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第四十七話 テロリスト

正義を名乗る者が、最も多くの血を流す。

進化の力を巡る争いは、ついに世界へ向けた宣戦布告へと姿を変えた。

恐怖と選択が突きつけられる中、エヴォルドは岐路に立たされる。

読んで頂けると幸いです。

「我々は立ち上がる!」


「進化の力を悪用し、人類をコントロールしようとする政府に断固抵抗する!」

突然、テレビの画面が乱れ、ノイズが走った。次の瞬間、映像は切り替わり、東雲が拳を高く掲げて叫んでいた。鋭い眼光がカメラを貫き、背後には炎や水を操る者たちの姿が映し出される。通信がジャックされたのだ。


画面の中で、ある者は掌から火を噴き出し、またある者は空中に水を生み出して操っていた。異様な光景に、部屋の空気が一瞬凍りつく。東雲の声はさらに熱を帯びる。

「我々は進化というわけのわからない力をなくし、普通の人間として生きていく。そのために力を隠し、悪用する者たちを断罪する!」

その言葉は、まるで正義を語るかのように響いた。しかし哲郎には、ただのテロリストの自己正当化にしか聞こえなかった。彼らは人を殺し、恐怖を撒き散らす。どんな理屈を並べても、許されるものではない。


「これからどうなるんだろう…」

隣で敦子が不安げに哲郎の顔を覗き込む。彼女の瞳は揺れ、かすかに震えていた。

「僕たちが出来ることをするしかないんだろうけど…」

哲郎はそれ以上言葉を続けられなかった。胸の奥に重い塊が居座り、呼吸さえ苦しい。もし敦子に何かあったら――その想像だけで、逃げ出したい衝動に駆られる。だが、佐山の顔が脳裏に浮かんだ。仲間を失った怒りと悲しみが、彼を縛り付ける。自分たちだけ助かればいいというわけにはいかない。


「少し走ってくるよ」

「私も行く」

もやもやした気持ちを振り払うには、身体を動かし汗を流すしかない。二人はトレーニング室へ向かった。そこでは山本がすでにランニングマシンで汗を流していた。互いに軽く会釈を交わし、哲郎と敦子も走り始める。足音が規則的に響き、心臓の鼓動と重なっていく。やがて、張り詰めた心が少しずつ解けていった。


シャワーを浴び、着替えを終えたところで、会議室への招集がかかった。

「君たちもテレビやネットで流れる情報は見ただろう」

会議室の中央に立つ金山が、低く重い声で説明を始めた。

「これはテロリストの宣戦布告でしかない」

「我々に大義があるなどとは言わない。だが、この進化の力は、みなが不慮の死を乗り越え、得た人間としての進化だと私は考えている」

金山の言葉は静かだが、確固たる信念が込められていた。

「その力を得た以上、個人の私利私欲で使うことなく、全員に平等に使うべきものだ」

会議室にいる者たちは、誰もが静かにうなずいた。空気は重く、しかし一体感があった。

「これ以上、誰一人欠けてもらっては困る」

金山は一人ひとりの顔を見渡す。

「はっきりと言おう。我々はこのままでは非常に不利だ。だから、エヴォルドを抜けたい者は抜けてよい。相手が我々組織の名簿を持っていた場合の危険性も考慮してほしい。皆の命をこれ以上危険にさらすことは出来ない」

その言葉を聞いても、誰一人として部屋を出る者はいなかった。沈黙が続く。

「一週間、考えてほしい。残る者には、負け戦になる可能性が高いが、短期決戦で挑むことになる」


会議が終わり、哲郎と敦子は部屋に戻った。ソファに腰を下ろすと、重い沈黙が二人を包んだ。

「私たちはどうしようか」

敦子が小さな声で問いかける。

「僕は敦子を危険にさらしたくない」

哲郎は彼女の身を案じる。だが、その表情には苦悶が滲んでいた。逃げたい気持ちと、戦わねばならない責任感。その狭間で心が引き裂かれていた。

「哲郎の好きにしていいよ。私はついていくから」

敦子の声は静かだが、揺るぎない決意があった。

「ありがとう」

哲郎はその言葉に救われるように微笑んだ。


金山の発言は全国の支部へ伝達された。だが、一週間の間にエヴォルドを脱退した者は一人もいなかった。

自分たちの正義を信じる者。

脱退しても命の危険が変わらないなら、仲間と共に残る方が安全だと考える者。

仲間を失い、復讐を誓う者。

それぞれの思惑が渦巻き、複雑な感情が組織全体を覆っていた。だが、誰も背を向けなかった。彼らはそれぞれの理由を胸に、嵐のような戦いへと歩みを進めていくのだった。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。次回も楽しんでもらえるよう頑張ります!

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