第13話 村祭り
辺りはにわかに活気があり、人々の往来は激しい。
上品な学園の雰囲気とは違った人々の息遣いが聞こえる。
私は『昔』を少し思い出し、懐かしい気分になっていた。
学園からだいぶ馬車で移動したこの場所は小さな村。
今日は村の祭りの日ということで様々なイベントが行われていた。
「セオドア様、祭りですか」
セラがそれとなく話を振るがセオは黙っていた。
「村祭りか」
私は景色を眺めながら呟いた。
「村祭り、いいですよねぇ、でもセオドア様みたいな方が
こういう場所を選ばれる印象がなかったので
ちょっと意外ですねぇ」
といいつつも一番ワクワクしている様子のノエル。
そこで初めてセオは答えた。
「この村は父が統治する、領地でね。今日は収穫を祝う日なんだ」
人々の様子を観察する。
その表情は皆明るく見えた。
きっと彼の父は民草の事を考えた統治を行っているのだろう。
そして馬車が止まるとドアが開かれた。
私たちは馬車を下りるとその村の活気は人々の声となって伝わってくる。
「うわぁ、いっぱい屋台がありますよ!
キャンディーとか売ってる店もある!」
ノエルは目を輝かせて屋台を眺めていた。
「私は……この様な庶民の祭りを見に来るのは初めてですわ」
セラらしい感想だ。
しかし連れてきた当人はだんまりである。
私は言った。
「こんなところにつれてきて、何の意味がある?」
「こうでもしないと、君はまともに受け答えをしてくれなそうだと思ったからね」
「別にどこだろうと話すことは変わらない」
しかし、ほんの僅かながらに、気分が和らいでいるのは事実だった。
「ぉお……セオドア様は本気かもしれませんね?!」
「えぇ……むしろ私たち、着いてきてしまってよかったのかしら?」
そんな二人にもセオは優しく言った。
「二人だけだと場が持たないかもしれないからね。
むしろ君たちがいてくれると助かるよ」
「そ、そうですか……まぁそうおっしゃられるのであれば……」
セラはちょっと気にしているようだが一方で
ノエルは全く我関せずで屋台に突撃していた。
「せっかくです、私たちもまつりを楽しみましょう」
そういうとセオは私たちを促し、ノエルのいる屋台へと向かった。
たった数分だろうか、ちょっと見ないうちにノエルは手に3つの
キャンディーを抱えていた。
「ちょ、ちょっと、ノエルさん? いくらセオドア様が寛容だからといっても
調子に乗りすぎじゃありませんか?!」
「でも、出店といったらお菓子じゃないですか」
あくまでも子供のようにはしゃぐノエル。
セオは私たちと話すときだけ、表情を少しだけ崩すが
あくまでも表情は硬い。
「繰り返すが、こんなところにつれてきてなにがしたい?」
「せっかちな方だ、いいでしょう、少しだけ本題に触れましょうか」
そういうと彼は冷たい表情のまま言った。
「何故貴方はあの決闘を受けたのですか?」
とうの本人はノエルとなんだかんだで祭りを楽しんでいるようだ。
それを尻目に私は答えた。
「受けたくて受けたわけではない」
「ならば受けなければ良かった。僕には理解できない戦いだった」
理解できないのは戦いの『意味』ということだろう。
「リズ、君自身が一番わかっていると思うが
あの戦いに君が勝ったのは運が良かったからだ」
「それはまぐれで勝ったといいたいのか?」
「ああ、あれはセラフィーナ嬢が君を読み違えたことが原因だ。
実戦力が不足していた。僕なら君に距離は詰めさせない」
この男、相当戦い慣れているな。
「実際そうだと思う。だがそれは戦わない理由にはならない」
「だが戦う理由もない。理由が君にあったのか。
それが私は知りたい」
私はセオの顔を見ていった。
「何をそんなに迷っている?」
「なんだって……?」
セオの鉄仮面のような硬い表情が歪んだ。
「あの戦いが理解できたのならば、お前は相当の実力者なのだろう。
同じようにきっと研鑽を重ねてきたのだろう?」
「違う!」
彼は私と出会って、初めて声を荒らげた。
「僕はそうあるように求められてきた。そうする必要がある。
君には動機がない。おまけに女性だ。何のために戦う?」
……なるほど。
しかし私は彼を納得させる回答を提示できないだろう。
私が私を練り上げる理由は私でも言葉にするのは難しい。
「強いて言うならば、そうしたいからしている」
「わからない……だが。
僕は君という存在にもっと興味が湧いた」
厄介な男に目をつけられてしまったものだ。
しかし、一方でこの体になってというものの
戦いと向き合っている人物と触れ合うのは久しぶりの感覚。
戦う意義を迷う若者との接触、悪くはなかった。




