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22 魔石は眩しい。

短編『鏡の魔女は、令嬢を見抜く』も投稿しています。

もしよろしければ、そちらも目を通していただけると嬉しいです!


1日1話投稿中です。

明日から今週は午前8時台に投稿予定となっています。

 魔石らしき反応(白光)が2つ、魔物の体の中に見える。


 最も大きい輝きが、魔物のちょうど胸元に。

 それよりも少し小さい輝きが、横腹の方にある。


 ……魔石って1つってわけじゃないのか?


 疑問に思う俺たちに、村長が図らずも答えを出す。


「ああ……きっと割れちまったんだろうな。

 よくあることだぜ?

 魔石自体は高値の素材ではあるが、魔物が出た段階で仕留めるのが最優先。

 そうなると、魔石ってのは魔物の1番の弱点だからな。


 人命と素材じゃあ、優先するのは、決まってるだろ?


 だから必死こいて戦って、結果魔石は粉々でしたなんてザラだ。

 そう考えると今回は、割れてるとはいえ、ラッキーだったな」


 村長は魔物を憎々しげに見下ろすと、「よし、2人とも! 魔石がどこにあるか指差してくれ!」と具体的に魔石のある箇所について尋ねる。


 姉と2人で魔力の在処を指で示しながら、そんな村長に抱いた疑問を投げかける。


「そんちょー。まものからとれた、そざいとかませきは、むらのだれにうれるんだ?」


 アンファング村は小さな村だ。

 

 ……小さい村の割には、意外な職に就いていたり、兼任している人も多い気がするが。


 おかげで、誰がどの職に就いているかは、大体把握している。


 そして、この村内で魔石を扱えそうな職となると……パッとは思いつかない。


 ……強いて言うなら、鍛冶屋だろうか?


 村内の鍛冶屋は、包丁や鍋といった基本的な生活用品から、鎌や鍬といった農具まで、幅広く取り扱っている。


 ……だが、ひょっとすると。


 魔石を組み込んだカッコイイ剣とかも、作れるのかもしれない。


 そんな淡い期待に胸を膨らませるが、


「いや、村で魔石を扱えるような奴はいないよ。

 魔術師じゃないと、基本的に魔石の加工はできないしな」


 その期待は、粉々に打ち砕かれる。


「よしっ!」


 気合を入れるように声を出しながら、村長は懐から鞘付きのナイフを取り出すと、

 

 シャッ


 鞘からナイフを引き抜く。

 重苦しい木でできた握り(ハンドル)と、重厚な(ブレード)


 使い込まれた雰囲気のあるナイフだ。


 ……正直、少し格好いい。


 村長のナイフを握る姿は、絵になっていた。


 じっとその姿を見ていると、


「おいおい、そんなに見られると少し恥ずかしいな」


 村長は照れくさそうに、ナイフを魔物に入れる(・・・)


 スッ


 あっさりと入る刃。

 硬そうに見えた魔物だが、それを紙のように切り裂いていく。


 村長の腕が良いのか、ナイフそのものの出来が良いのか。

 あるいは両方か。


「この辺りで合ってるか?」


「「うん」」


 俺たちの案内を元に、手際よく肉をかき分ける音が聞こえたかと思うと、


「お! あったあった!」


 村長はあっという間にそれ(・・)を取り出す。


「「うわっ⁉」」


 急な強い白光に、2人とも驚く。


 ……眩しい。


 あまりの眩しさに、目を細め、それでも足りなくて、目の前に手をかざす。

 

 村長が、太陽を持っている(・・・・・・・・)


 思わずそう表現してしまうくらい、白の輝きが村長の手から溢れ出している。


「おい、お前ら、どうした⁉」


 眩しそうにしている俺たちに、村長は驚く。


「どうしたもなにも――」


「村長、それ眩しくないの?」


 目を細めながら、姉が尋ねる。


「ま、眩しい? 何のことだ?」


 村長が、手の中の太陽を自身の眼前へと持っていく。


 ……平気なのか?


 俺たちからすると、自殺行為にしか見えない。


 しかし村長は、光源を凝視しているにも関わらず、目を細めるでも、眩しさにのたうち回るでもなく普通にしている。


「そんちょうって、めがわるかったか?」


「いや、視力には自信あるが」


 村長の視力も問題ないとなると、ひょっとして――


「ああ! もしかして、魔力?」


 そう姉が声を上げ、同時に彼女の目に集中していた魔力が途切れる。


「あっ! やった! 光らなくなった!」


 姉と同様に、俺も魔力を見るのを止めると、確かに村長の掌中の白光が収まる。


 ……そういうことか。


 姉と俺が眩しくて、村長が平気な理由はこれだ。


 ……俺たちは、魔石の魔力(白光)を見ていたのだ。

 

 魔石は魔力の塊。

 故に魔力の見える俺たちには輝いて見えて、見えない村長には石として見えていたのだろう。


 魔力を見るのを止めた途端、白光に包まれていた鉱物が、真の姿を現す。


「あかいろなんだな」


 ようやく見えた魔石本体の色は赤色。

 毒々しいまでの赤。


 ……まるで、血の色みたいだ。


 嫌な禍々しさが、村長の手元から感じられる。


「なんか……気持ち悪いね」


 姉も俺と似たような感想を抱いた様だ。

 俺たちの嫌悪の目が、村長の手元に注がれている。


「お前たち、気持ちはわからんでもないが、その目で俺まで見ないでもらえるかなあ。


 最近の娘の目つきを思い出して辛いんだ……。


 それに、これ高く売れるんだぞ? 本当に!」


 俺たちに嫌われているように、感じたのだろうか。

 村長の慌てようが、少し可哀そうだ。


「わかってるぞ、そんちょー。おれたち、そんちょーのことすきだぞ」


「村長、苦労してるんだね……」


「変に同情するのは止めろ!」


 巨体を丸める村長を、姉がよしよしと慰める。


 ……そういえば聞きそびれていたが――


「で、そんちょー。そざいはけっきょく、だれにうれるんだ?」


 この禍々しい魔石。

 村で取り扱えないというのなら、一体誰に売ることになるのだろうか。

 ――あっさりと魔物を捌ききる村長は、とてもカッコイイです。


 本作『どうして異世界に来ることになったのか。』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 ではまた次のお話でお会いしましょう!


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