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第二十二話 葛藤

翌日も、その翌日も、あの男は私の病室を訪れた。


立場上、ヨハンを始め、ノエルやセラもどうしても畏まってしまう。

正直鬱陶しいのでやめてほしかったが

私は治療を受けている立場だった。


とやかくいうことは出来ない。


医者が言うには、外傷は治った。

あとは痛みが引けばいつでも退院してもいいとのことだった。

魔法というのは凄まじいものだ。

あれほどの外傷を負ってまた立ち上がることが出来るのだから。


今日もあの男は私の隣りに座っていた。


「何故毎日来る」


私は疑問をそのまま口にする。


「責任があるからな」

「責任? あんたに責任はないだろ」


再び沈黙する。


なにがしたいんだ。

ただ黙って、私を見つめている。


しかしその目に優しさはない。

まるで鉄を眺めるかのような冷たい眼差し。

今にも私を殺しに来ても不思議ではないほど冷酷な目をしている。




……。


私は気がつけば、私自身が倒した男のことを振り返ってきた。

あの男も冷たい表情を浮かべていた。

だが、あれは、人との付き合いを知らない目。


同類の顔だったのだ。


だがこの眼の前にいる男は違う。

明確な敵意。その事をこの男は理解しているのだろうか。


私はつい口に出してそれを言った。



「私が憎いのか?」

「憎い?」


そういう彼の口調は悪寒が走るような、

それでいて、語気の強い声。


「私は王族だ、その様な個人的感情では動かん」


嘘だ。

彼は感情を殺している。

努めて平静を装っているがわかる。


強烈なまでの自制心が、彼を暴挙に出るのを抑えている。

その胆力は勝算に値する。

伊達に次期国王候補ではないということか。


私は安易な言葉を投げた。


「殺したいほど憎いか? そんな相手を治癒しなければならない。

 いっそのこと思っている通りにしてみたらどうだ」


彼の冷たい表情は熱を帯びた。

が、回答は落ち着いたものだった。


「彼との約束は、そんなに安いものではない。

 お前も、彼も、そんな事は望んでいない。誰もそんな事は望むまい」


あくまでもその表情は崩れなかったが

感情が動いたのを私は見逃さなかった。




だが、その王子の言葉は私自身をも刺した。

そう、私は誰も幸せにならない選択をしたのだ。

それはもう、ヨハンにもあらかじめ言われていたこと。


だが、仮に決闘を受けなかった自分を私は許せるか?


許せない。私は私にウソを付くことはできない。


だが私は納得した。セオは……どうだろうな。

そしてこの男は納得していない。


だが私の面倒を見ている。

それだけ彼らの仲は重かったのだろう。



なるほど、王子はこういいたいのだろう。

お前は彼にした行いを噛み締めろと。


しかし彼は王子だ。声を荒らげたり

暴力に訴えたりはしない。

ただただ、静かに私を見続ける。

それが彼にとって私に対する罰だと言いたいのだろう。




当たり前だが王子といえど人の子だな。

私は乾いた笑いを浮かべた。


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