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琥珀の才能Blooming!  作者: 仮名無し
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第6話 こはく、学級委員選挙に出馬する【前編】

「こはく!アンタ、学校からの配布物はちゃんと親に見せなきゃダメって何度言ったら分かるの!」


 お母さんは、グチャグチャになった学級通信のプリントを持ってプンプン怒っている。


「お母さん!またあたしのランドセル勝手に漁ったでしょ!そういうのやめてって何度言ったら分かるの!」


「そうでもしないとお母さんが配布物をきちんと確認できないじゃない!ほんとアンタは抜けてるんだから!」


 まったく!お母さんはすぐあたしの物を漁る。

 この調子だとこの前買い食いした時のゴミの件も確実にお母さんの仕業だ。



「配布物なんて全部しょうもない内容ばかりよ。赤い羽根募金を払えとか、学級委員選挙とか、全部あたしには関係ないわ」


「何言ってんの!募金なんてどうでもいいけど、学級委員選挙は一大事よ!アンタは学級委員になるのよ!」


「はぁ?学級委員なんて所詮雑用係じゃないっ。何で給料も貰ってないのにあたしがタダ働きしなきゃいけないのよっ」


「学級委員長っていうのはクラスで一番偉いのよ?万一他の奴が選ばれて、アンタがソイツの言いなりになるところなんて、お母さん絶対に見たくないわ!」


 あーあ。学級委員ってそんなに名誉なモノだろうか。

 ちびまる子ちゃんの丸尾末男を見てみろ。あいつはクラス中からおかしな奴だってナメられているではないか。



「……どうせ無理よ。まず選挙で票が集まらないわ。あたしがクラスで人気無いことぐらいお母さんも分かってるでしょっ」


「そんなの関係ないわ!どんな手を使っても必ず学級委員になりなさい!!」


「もう鬱陶しいわね!分かったわよ!必ず当選してクラス全員を奴隷にしてやるわ」


「さすがこはく!!ワタシの自慢の娘よ!」




 そんなこんなであたしとお母さんは間近に迫る学級委員選挙の対策会議を行っている。


「…まずは3年1組のヤツらにこはくが優秀だってことを知らしめる必要があるわ」


「そうは言ってもまだクラス替えしたばかりよ?投票日まで時間もないから難しいわね」


「明後日、視察会があるみたいじゃない!まずはそこでアンタの良いところを存分にアピールするのよ」


 視察会とは、年に一度他所の私立小学校の教員達がウチの学校の授業を見に来て、教育の知見を深めようという大人の都合で勝手に開催されるくだらないイベントだ。


 ウチの担任は学年主任だからその対象なのである。きっとウチの校長や教頭も見に来るだろう。

 そしてヤツの専門教科は体育。そこであたしの抜群な運動神経を見せつけるのだ。




「みんなおはよう!今日の体育の授業はマット運動です。視察の先生もお越しになるから、みんなは『いつも通り』先生の言うことをきちんと聞いて元気いっぱいやるんだぞっ!」


「「「はーい」」」




「まずは前転からやります。先生がお手本を見せるからよーく見ておいてください」


「「先生がんばってー!」」


「こうやって体を丸くしてマットに後頭部をくっつけるんだ。ほらっ!」


「「先生じょうず~!」」


 山崎はずんぐりむっくりな体を丸めてミノムシみたいに転がっている。



「さぁ!みんなもやってみよう!」


(ふんっ、しょうもない!あたしはこんなミノムシみたいな恰好したくないねっ。あたしがホンモノの器械体操とは何たるかを見せてやろう)


 あたしは前転ではなく、最近体操クラブで習得した「ロンダード・バク転・1回半ひねり」を披露してやった。


「「「おー!!!」


「未咲さんすごーい!」


「やべーオリンピック選手だ!」


 クラス中から歓声が起こる。どうだ見たかお前ら!



「次は側転をやります。先生がお手本を見せるので…」


「山崎先生!お手本は先生じゃなくて未咲さんがした方がいいと思います!」


「こはくちゃん、さっきのやつもう一回やってー!」



「……じゃあ未咲さんどうぞ」


「任せてちょうだい!ほらっ」


「「「すご~い!」」」


「この前山崎先生がやった側転より全然きれいだな!」


「いい?側転っていうのはね、先生みたいに膝を曲げてはいけないの。あとつま先もちゃんと伸ばさないと汚いから減点よっ」


(ふんっ!こっちは体操クラブの選手よ?これぐらい褒められないとやってらんないわ!)




「山崎先生、今日はありがとうございました。いやーしかし、あの未咲さんって子は凄いですね~」


「何かお稽古事やられてるんですかね~?」


「いやいや山崎先生のご指導の賜物ですよ~。先生は優秀な生徒さんがいて良かったですね!」


「アハハハハハ。そうですね……」


 山崎は視察に来た教師達から褒められているようだが、あたしはこんなヤツから何一つ教わった覚えなどない。

 お前はただ体を丸めてミノムシの物真似しか出来ない癖に、あたしのおかげで褒められているのだからどうか盛大に感謝してほしい。




「浜井さん、学級委員に立候補するのー?!」


「わたしはそうゆうの恥ずかしいからやりたくないんだけどねっ、土屋さん達が『りっちゃんに学級委員やってほしい』って。未咲さんみたいに怖い人が学級委員やったら学級崩壊するからって言われたの~」


「たしかに未咲さんは怖いよね~性格悪いし」


「りっちゃんが立候補するなら俺らも投票する!ガンバレよ!」



 まずい…。あの浜井という白豚はとんでもないぶりっ子で男子から人気がある。

 おまけに白豚は仕切りたがりブスの土女の取り巻きで、あのへんの票が全部白豚に入ったらあたしは落選するかもしれない。


 おそらく土女は子分の白豚を学級委員に祀り上げて、裏で自分が実権を握ろうと考えているのだろう。一体どこまで姑息なヤツなんだっ!




「お母さん、今日の視察会は完璧だったわ。担任の山崎は突っ立ってるだけで無様よ、もうあたしの独壇場!」


「素晴らしいわ!!さすがよこはく!」


「……ただ、心配なことがあるの」


「……お母さんに任せなさい」




「中村さん達ちょっと待ってちょうだいっ!」


「こはくちゃん?急にどうしたの~?」


「はい、コレあげる!」


「わ~!これバービーちゃんのハンカチだ!」


「はい、三鷹さんにもあげるわ!あたしと色違いよっ。あ、ほら坂口さんや伊藤さんにもあげるわ!」


「ありがとう~!でも急にハンカチくれるなんてどうしたの?」


「あなた達とお友達になりたくてねっ。仲良くしましょ!」


 中村達は不思議そうに顔を見合わせる。

 まぁ無理もない。まだあたしはコイツらとほとんど喋ったことがない。

 これは無党派層の票固めだ。



「肉田くん、あたしの唐揚げあげる!肉田くんいつもお腹が空いてて大変でしょ?いっぱい食べるといいわっ」


「ど、ど、ど、、、どうしたんだよ、未咲。いつもボ、ボクの給食取り上げるのにっ!」


「え、そうだったかしら?早くお食べよ」


「あ、あ、あ、、、ありがとう。お前、い、い、意外といいヤツなんだなっ!」


「そうよ!肉田くんのことはお友達だと思ってるから!今度の学級委員選挙もよろしくね」


 お母さんと選挙対策会議を重ねた結果、バカを言いくるめるには安直な『やさしさ』が重要だということでまとまったのだ。

 いくら勉強が出来ても、いくら運動が出来ても、何の取り柄もない癖に嫉妬心だけは一丁前の3年1組のバカ共には響かない。こっちがシタテに回り、やさしく騙すしかないのだ。




「ハンカチ攻撃は成功したわ」


「あ~よかった!!お母さんが昨日急いで三越に買いに行った甲斐があったわ~」


「これで中村達は抱き込んだはずよ。後は中村と仲の良い男子達の掃除も代わってやって恩を売っといたわ」


「じゃあ10票は固いわね!」


「あとデブの肉田みたいな爪弾き者達にも耳触り良いこと言って投票をお願いしといたわ」


「これで明日の選挙はばっちりじゃない!こはく頑張ってね!!」



 やれることは全てやった。




次回、いよいよ選挙当日!

果たしてこはくちゃんは3年1組の学級委員になれるのか?!

【後編】へ続く!!!


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