツが本命のお目当てなんだけど。十三時から街で待ち合わせる予定。終わる時間は未定だけど、真宵に合わせる』


 真宵とのやり取りのコツは、とにかく合理性だ。


 内容に言及する前に相手の時間を押さえようとする提案は、現代ではあまり好まれないらしい。お金にすら匹敵する時間という概念を、各々が何をするのに消費するかは個人の自由なわけで、誘われる側には予定表を確認する前に、何用かと尋ねる権利がある。ただでさえやることが詰まっている真宵に対し、索理がそんな無礼をはたらくことはない。


 そもそも、スマホを見る機会そのものが少ない彼女との予定を円滑に取り決めるには、真宵側からの疑問の数が最低限で済むことが望ましい。決まっていることや必要事項は思いつく限り、明確詳細を意識して記述するべきだ。


 六行にもなってしまった文章をまとめて送信するが、すぐに既読はつかない。真宵の本日の予定が部活ならば、完全下校時刻となる十九時までは返信は望めない。生徒会活動ならば比較的早い反応が見込めるが、真宵は前に「夏休み前にいろいろと片付けておく仕事がある」と言っていたので、あまり期待を持ちすぎるのも悪いだろう。


 ひとまずは真宵の返信待ちだ。それまでに夕食を済ませてしまうとしよう。




 夕食を終え、未有が生成した地雷索理をモデルにしてメイクの練習をしていたら、画面の中の自分の顔に通知が重なった。


『お誘いありがとう。ぜひ一緒に行かせてもらいたい。確認なのだが、索理は地雷メイクで来るのか?』

「文面だと言及を避ける横槍が入れられない……!」


 歯に衣着せぬ物言いは実直な真宵らしいのだが、いかんせん今はその性格由来の言葉が索理の首をぐいぐいと絞めている。もしくは、いつものイタズラ心が飛び出したのかもしれない。


 というか、真宵の地雷メイク発言は、未有が既に索理と話をつけていなければ突拍子もないワードになっていたはずだ。既に把握しているのか、それともどこからか察知したのか。


 おまけにこの会話は藍にまで筒抜けだ。既読をつけないように注意を払いつつ、索理はブラシを持っていた手を止めて頭を回す。


「何のこと? って返すのは、一部始終の会話が送られてくると、時間稼ぎ以上の意味がないからなぁ……ここはあえて平然とスルーするべきか」


 求められるのは落ち着いた綱渡りと、尻尾を掴むチャンスを与えないこと。真宵側からしても、一方的に何度も地雷メイクについて言及するのは不自然になる。ここをかわせばある程度は安全域だ。


 意を決してトーク画面を開き、さっきよりもフリック速度が落ちた指で、索理は返信を打ち込んでいく。


『普段通りの感じで行くよ。最近新しく可愛い服を買ったから、それを着ていくつも』


 手が止まる。


「うーん……服をもらったことも知られてるんだよね。わざわざ新しい服とか言わない方がいいか」


 一度全体を削除して、頭の中で修正した無難な文章に直していく。


『いつもと同じメイクで行くよ。服装は……Tシャツにオーバーサイズめの上着を羽織っていこうかな。下はスキニーか、気分でスカートになってるかも』


 送信。


 これで真宵が会話の流れを引き戻そうとしてくれば、不自然さを突いてのカウンターが可能だ。


 案の定、真宵はこれ以上地雷メイクについて触れることはなく、承諾の旨を返信してきた。


 追って、今まで一つだけだった既読が増え、藍が仕上げをするように、デフォルメされたマーモットのスタンプを一つ。


 これで、参加者全員の都合がついた。


「ふぅ……」


 藍と真宵には未有の参加を伝えていない。当日、互いに避けられない状況を作り出してご一緒してもらうつもりだ。


 全員を直接誘った。その状況を作り出した犯人が索理であるという事実は、すぐに藍と真宵の頭に浮かぶだろう。二人から集中的なバッシングを受けることは必至だ。


(でも、それくらいの劇薬でも放り込まないと、あの二人はずっとうるさいだろうから)


 女の子というものはグループ意識が強い。同じグループ内では饒舌な人物でも、他のグループに属する人間と相対すると途端に押し黙ってしまう。藍や真宵は比較的オープンな方だが、自分からあれだけ拒絶の意志を示している未有とは、よっぽどの機会でもない限り二度と関わらないだろう。


 そのよっぽどの機会こそが、今回なのである。


 荒療治であることは承知の上。正直なところ、全てを画策した索理にも、三人の化学反応が何を起こすかは分からない。


(……でも、黒河さんに地雷メイクを教えてもらうためだもん。絶対に藍と真宵を折れさせてやる)


 索理はチャットアプリを閉じ、再び画面いっぱいに地雷索理を表示した。

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