第十二話 風変わりな男
ある日のことだった。
いつものように机に座ろうとしたとき、
一通の封筒が置いてあった。
私はカバンを置いて、その封筒を手にした。
その時だった。
眼の前にノエルとセラが現れた。
「どうしたんだおまえたち、……つるむほど仲良かったか?」
しかし二人は何やらニヤニヤしながら黙って私を眺めている。
その時、気がついた。
二人だけではない、クラスメイトの殆どがひっそりと
私に注目していたのだった。
どうやらこの封筒がその諸悪の根源のようだ。
私は封を切り、中身を取り出した。
すると図々しくもノエルは私の方に回り込んできて手紙を覗き込んだ。
「おい、私より先に見る気か?」
しかし構わずノエルはそれを読み上げ始めた。
「どれどれ……拝啓、エリザベート・フォン・ローゼンタール様。
本日、学校が終わり次第、
少し話に付き合っていただきたく。
校門の前でお待ちしております。
セオドア・グランツ
……だってぇ!」
そのノエルの声に教室中がどよめいた。
「勝手にこっちが読む前に読み上げるな」
私は、もう読む意味がなくなったので手紙を折り畳み直し
封筒の中に戻した。
「それで、リズ、貴方はどうするのかしら?」
「なんだよ急にセラまでノエルみたいに。
というかお前呼び捨てか?」
しかしセラはセラでごきげんな様子で言った。
「ええ、貴方も私のこと呼び捨てですし
別に構わないでしょう?」
何故女子はこの手の話題に異常なまでに敏感なのか。
正直理解に苦しむのだが……。
「で、どうするの!?」
ノエルまで執拗に食い下がってくる。
「わざわざ手紙まで書いてくれてるしな。
果たし合いの可能性もあるから準備していくとしよう」
「それは流石に貴方、斜め上すぎる発想ではなくて?」
「まぁリズちゃんらしいといえばらしいけどね……」
そんなこんなで待ち合わせの時間になった。
私は髪を輪ゴムで縛り、戦地へと赴いた。
「貴方、本当に決闘だと思ってるのかしら?」
「絶対、デートのお誘いですよ! 間違いないです!」
「そもそも何故お前たちは校門の影でコソコソしてるのだ?」
私が校門の前で待っているところに彼女たちは付いてきたのだが
何故か校門の裏側に隠れている。
「それはデートなら邪魔しちゃ悪いじゃないですか!」
「ええそうですとも。そっと陰ながら見守らせていただきますわ」
「そんな事は気にせず、皆さんご一緒しませんか?」
「え?」
「えぇ?!」
私が振り向くと、ノエルとセラの後ろにセオが立っていた。
「何だ、てっきり果たし合いかと思ったが違うのか?」
「……君は一体僕をなんだと思ってるのかい?」
「あのクソ王子の知り合いだろ?」
そう言うと彼は冷たい表情が少しだけ崩れて
軽く笑いながら言った。
「はは、クソ王子か、アルの前で聞かせてみたかったな」
どうやらこのセオという男はあの王子と随分仲がいいようだ。
「で、じゃあ何の用だ?」
「見てわからなかったのかい?」
その言葉に嬉しそうな顔をする女子二人。
「ズバリ、デートですね!?」
「デートですわね」
私はため息をついた。
「まぁ本当にそうなら他を当たってくれ」
そう言って帰ろうとしたところをガッチリと肩を掴まれた。
「まぁ、なんて大胆なんでしょう?!」
「すごい、です」
こいつ、線は細いが力はそれなりにあるな。
私はそんな事を思っていたが彼の意図は違ったらしい。
「それは勘違いだよ、君のことに興味があるんだ」
「これはいよいよ間違いないですね!?」
「ええ、まちがいないですわ」
「おい、お前らうるさいぞ! 少し静かにしろ!」
流石にうっとおしくなったが逆効果だったらしい。
「あらまぁ、リズにも恥じらいという言葉があったのね」
「リズちゃんもちゃんと乙女だったのですね!」
「あぁもうどうとでも好きに言ってくれ」
全く……調子が狂う。
この男が全ての元凶であるのは確かなのだが……。




