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第八章 第四十一話 会議

進化の世界から現れた黒髪の女――ブルミシア。

その目的は、人間に与えられた進化の力を消し去ることだった。

エヴォルド本部の会議室で、未知の脅威に揺れる幹部たち。

冷静に分析を重ねる哲郎の姿は、敦子の心を強く揺さぶる。

嵐の前の静けさの中、二人は支え合う誓いを新たにする。

その誓いこそが、迫り来る闇に立ち向かう唯一の光となるのだった。

読んで頂けると幸いです。

エヴォルド本部の会議室。

重厚な扉が閉じられ、空気は張り詰めていた。

議長・金山を中心に、幹部たちが円卓に集まっている。

その中に、護衛任務の関係で山本も同席していた。


「あの女は誰なんですか?」

山本が静かに口を開いた。

その声には、現場で時間操作という異常事態を体験した者ならではの緊張が滲んでいた。

「あの女の人は、映像に映っていた人物です」

「名はブルミシアというそうです」

哲郎は淡々と答えた。

その横で敦子も黙ってうなずいている。

「彼女は、私を勧誘に来たようです」

「そして彼女の目的は、人間に与えられた進化の力をなくすことのようです」

「それは……力だけを奪えるということかな?」

金山が眉をひそめて問う。

「いいえ。多分ですが、命と合わせてだと思います」

哲郎の言葉に、会議室が静まり返った。


「彼女……ブルミシアは人間なんですか?」

水島が慎重に問いかける。

「彼女は、進化の世界で皆さんに力を渡していた存在のようです」

哲郎の言葉に、全員がざわめいた。

「みんな、覚えがあるか?」

金山が周囲を見渡す。

誰もが首を横に振る。

「私たちが力を得た際には、声しか聴いていません」

「ですので、哲郎さんが赤い髪の女性と会ったという話は衝撃でした」

水島が補足する。

「なるほど……」

金山が腕を組む。

「そうなると、その声の主が現れたということか」

「彼女が進化の世界の住人ならば、神ではなく、神のしもべといったところか」

「彼女の能力は、時間を遅くするだけですか?」

水島が哲郎に確認する。

「わかりませんが、一つではないと思われます」

「先日、リディーマーの黒井を殺害した際の能力は使っていません」

「推測ですが、同時に複数の力を使うことができないのではないでしょうか」

哲郎は冷静に分析し、言葉を選びながら語った。

その姿を見つめる敦子の瞳は、徐々に潤みを帯びていた。

最初は事の重大さに委縮していたが、今は違う。

冷静に状況を整理し、堂々と発言する哲郎の姿に、心が揺さぶられていた。

それに気づいた水島は、内心でため息をつきながら口を開いた。

「田辺夫妻もお疲れでしょうから、聞き取りはまた後ほど改めてではどうでしょうか」

「そうだね。哲郎さん、敦子さん、ありがとう。いったん部屋で休んでくれ」

金山が優しく促す。

「また後ほど呼ぶかもしれないが、それまではゆっくりしてくれ」

「はい。わかりました」

哲郎は敦子と共に席を立ち、会議室を後にした。


廊下に出た瞬間、敦子がそっと哲郎の腕に手を添えた。

「ど、どうしたの?」

哲郎が驚いて尋ねる。

「……何でもない」

敦子はそう言って、腕にしがみつきながら身体を寄せて歩き出した。

会議室では、二人の様子を見ていた金山が頭をかいた。

「さて、敦子さんの哲郎さんへの視線はなんとも……」

「気づいてらっしゃったんですか?」

水島が苦笑する。

「まぁ、あそこまで惚れられたら男冥利に尽きるというものだね」

「水島くんも、そろそろああいった男性を……」

「議長、それセクハラです」

水島が即座に遮る。

「す、すまない。つい親心のようなものだ」

「ありがとうございます。でも、私には使命がありますので」

「わかっている」

金山は咳払いをして、会議の続きを促した。

「では、先ほどまでの話をまとめ、今後の方針を話そうか」

だが、明確な対策は見つからない。

相手の力も正体も、未知数。

ただ一つだけ確かなこと──

「相手にとっても、田辺哲郎は鍵となる存在だ」

彼とどう協力し、どう守るか。

それが、今後の最重要課題となる。

会議室では、答えの見えない議論が続いていた。


部屋に戻った哲郎と敦子。

扉を閉めると、二人は同時に深いため息をついた。

「リフレッシュに出たはずが、とんでもない目にあったね」

哲郎がソファに腰を下ろす。

「本当だね。まさか進化の世界の人が、こっちの世界に来てるなんて……」

敦子も隣に座り、そっと哲郎に寄り添う。

そのまま、彼の腕に抱きつくように身体を預けた。

「さっきから敦子、どうしちゃったの?」

「……だって、哲郎がかっこよかったから」

「え!?そ、そんなことないよ。いつもと一緒だよ」

「そんなことあるよ」

「ここまで色々なことがあって、哲郎は最初は弱虫みたいだったのが、今は私を守るために身体を張って」

「しかも、あんな偉そうな人たちに囲まれての会議でも、冷静にはきはき発言していた」

「すごいことだよ」

「そ、そうかな……?」

「今までも好きだったけど、もっと好きになっちゃったの」

敦子は照れながら、顔を哲郎の胸にうずめた。

哲郎はそっと彼女の背中に手を回し、優しく抱きしめる。

「ありがとう。僕も好きだよ」

二人は、互いの温もりを感じながら、静かに誓った。

これからも支え合い、守り合うことを。

その誓いは、嵐の前の静けさのように、深く、確かに刻まれていた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。次回も楽しんでもらえるよう頑張ります!

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