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第六話 決闘

第六話 決闘





あの日から数日後。

私は珍しく、自宅にノエルを招待していた。


そもそもうちに来たいなどという友達が

私にはいなかった。


だがノエルという少女は

「リズ様がどんな生活をしているのかみてみたいです!」

などというので仕方なく招待することにしたのだった。


私は人をもてなしたことなどない。

全てはヨハンに任せた。


今日は晴天で、薔薇の咲く庭でお茶会などはどうだと言われたので

そこに三段のティースタンドが来る予定だ。




こうして、ノエルは我が家にやってきた。

当たりをキョロキョロしながらも、私を見つけると

ノエルはばたばたと駆け寄ってきた。


「リズ様、こんにちわ」

「ああ」


彼女は挨拶をするとずっと立っていた。

さっさと座ればいいのにと思いつつ私はヨハンに

目線で紅茶を催促した。


ヨハンは黙って紅茶を入れつつノエルに言った。


「すみません、ノエル様、リズ様は作法にとらわれないので。

 どうかそのまま、着席なさってください」


そういうと私の隣に紅茶を置き、そのままノエルの側に行くと

そっと身振り手振りでそれとなく私の正面の席にノエルを導き

椅子を引くと、ノエルはぎこちなくそこに座った。


「……一体どうした。そんなにあたりを見回して」

「いや……わかってはいたつもりなんですが……」


当たりをまだキョロキョロと見回すノエル。


「リズ様、本当にお金もちですよね」


……まぁ私もこの体に移り変わってしばらく一番落ち着かなかったのが

この豪華な家であった。その感覚はわからないでもない。

だが、私の中に一つの疑問があった。


「ノエルの家は違うのか?」


すると何故か彼女は照れながら言う。


「ええ、私は特殊推薦枠での入学なので……。

 家は普通の庶民の出です。なので学校でもあまり友達がいなくて。

 だからこうして友達の家に行けるのはとても嬉しいです」


友達?

と、言おうとしたがギリギリそれを言うのは耐えた。

流石に好意を持ってくれている相手を傷つけるのは違うことぐらいは

無頓着な私にでも理解できる。


「ノエル」

私は言った。

「は、はい! なんですか?!」

「リズ様はやめろ、リズでいい」

「はい!……えぇ?!」


まったく、自分で言っていても気恥ずかしい。

ヨハンがニコニコしているのに私はイラッとしてティースタンドの

上にあるケーキをそのまま手で掴んで口に放り込んだ。


「り、リズ様?!」

「ん、どうした?」


急にノエルが慌ててるの見てヨハンが代わりに答えた。


「リズ様はこういう人なので。なのでノエル様も気遣いは必要ありませんよ」


まったく……。

人間関係というのは煩わしいことこの上ない。

ノエルはそっと、下段のサンドイッチを一つ取ると

ひとくち食べて飲み込む。


「り、リズはそういえば今日、知りたいことがあるって言ってたよね?

 なんのこと?」


そう、これが私がこんな面倒なことにわざわざ付き合っている理由。


「あの第一王子とやらが言っていた『場』についてだ」

「あぁ、それは決闘のことですよ」


その言葉の響きに私はここ数年ぶりの胸の高鳴りを感じた。

この世界はそういったものとは全く無縁の世界だと半分諦めていたからだ。


「その決闘とはなんだ?」

「う……実は私もそういう物があるとしか知りません。

 なにぶん私も入学したばかりなので詳しいことは……」


私はゴクゴクと紅茶を飲み干すと、ヨハンは黙って再び紅茶を注ぎながら言った。


「王立学院には100年以上の歴史がありますが

 その中に、貴族同士の決闘の制度が、形骸化しつつはありますが存在します」


ヨハンは私に目を合わせずに言う。


「お前、私に隠してたな?」

「ええ、明らかにリズ様はこの手の話題に過剰に反応するとわかっておりましたので」


そうと分かれば決闘だ。

私の心は踊った。


「しかしリズ様には無理でございます」

「なんだと?」

「決闘は武器はもちろん、魔法もありでございます。

 素手での殴り合いではございません。お諦めください」

「諦めるかどうかは私が決める」

「では勝算があると?」

「……ない」

「その冷静さこそリズ様にございますな」


いいように丸め込まれてしまった気がする。

ただ一つ気になることがあった。


「ノエル、あの第一王子とやらは強いと言ってたが本当に強いのか?」

「それはあまり詳しくない私でも知ってますね。

 立場柄、決闘を受けることが多い方ですが、全戦全勝、つまり無敗です」

「やはり、魔法を使うのか?」

「ええ、あのお方は身体能力も優れていますが卓越した魔法使いです。

 まさに立場に甘えること無く、自己研鑽も怠らない

 まるで完璧を絵に書いたようなお方ですわ」


なるほど、奴が自信満々だったのもただの虚勢ではなく

努力と実績から裏打ちされたもの。


私は久しぶりに心が高ぶっていたが

一方で魔法という大きな壁をどう超えればいいのか。

その事に頭を悩ませていた。

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