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第三話 魔法の才能

あれから10年の月日が流れた。

私は自分のあり方を変えなかった。


拳は空を切るようになった。

まだまだ全盛期からは程遠いが十分に戦える。


しかし一方でやりがいを感じなかったのも事実だった。

なにせ誰も周りで同じ武を歩むものがいなかったからだ。

まして、この世界の武術は私の知るものと形が大きく異なっていたのだ。




初等教育時代、ヨハンの予見は的中した。

私も馬鹿ではない、だがそれ以外道を知らないだけ。


「貴方って、挨拶の仕方も、お辞儀の仕方も知らないわけ?」


どうやらこの世界では年端のいかない子供まで難しい言葉で

無駄な言葉を交わすのが一般的らしい。

如何にも可愛らしい外見と服装とは裏腹に

腹の中が透けて見える、傲慢さ。

さぞ甘やかされて育ったのだろう。


「挨拶してほしければ、力ずくで屈服させてみればいい」


そういい、私は彼女の背後にいる人物たちを観察した。


「まぁ、なんて野蛮なんでしょう?!

 ふふ、いいですわ、貴方がそういう態度ならば

 こちらもそのやり方に習いましょうかしら?」



そういうと後ろに3人ほど、男子、女子が前に出てきた。

いずれも身なりのいい服装をしている。

……全員素人だ。



所詮子供の喧嘩である。

若干大柄の男子が最初に自信満々に突っ込んでくる。


なんの意味もない突進。


私は体を深く沈ませると、その突進する体の鳩尾に肘打ちをブチ込んだ。

ぎゃあぎゃあと喚き散らしていた周囲の有象無象たちがざわめき始めた。


当然だ、一番ガタイのいい、男子が一撃で身動きが取れず

涙を流し、よだれを垂らしながら苦痛を訴え、助けを求めているのだから。


あとは簡単だった。戦意を失ったの残りの連中に私は躊躇しなかった。

殴り、蹴り、全員を無力化するだけの作業だった。


ほぼ全員が泣き叫んでいた。

うるさいものだ。


あえて、挑発してきた女子を私は残していた。

すると彼女は何やら棒状のものを取り出して私に向けた。

不敵に笑う相手を見て私は咄嗟に良くない何かを感じた。


いいようのない不安から咄嗟に体を捌くと

元いた場所が突然爆発した。


どういうことだ?

迷いながらも私の体はその女子に向かって疾走していた。


棒状の物体をまず殴りつけて叩き落した。

そして顔面に一発、更に続く流れで鳩尾に肘打ちをお見舞いした。


彼女は苦しそうに悶えながら地面に沈んでいった。






その日のうちに私はヨハンに呼び出された。


「リズ様、何故そのようなことを?」

「挑発してきた、だから乗ってやっただけのことだ」

「いけません、リズ様」

「何故だ?」

「弱いものいじめは強者の格を落とします」

「……なるほど、それは一理ある」


ヨハンの言うことはたしかに正しいとは思う。

だがそれとこれとは別だ。




そんな初等教育時代を送った私はすっかり悪名が轟いた。

ローゼンタール家に狂った女が現れたと言われた。


どうでも良かった。




しかし、この世界には私の理解が及ばない物があった。

それが魔法という存在。


初めて見たとき、私は理解できなかった。

ただの子供が、なにもないところで爆発を発生させた。




「リズ様、魔法の練習をいたしますか?」

「確かにあれは強力だ、どうやって練習すれば良い?」


そういうとヨハンは水晶玉のような物を取り出した。


「手を当ててみてください」

「……こうか?」


私は手を当ててみる。

ひんやりとした感覚。


ヨハンはその様子をじっくり眺めると

神妙な面持ちで言った。


「リズ様!」

「なんだ、急に」




「なんとリズ様は……」

「もったいぶらずに早くいえ」




「まったく魔法の才能がございません!」

「思わせぶりな態度するな!」



私は再び拳を振り始めた。


「リズ様、それでも貴方は拳を振るのをやめない、何故ですか?」


「逆に聞く、何故辞める必要がある」


「リズ様は女性です、そもそも体格差で圧倒的に不利でございます。

 おまけに魔法も使えない。

 女性でも魔法使いであれば前線にでる方もいますが……」


「……だからどうした」


「今からでも、作法全般を修めてはいかがですか?」


「ヨハン」

「はい」


彼はあくまでも落ち着いた素振りでそこに立っていた。


「今更それを私が出来ると思うか?」

「思いません。ですが、リズ様。

 あまりにこれは茨の道というものでございます」


「関係ない」


「リズ様」


「なんだ」


「それは実にエレガントですな」


「そうか」


私が黙って拳を振るのをヨハンはずっと眺めていた。


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