温泉にて1
お互いに一人暮らししてお互いの家に行き来していた頃はたまに一緒にお風呂に入ってた事もあったが一人暮らしの家でそんな広いお風呂がある訳もなくギュウギュウだった。真衣とお風呂に入ることになって俺はそんな事を思い出していた。
「一緒にお風呂入ると昔のこと思い出すね。たまに狭いお風呂で一緒に入ってたね。私はあの時間も幸せな時間だったよ」
真衣も昔を思い出していたようで俺と同じ事を考えていた事が俺は本当に嬉しかった。
「俺も同じ事考えてた。あの頃はお互いに一人暮らしのお風呂だったし狭かったけど、こんな大きなお風呂に一緒に入れるのいいよね」
俺は真衣との過去を思い出して感情に浸っていた。
「見て見て、空も見えるよ。もう星が見える時間だったんだね。たっくんとこんなに良い景色を見ながらゆっくり出来る時間って幸せだね」
「綺麗だね。でも俺も真衣とこんな景色見れて一緒にいられる時間は幸せだよ」
俺たちは温泉から見える景色に見惚れていた。
「冷えてきたから早く温泉入る為にも体洗って早く入ろ」
確かに温泉に入る前に景色見てて体が冷えてしまっていた。
「そうだ。たっくんの背中は私が流すよ。たっくん、座って座って」
俺は真衣に促されて温泉にあった小さな椅子に座り真衣に背中を洗ってもらった。
「あの頃から思ってたけどたっくんの背中大きいね。いつも私のこと守ってくれる大きな背中だね」
真衣は笑いながら背中洗ってくれた。
「はい。あとは流すだけだからちょっと待っててね」
真衣がそう言うと温泉のお湯を汲んできて俺の体を流してくれた。
「ありがとう。俺も真衣の背中流すよ」
今度は場所を入れ替えて俺が真衣の後ろに立った。
「ありがとう。でもちょっと恥ずかしいね」
真衣は恥ずかしそうに顔を伏せていた。
「俺からしたら真衣の背中も大きいよ。誰よりも優しくて俺の事をずっと守ってくれていた背中。俺は真衣に守られてきたけど今度こそ俺が真衣の事を守れる立派な人間になるから」
俺が素直な気持ちを伝えると真衣は嬉しそうにして「たっくんは十分守ってくれてるよ。私の方が年上だからそんな風に見えたのかもだけど私はたっくんに守られてきたって思ってるよ。お互い様だね」
俺は真衣のその言葉が聞けて嬉しかった。確かに真衣は年上で俺にとって理想の大人だった。その真衣に近づけていたなら嬉しかった。
「じゃあ体が冷えちゃうし温泉の中に入ろ」
俺が真衣にそう言い俺たちは背中を流し合ってから湯船に浸かる事にした。




