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どうして異世界に来ることになったのか。  作者: スポンジ
5歳 騎士を目指す少女
36/245

2 姉の好み。

1日1話投稿中です。

今週は午前8時台に投稿予定となっています。

「てへ」


 格好良い人(イケメン)がタイプと言い切った姉は、パチンとウインクを投げる。


 ……可愛らしいが、そんなことでは誤魔化されない。


「姉さんのそれだって、『外見が良い』って要素が好きなだけなんじゃないのか?

 俺の答えと大差ない気がするが」


「え……そうかなあ?」


 そう言って首を傾げる姉には、不安しかない。

 

 ……あの母さん(天然)の娘だからなあ。


 現段階で、母と姉は瓜二つだ。

 このまま成長して、姉が母のように成長していくということを考えると――


 ……悪い虫がつきかねない。


 鋭い瞳で、姉を見つめる。


「な、なに、ルンちゃん? どうしたの? そんな怖い目で見て……」


 そうやって慌てている姿すら、愛らしいのだ。


 そんな姉が顔だけの奴に捕まり、苦労するなんてことは、断じて許さない。


 ……今の内に、正しい価値観に更新しておかなければ。


「姉さん、ただ顔が良いだけの相手じゃ、苦労するのは目に見えている。

 せめてイケメンに加えて付加価値が必要だ」


 ……たとえ姉さんに相応しい存在なんていないとしても。

 

 それでもせめて、足元に縋りつけるくらいには付加価値が要る。


「うーん? イケメン以外の付加価値って、例えばどんなのがあるの?」


 そう聞かれると、答え辛いものがあるが――


「まあ、せめて父さんくらいの図々しさは必要――」


「誰が図々しいイケメンだ! 息子よ!」


 俺の言葉に、少し離れた場所で作業をしていた父がツッコむ。


 ……父さんのことを、イケメンだなんて一切言っていないが。


 そして、自身のことを堂々とイケメンだと呼称しているあたり、随分と図々しいとも思う。


 ……まあ、でも。


 父の顔立ちは、実際に整っている。

 粗野な話し方も、少々乱暴な部分はあれど、嫌味がないからか許せてしまう不思議な魅力もある。

 

 ちなみにその図々しいイケメン()は、姉の恋愛話に真剣に耳を傾けていたらしい。


 先程から、雑草の処理作業が全く進んでいない。


「貴方?」


「はい! すみません……」


 父と共に作業をしていた母に笑顔で凄まれて、父はあっさりと作業に戻る。


 ……だが、丁度いい。


 俺はその父を例に、姉へと語りかける。


「姉さん、見てて分かると思うが、父さんはイケメンだ。そうだな?」


 姉はチラリと父を見て、


「うん、お父さん格好良いよね!」


 と、大輪の花を咲かせる。


 にんまりと笑う父に、再び注意する母。


「だが姉さん、考えて欲しい。

 父さんがただ顔の良いだけの男だったら、母さんを落とせたかって話だ」


 母は父が霞んで見える程の美人。


 もし――


「もし父さんがただイケメンなだけだったなら、母さんとは結婚できていないだろう」


「ねえ、2人とも」と、両親に矛先を向けると、2人は過去を懐かしむ。


「まあ、それはそうかもな。ゾーレの人気は半端なかったし。

 この辺りの村々から、縁談の話が舞い込んできててよ。

 挙句の果てには領主様からも――」


「もう、恥ずかしいからやめてよ!」


 そんな仲睦まじい2人を見て、姉は疑問を覚えたようだ。


「その中から、お母さんはお父さんを選んだんだよね? どうして?」


 姉の真っ直ぐな質問に、母は顔を赤くしながらも答える。


「うーん、小さいころから仲も良かったし、何かと接点も多かったのよね。

 それこそ、領主様のパーティーに招待された時とかは、何故か偶々(・・・・・)その会場でツーリンダーが働いてたり」


「不思議ねえ」と言う母は、純粋過ぎると俺は思う。


「聞いたか、姉さん。

 絶対に父さんは、母さんと結ばれるために、あらゆる手段を講じているぞ」


「間違いなくそうだよね」


 こそこそと、姉と話し合う。


 そのパーティーの話は、絶対に偶然ではない。

 きっと母を領主に奪われると考えた父が、パーティーにどうにか乗り込んだのだろう。


「つまり、父さんはその図々しさ、太々しさで、美人の母さんを落とせたわけだ!」


「なるほど、そういう付加価値ってことだね」


 そう腑に落ちる姉と、


「あらもう、ルンちゃんたら!」


 照れる母。


 2人とも土に塗れているにも関わらず、その美しさ・可愛らしいに陰りはない。


 俺が生まれて5年程。

 その間ずっと、両親と姉は俺にとって眩しい存在である。


「だから――」と、俺は父に告げる。


「だから、父さんの図々しさは才能だ。

 母さんを落とせたんだからな! 誇った方が良い」


「何か言いくるめられてる気もするが、反論もし辛いな……」


 父はそうひとりごちると、その矛先を姉に向ける。


「クーグルン!」


「えっ? 何、お父さん」


 姉の応答に、父は大きく息を吸いこんで叫んだ。


「言っておくが、お前と結婚するやつは少なくとも俺よりイケメンで、ルングより強くて賢くないとダメだからな!

 お父さんは許しませんよ!」


 伸びたヴァイの間を吹き抜けていく、父の心の叫び。


 ……珍しく正論だ。


「ええぇぇ⁉」


 驚く姉に、俺も言葉を重ねる。


「父さん、それでは足りない。金と権力も必要だ」


「ふ……さすがルング。抜け目ないな」


「ええぇぇぇぇぇぇ⁉」


 ……姉さんに釣り合う男。


 やはりそんなものが存在するとは思えないが、百歩譲って。

 否、千歩譲って許せるのは、顔、権力、金、実力。


 全てが揃った上で、姉を世界一大切にする男だ。

 それ以外は、認める気などない。


 熱量の高まる男性陣(俺たち)に、母が尋ねる。


「あらあら、2人とも? それだとクーちゃん結婚できないんじゃない?」


「「それは最悪仕方ない」」


 父と重なる答え。


 ……無理に結婚する必要なんてない。


 この世界だと、まだ結婚が重要視されているのかもしれないが、姉が不幸な結婚をするくらいなら、独身でいいと思う。


「ええぇぇぇぇぇぇ⁉ 結婚したいよ!」


 姉の叫びもまた、ヴァイの畑に吸い込まれていく。



 そんな俺たちの団欒に――


「……お前たちは、家族全員で何してるんだ……?」


 困惑を隠せない、野太い声が割り込んできた。

 ――父と弟は、可愛い姉を手放す気がないようです。


 本作『どうして異世界に来ることになったのか。』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 現在『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』という作品も同時に投稿しているので、もし少しでも興味がある方はそちらもよろしくお願いします。


 感想もお待ちしております!


 評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

 皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!

 

 もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!


 ではまた次のお話もよろしくお願いします!

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