27/27
エピローグ
私は車椅子に乗せられていた。
その車椅子をゆっくりと押すノエル。
石畳を越えるたび、車輪が小さく軋む。
ヨハンの提案でノエルを
侍女として雇い入れる事になったためだ。
ノエルは優しい子だ。
いつも私の車椅子を押す時、ゆっくりと
衝撃を与えないように推し進めてくれる。
だがせっかちな私はつい、自分の手で車輪を回してしまう。
あの試合の日からだいぶ年月が経った。
私は治療を受けたがダメージの蓄積が多すぎて
まともに動けるようになるかは怪しいらしい。
下半身は全く感覚がない。
左腕も時たま痺れることがある。
もとより魔法が使えなかった私だが
とうとう武術すら使えなくなってしまったということだ。
だが私は誰も恨んではいない。
最後まで拳を振り抜く事ができた。
きっと私の人生は幸せだったのだろう。
多くの人間の人生と引き換えにした
前世での退屈な試合と違い、私は命を燃え上がらせることが出来た。
ふとした時、私は今の人生を振り返りたくなる事がある。
だが、その時私は思う。悪くない、と。
――今はまだ。




