魔王の存在
「教えてくだって本当にありがとうございました」
俺たちがメルテスさんから力についての話を聞き終わり俺がメルテスさんにお礼を言い帰ろうとするとメルテスさんが少し考えてから俺たちを引き止めた。
「匠さんと真衣さんに頼みがあるんだが話を聞いてもらえないだろうか?」
俺たちはメルテスさんの深刻そうな顔を見て真衣と俺は目線を合わせて首をかしげて、とりあえず話を聞いてみることにした。
「実は勇者が魔王を倒してからかなりの時間が経ちまた新たな魔王が生まれていて倒したいとは考えながらギルドは魔物から町を守るので精一杯なのと魔王に対抗する力を持つ者がいないこともあり魔王を野放しになってしまっている。そこで匠さんのその力で魔王を倒していただけないかな?」
俺は真衣の事を守れれば正直魔王なんてどうでもよかった。
「たっくん魔王倒そうよ。町のみんな困ってるんだよ。それに一緒に幸せな生活するためにも倒しにいこ」
真衣は自分の事よりみんなの事を考えていて真衣らしいなって思って俺は嬉しかったし真衣は真衣のまま変わらないなっていうのが嬉しかった。
「分かりました。俺にやれるか分からないですが俺が役に立てるならやってみます」
俺がそういうと真衣はこちらに笑顔を向けてくれた。
「早速なんだが王宮に行ってくれないか? そこには今までこのリグルで勇者やその仲間が使っていた武器たちが飾られている。君の力は武器を連想してその武器を具現化する力だ。逆にイメージ出来なければ武器を具現化することはできない。なので王宮にある武器の数々を見ておくのは君にとって良いと思う」
「分かりました。ですが少し待ってもらってもいいですか?」
「分かった。とりあえず今日はゆっくり過ごしてまた覚悟が決まったらギルドに来てくれ」
俺は王宮に向かうことには納得した。だが一つ不安があった。真衣の事をどうするかだ。この町に置いていきギルドに守ってもらうかそれとも俺と一緒に来てもらい危険だが俺自身で守るか。俺はギルドを後にしてからも悩み続けた。そんな俺を見て俺の不安が分かったように真衣が口を開いた。
「私はたっくんと一緒にいたい。戦いが危険なものになるのは理解してるけど、この町でたっくんと一緒にいられずひとりぼっちで待つよりたっくんと一緒にいたいよ」
真衣には俺の考えが分かってるんだ。俺は悩んだがこの世界に来たのは真衣と一緒に過ごしたい気持ちと守りたいって気持ちが両方あった。真衣との時間を大切にしたいと俺自身も思っていた。
「危険な思いするかもしれないけど大丈夫? 真衣のことは何があっても守るつもりではいるけど、それでも俺と一緒に行く気ある?」
俺は真衣に尋ねた。
「もちろん。ここでせっかく出会ったんだし一緒にいられるならずっと一緒にいよう」
真衣は真っ直ぐな目をして俺を見てくれていた。真衣がここまで覚悟してくれているなら、俺は真衣の覚悟を信じることにした。
「じゃあ一緒に旅しよう。とりあえず今日は家でゆっくり休んで明日から王宮に向かおう」
「うん。分かった。明日からもずっと一緒だよ」
真衣が真っ直ぐ俺を見て笑っていた。この笑顔を絶対に守ると誓ったのだった。




