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第七章 第三十六話 黒髪の女性ブルミシア

地下ホールに響く怒声と熱狂。

進化を否定する者たちの前に、黒髪の女性――ブルミシアが現れる。

彼女の言葉は信仰にも似た狂気を呼び起こし、組織を一つにまとめ上げる。

その目的は、エヴォルドの壊滅、そして田辺哲郎の勧誘。

理想と狂気が交錯する中、物語は新たな脅威の局面へと突入していく。

読んで頂けると幸いです。

薄暗い地下ホールに怒声が響いた。

「なんで失敗ばかりするんだ!」

市川剣(いちかわつるぎ)の怒鳴り声に、前列に並ぶ部下たちは肩をすくめ、目を伏せる。

冷たい蛍光灯の光が市川の額の汗を照らし、彼の苛立ちを際立たせていた。

「まぁまぁ、市川くん。彼らも必死にやってくれているんです」

東雲宗次郎(しののめそうじろう)が穏やかな口調で市川をなだめる。

その声には表面上の優しさがあったが、奥底には冷徹な計算が潜んでいた。

「そりゃそうだが……黒井が死んだんだぞ」

市川の声は震えていた。怒りだけではない。焦りと恐怖が混ざっていた。

「非常につらいことです」

東雲は静かに言いながら、市川に近づき、小声で囁いた。

「元をただせば、あなたが田辺哲郎を偶発的に殺してしまったことが原因でしょう」

市川は顔をしかめる。

「あんなことで死ぬなんて思いもよらねぇじゃねぇか」

「本来なら、田辺哲郎を“必然的に”殺す予定だったにもかかわらず、お金を取ろうなんてするからこうなるんですよ」

東雲の声は冷たく、皮肉に満ちていた。

「気絶させたついでじゃねぇか……」

市川は唇を噛む。

「まったく、ガラが悪いですね。そんなんだから誤って殺してしまうんです」

「これでも我々は、人間の進化を止めるために結成された“崇高な使命”を持った組織ですよ」

「……ちっ、わかってるよ」


東雲は満足げに微笑み、壇上へと歩み出る。

市川もその後に続いた。

ホールには百名ほどの進化者たちが集まっていた。

空気は重く、緊張と怒りが渦巻いている。

「さて、みなさん」

東雲が声を張る。

「仲間の狩り担当、黒井くんが残念ながらエヴォルドに殺されました」

ざわめきが広がる。

「エヴォルドは進化の力を使い、我々や普通の人々を支配しようとしている組織です」

「何度も同じ話になりますが、我々が世界を救わなければならないのです」

「そして、我々だけがそれを成し遂げられるのです」

東雲の隣には、一人の女性が静かに立っていた。

黒髪が腰まで流れ、漆黒のドレスが空気を吸い込むように揺れている。

その瞳は深く、何かを見透かすような光を宿していた。

「我々に協力していただくために、彼女――ブルミシア様はこの世界に来ていただいたのです」

「そして、エヴォルドのような悪の組織を壊滅させるために、我々に力を与えてくださったのです」


ブルミシアは静かに両手を広げた。

その動きだけで、空気が震えたように感じられた。

「さぁ、私のかわいい協力者たちよ」

「人間にはまだ早い力を、自分たちだけのものにし」

「私利私欲をむさぼるエヴォルドの人間たちを、亡き者にするのです」

「うおおぉぉぉぉー!」

進化者たちは拳を突き上げ、叫び声を上げた。

その熱狂は、信仰にも似た狂気を帯びていた。


「ブルミシア様は、黒井くんを助けるために危険なエヴォルド本部に乗り込まれました」

「しかし、残念ながら間に合いませんでした……」

東雲の目には涙が浮かんでいた。

その涙が本物かどうかは、誰にもわからない。

「黒井くんは非常にまじめで、勇気ある青年でした」

「もはや彼の弔い合戦といっても過言ではありません」

「絶対に敵を取ってやる!」

「許さないぞ!」

「俺たちが世界を守るんだ!」

会場は怒りと使命感に満ちていた。

東雲は手を上げ、静粛を促す。

「次は、ブルミシア様が直接、田辺哲郎をこちらの組織に勧誘していただけるとのことです」

会場がざわめいた。

「みなさんのお気持ちはわかります」

「田辺哲郎は、我々の敵であるエヴォルドに所属しています」

「ですが、彼は入って間もない。きっと真実を知らないのです」

「エヴォルドに騙されているだけです」

「だから、我々の仲間になってもらい、ともにエヴォルドを倒す同士にすることが、今回の作戦です」

東雲は再び静粛を促す。

「みなさん、目の前のことだけにとらわれてはいけません」

「我々が目指すのは、人類の未来なのです」

「そのためには、些末な気持ちは捨てましょう」

「崇高なる我々の使命のために!」

「おおおおおおおお!」

会場は再び熱狂に包まれた。

進化者たちは、それぞれの使命を胸に、行動を開始する。

ホールに残ったのは、東雲、市川、そしてブルミシア。


「私は少し休ませてもらうわ」

ブルミシアが静かに言う。

「はい。かしこまりました」

東雲と市川が深々と頭を下げる。

その背中を見送りながら、市川がぽつりと呟いた。

「本当に……あんたは恐ろしいな」

「何を言っているんだ、市川くん」

東雲が微笑む。

「私は、我々が支配する平和を望んでいるだけだよ」

二人は顔を見合わせ、不気味に笑った。

その笑みの奥には、理想と狂気が混ざり合った“支配の未来”が潜んでいた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。次回も楽しんでもらえるよう頑張ります!

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