表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

第十七話 演習場の告白

私は今、学園にある、演習場と呼ばれる場所に来ていた。

そこは兵器の練習用である木造の武具が立ち並び

木製人形が多数並んでいる。


しかしそれらの多くは埃を被り、使われていないことを示していた。




セラが言うに、昔は活気があったが

平穏な日常が続いた現在では使用するものが減ったこと。

そもそも自宅で鍛錬する者が多いということで

今では管理そのものが行われていないとのことだった。


だが私はその景色に多くの弟子たちが修練に励む景色を見た。

懐かしくもあり、消えてしまったもの。

自分でも珍しく感傷に浸っていた。


そんな時だった。


僅かに演習場の外れの方で人の気配がした。

私はそちらに視線を向けると、そこには杖を持ったセオがいた。


私は黙って彼を眺めていた。

とても良い集中だ、私のことにも気がついていない。


彼の杖の先端の光が強くなった。

その瞬間、中空には10個の魔法陣が浮かび上がる。


そこから突如として岩が飛び出し、的に向かって弾丸のように射出された。

スピード、破壊力、どれをとっても脅威的であった。


彼は少しだけ額に汗をにじませていた。


私はそれを見て拍手を送った。


「なんだ、見ていたのかい。声をかけてくれればいいものを」

「修練の邪魔をするほど無粋じゃない」


彼の冷たい表情が緩む。


「実に君らしい」


そういうと彼は休憩用の椅子に座った。

私はそんな彼の前にたった。


日は沈もうとする時間だった。

私が遮る太陽の影が彼を覆った。


「お前は、修行するのは嫌いなのか?」


私はつい疑問に思ったことを口にした。

彼は少し悩み、困ったように答えた。


「昔は大嫌いだったよ。好きでもないのにやらされたからね。

 だけど、妹ができて、母が亡くなって、後ろ盾が無くなった。

 やるしかなかった」


「なるほど、お前にとって戦いとは責務か」


「そうかもしれない、だけど君と話して思ったことがある」


セオは私をまっすぐ見つめて言う。


「僕は維持するために戦ってるのかと思っていた。

 だが今は違うと思ってる」


「ほう、何を思った?」


「勝ち取る、掴む為に戦っている」


「なるほど、実にいい結論だ」


そう、戦いの先には得るものがある。

精神修養だとか、道を極めるだとか

そういった能書きは私からしてみれば唾棄するべきものだった。

その点この男の結論は実に好ましい。


「リズ」


短く彼が私の名を呼び、彼は立ち上がった。

私より背が高い彼は見下ろす形になった。


彼はまっすぐ私を見て言った。


「私と婚約してくれないか?」


……。

なるほど、彼にとっての勝ち取るとはそういうことか。

私は静かに瞬きしたあとまっすぐ見つめて答えた。


「断る」

「何故だ」


彼はおそらくこの回答を予期していたのだろう。

疑問は疑問ではなく、回答を聞きたいという気持ちが伝わる。


「お前のそれは情愛ではない、好奇心と意思の共鳴だ」

「それは人を想うには当たらないと?」

「少なくとも私はそう考える」


彼は目を閉じてため息をついた。


そして目を見開くと、私の両肩をきつく掴んでいった。


「ならば私は君との婚約を賭けて、君との決闘を申し込む。

 どうする! 諦めるか?」



その顔に、いつもの温度の感じない顔はない、本気だ。

そして先程見た魔法、彼の力量を考慮する。

勝ちの目は見えない。私は立てば負けるだろう。


「わかった、受けて立とう。私が勝ったら婚約は無しだ」




彼はすると私を放し、静かに立ち去っていく。

演習場をでるその時、彼は言った。


「こんな理不尽な話、断っても、逃げても誰も君を責めない。

 それでも君は僕の前に立つんだね」


強い目だ。言葉は迷いだが意思は揺れていない。


「私には立つ以外の在り方を知らない。

 それに感情はともかくとしてお前の熱は本物だ。

 受けないというのは『礼儀』を欠くというものだ」


「君が礼儀を語るのか。なかなか面白いね。

 日程は君で決めていい、僕はいつまででも待っている」


そういうとセオは去っていった。


果たして、私にこの戦いは何の意味があるのか。

勝算はあるのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ