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17 責任の所在。

1日1話投稿中です。

今週は午前6時台に投稿予定です。

 父と姉が、快晴の空に浮く。


「ねーさん、とーさん、なにしてるんだ?」


 俺の呼びかけに、姉が空から降って来た(・・・・・・・・)


「ルンちゃん! やっと(・・・)起きたんだね! 良かった!」


 姉は俺の目の前で、くるりと回ると、そのままゆっくりと着地する。


「あれえ⁉ クーグルンさん⁉ 俺を置いてかないでえぇぇぇぇ!

 落ちるうぅぅぅぅぅ⁉」


 見事な魔術と魔力の制御だ。


 あの大規模な魔術を発動したことで、姉の身に何か悪影響がなかったか心配していたのだが、なんなら以前よりも、制御能力が上がっているようだ。


 ……うん?


やっと(・・・)?」


「うん! やっとだよ?」


 母と同じく、基本的に笑顔の多い姉が、珍しく頬を膨らませて怒っている。

 その姿もまた愛らしいのだが――


「ルンちゃん……5日(・・)も寝てたんだから!

 だから、お父さんと一緒にお祈りしてたんだよ?

 早くルンちゃんが目覚めるようにって!」


「えっ⁉」


 絶句。


 言われてみれば確かに、随分と気持ちのいい目覚めではあった。

 大分熟睡した気もしていた。


 ……だが、いくらなんでも。


 そう思って母を見ても、母はただ「うんうん」と姉の言葉に頷いている。


「それでツーリンダー(お父さん)が言い出したのよ。

『祈るなら、天に近い方が良いに決まってる』って」


 母が姉の言葉を捕捉する。


 ……なんということだ。


 俺は本当に5日も寝入っていたのか⁉


 自身の寝坊ぶりに驚いていると、


「そうだぞ、ルング。

 お前、俺たちに心配かけやがって!」


 父が土だらけ(・・・・)になりながら、こちらへとやって来る。

 

「そういうとーさんこそ、けがはだいじょうぶか?」


 ……確かに俺は、家族に心配をかけたのかもしれない。

 

 それは申し訳ない。

 

 だがこの父にだけは、言われる筋合いはないと思う。


 チラリ


 土まみれの父の身体を、ざっと確認する。

 彼の胸元にある白光の様子は、いつもと変わりない。


 後はあの引き裂くような傷跡だが――


「ふふふ……そんなに見るなよ、ルング。

 さては、お前も俺の筋肉美に釘付けだな?」


「ちがう。そもそもきんにくなら、そんちょーのほうがすごい」


「なんだとおぉう⁉」


 服の上からでは確認できない。

 まあ、姉と遊んでいたのを見る限り、問題なさそうではあるのだが。


「げんきなんだな?」


「おお! 滅茶苦茶元気だぜ!

 お前の魔術のおかげで、何なら前より絶好調だ!

 5歳は若返ったな!」


「ちょうしのいいことを……」


 父は腕をぐるぐる回して、元気なことを俺にアピールしている。


 ……本当に元気そうだ。


 元気すぎて、少し鬱陶しい気もするが。



 ……まあ、でも。


 父も姉も、無事でよかった。


 そんな気持ちが、表情に出ていたのだろうか。

 俺の顔を見て、父と姉が俺に向かってぐっとサムズアップを決める。


さて(・・)三人とも(・・・・)?」


 ゾク


 背筋に冷たいものがはしる。

 寒気――殺気と言い換えても良い。


 同時に俺の危機察知能力が、そうさせたのであろう。

 魔力が活性化し、いつでも魔術を発動できるように体が動く。


 ……くっ⁉ どうなっている⁉


 ここは危険地帯だと。

 俺の第六感がそう語りかけてくる。


「ふふふ……ルング(・・・)も、もう元気そうね?」


「ルンちゃん? どうしたの?」


 俺の必死の形相に対して、姉は呑気そのものだ。

 こんな危機管理の甘い少女が、よくもあんな大魔術を発動させたものだと、逆に感心する。


 ……逃げられない。


 弱々しいと思っていた母の手には、既に万力が込められている。

 俺の手を握りつぶすことはないにせよ――決して逃がさないという絶対の意志。


「あれ? お母さんも、急にどうしたの?」


 そして母のもう片方の手には、ちょうど今――


「いいえ、どうもしてないわよ?

 ただ、クーグルン(・・・・・)と手が繋ぎたかっただけよ?」


 姉の手が握られた。


「お、お母さん? ほーらニコニコー」


 姉も罠にかかり、ようやく自身が死地にいることに気付いた様だ。

 場を和ませようとしているが、その効果は最早ないに等しい。


 父に至っては、


「ゾーレ様、クーグルンとルングだけでここは怒りを収めていただきたく」


 既に心が折れている。


 家の前の地面は、ある程度均されているとはいえ、早くもその上に正座の構えを取っている。


 ……この世界に、正座って概念があるのか。


 現実逃避にも似た気付き。

 

 そして、プライドはないのかと父に問いたい。

 後ろぎたないことに、俺と姉を差し出して、自分だけ助かろうとしている。


「ず、ズルいよ、お父さん⁉

 お母さん、悪いことしたのはお父さんだよ!」


「そうだぞ、かーさん! とーさんがやらかさなければ、おれとねーさんはぶじだったんだ!

 だから、おこるのは、とーさんだけにするべきだ!」


 姉と俺の釈明に、母が浮かべるのは、


「もう、皆どうしたの? そんなに怖がって」


 柔らかい笑顔。


 にこやかで可愛らしい笑顔だが、その裏側には――


「おおおおお、お母さん?」


 激憤が潜んでいる。


「ちゃああんと、私の納得する説明をしてもらいますからね?

 ねえ、ツーリンダー(・・・・・・)? クーグルン(・・・・・)? ルング(・・・)?」


「「「すみませんでした!」」」


 こうして俺たちは、30分以上叱られたのであった。

 ――心配した分だけ、母の怒りは増しています。


 本作『どうして異世界に来ることになったのか。』をお読みいただき、誠にありがとうございます!


 今後も頑張って投稿していく予定ですので、引き続きお読みいただけると嬉しいです。


 現在『勘違い召使いの王道~いずれかえる五色遣い~』という作品も同時に投稿しているので、もし少しでも興味がある方はそちらもよろしくお願いします。


 感想もお待ちしております!


 評価とブックマークをしていただいた皆様、本当にありがとうございます。

 皆様に読んでいただけているということが、僕の書く意欲になります!

 

 もし『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、今後も本作を書いていく強力な励みとなりますので『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非よろしくお願い致します!


 ではまた次のお話もよろしくお願いします!

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